更新日: 2020.04.06 その他年金

同僚が「65歳以降働くと年金がカットされるので損だって言うのです」 本当?嘘?

同僚が「65歳以降働くと年金がカットされるので損だって言うのです」 本当?嘘?
昭和36年4月2日以降の生まれの男性(女性は昭和41年4月2日以降生まれ)が、年金(老齢厚生年金+老齢基礎年金)をもらえるのは65歳からです。
 
人生100年時代、65歳以降も働くのが当たり前になっていくでしょう。よくある誤解が、「65歳以降働くと年金がカットされるので損だ」というものです。平均的な年金受給者であれば年金がカットされる心配はほとんどありません。年金カットのしくみを解説します。
 
新美昌也

執筆者:新美昌也(にいみ まさや)

ファイナンシャル・プランナー。

ライフプラン・キャッシュフロー分析に基づいた家計相談を得意とする。法人営業をしていた経験から経営者からの相談が多い。教育資金、住宅購入、年金、資産運用、保険、離婚のお金などをテーマとしたセミナーや個別相談も多数実施している。教育資金をテーマにした講演は延べ800校以上の高校で実施。
また、保険や介護のお金に詳しいファイナンシャル・プランナーとしてテレビや新聞、雑誌の取材にも多数協力している。共著に「これで安心!入院・介護のお金」(技術評論社)がある。
http://fp-trc.com/

年金っていくらもらえるの?

サラリーマンの公的年金は、老齢基礎年金と老齢厚生年金の2階建てです。老齢基礎年金は、原則、20歳から60歳まで40年加入し、年金額は、満額で779,300円(平成30年度)です。老齢厚生年金は収入や加入期間によって異なります。
 
厚生労働省が発表した平成30年度の年金額を見ると、モデル世帯では、国民年金から支給される1人分の老齢基礎年金は月額64,941円、厚生年金から支給される夫婦2人分の老齢基礎年金を含む標準的な年金額は221,277円となっています。
 
モデル世帯の年金額は、厚生年金に夫が平均的収入(平均標準報酬(賞与含む月額換算)42.8万円)で40年間就業し、妻がその期間すべて専業主婦であった世帯が年金を受け取り始める場合の給付水準です。
 
では、実際の受給額はいくらでしょうか。平成28年度厚生年金保険・国民年金事業の概況(平成29年12月、厚生労働省年金局)によると、平成28年度末現在、厚生年金は月額145,638円、国民年金は月額55,373円となっています。
 
意外に少ないと思われた方も多いのではないでしょうか。平均的な高齢者にとって年金だけ生活するのは厳しそうです。実際、総務省「家計調査年報(家計収支編)平成29年(2017年)家計調査の概要」によると、高齢夫婦無職世帯(夫65歳以上、妻60歳以上の夫婦のみの世帯)では、1か月当たり、実収入209,198円、支出263,717円、収支54,519円の赤字となっています。
 
90歳まで生きるとして、単純計算すると25年間で約1,639万円不足します。65歳までに最低限これだけの貯蓄ができなければ、65歳以降も働く必要があります。
 

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年金カットのしくみ、在職老齢年金とは

在職老齢年金は、60歳以降も働き、給料や賞与などが支払われる人に対して、給与と厚生年金合わせて一定額を超える場合、老齢厚生年金の一部または全部が支給停止されるしくみです。支給停止されるのは老齢厚生年金であって老齢基礎年金ではありません。
 
平成30年度、60歳~65歳未満は基本月額と総報酬月額相当額の合計が28万円超、65歳以上の場合は基本月額と総報酬月額相当額の合計が46万円超になると支給される年金が減額され始めます。
 
基本月額は加給年金額を除いた老齢厚生年金の月額をいい、総報酬月額相当額とは標準報酬月額にその月以前1年間の標準賞与額の1/12の額を加えた額をいいます。全額支給停止になる場合は加給年金(扶養手当のようなもの)も停止になりますので注意しましょう。
 

在職老齢年金の具体例

例えば、60代前半、基本月額が10万円、標準報酬月額が15万円、過去1年間の賞与が30万円とすると、基本月額と総報酬相当月額の合計は275,000円となり、28万円以下ですので、老齢厚生年金はカットされず、全額支給されます。
 
28万円超の場合は4つパターンで計算します。
 
1.総報酬月額相当46万円以下で基本月額28万円以下のケース
  支給停止額=(総報酬月額相当額+基本月額-28万円)×1/2
 
2.総報酬月額相当46万円以下で基本月額28万円超のケース
  支給停止額=総報酬月額相当額×1/2
 
3.総報酬月額相当46万円超で基本月額28万円以下のケース
  支給停止額=(46万円+基本月額-28万円)×1/2+(総報酬月額相当額-46万円)
 
4.総報酬月額相当46万円超で基本月額28万円超のケース
  支給停止額=46万円×1/2+(総報酬月額相当額-46万円)
 
例えば、65歳以降、基本月額20万円、標準報酬月額が22万円、過去1年間の賞与が36万円とすると、基本月額と総報酬相当月額の合計は45万円となり、46万円以下ですので、老齢厚生年金は全額支給されます。46万円超の場合は、超過額の1/2が支給停止になります。
 
65歳以降は高年金、高収入の方しか老齢厚生年金は停止にはなりません。在職老齢年金を気にせず働きましょう。
 
Text:新美 昌也(にいみ まさや)
ファイナンシャル・プランナー。
 

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