更新日: 2023.12.22 国民年金
もうすぐ60歳、大学生の頃は「年金保険料」を支払っていませんでしたが、やはり受給額は少なくなりますか?「任意加入」したほうが良いのでしょうか…?
本記事では、老齢基礎年金が満額受給できないケースやその場合の受給額、任意加入制度等について説明します。
執筆者:橋本典子(はしもと のりこ)
特定社会保険労務士・FP1級技能士
50代以降の人は要注意
老齢基礎年金は、20歳から60歳まで40年間(480月)保険料を納付すると、満額が受給できます。しかし実は現在50代半ば以上の人は、保険料納付済期間が480月に達しないまま60歳を迎える人が少なくありません。それはどのような人でしょうか?
以前、学生は強制加入ではなかった
20歳になると国民年金に加入し、保険料の納付義務が発生します。しかしこれは現在の話であり、1991年3月までは学生は強制加入ではなく、希望者のみが任意加入する制度でした。そのため1991年3月以前に大学等に通っていた人は、その当時任意加入していない限り、国民年金保険料を納めていない期間があります。
この期間はいわゆる「カラ期間」で、老齢基礎年金の受給に必要な資格期間には含まれますが、年金額には反映されません。その結果、「1991年3月以前に20歳以上の学生」だった人は、満額の老齢基礎年金を受給できない可能性が大きいのです。
480月の納付済期間がないときの年金額
2023年度の老齢基礎年金の満額は、年額79万5000円です。しかし保険料納付済期間が480月に達していない場合は、次の計算式により納付不足分が減額されます。
79万5000円×(480月-保険料を納付していない月数)/480
例えば24ヶ月分の未納期間がある場合、老齢基礎年金は75万5250円で、満額と比べ4万円程少なくなります。これを満額にする、あるいは満額に近づける方法はないのでしょうか?
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老齢基礎年金を満額相当額にするには
60歳時に480月の保険料納付済期間がなくても、60歳以降に年金額を増やすことは可能です。ただしその方法は、自営業者等か会社員かで異なります。
任意加入制度を利用する
国民年金には、60歳以降も任意加入できる制度があります。自営業者や無職などの場合は、この制度を使うことで老齢基礎年金を満額にすることが可能です。例えば、未納期間が24ヶ月ある場合は、60歳以上65歳未満の間に24ヶ月間任意加入すれば、65歳から満額の老齢基礎年金が受給できます。
任意加入の手続きは、住所地の市区町村役場または年金事務所で行います。そして任意加入の場合、保険料の納付方法は原則として口座振替となります。なお任意加入による2023年度の国民年金保険料は、月額1万6520円です。
保険料は社会保険料控除の対象となるため、自営業者など収入がある人は、任意加入することにより所得税や住民税の節税効果も期待できるでしょう。なお任意加入には、次の注意点があります。
●遡って(さかのぼって)加入することはできない
●老齢基礎年金を繰上げ受給している場合は任意加入できない
●厚生年金被保険者(会社員)は任意加入できない
会社員は経過的加算が増える
制度上、会社員は任意加入ができません。しかし会社員も60歳以降も働き続け、厚生年金の加入を続けることで年金額が増額します。ただし増えるのは「老齢基礎年金」ではありません。厚生年金加入期間のうち老齢基礎年金額に反映されるのは、20歳以上60歳未満の期間のみだからです。
増えるのは老齢厚生年金の「経過的加算」です。経過的加算は、特別支給の老齢厚生年金の定額部分相当額から老齢基礎年金の額を差し引いた額となります。
例えば未納期間が24ヶ月あって62歳まで働いた場合、60歳以降の厚生年金加入期間は老齢基礎年金には反映されませんが、60歳から62歳まで納めていた2年分の保険料は経過的加算として上乗せされるのです。
つまり経過的加算により、任意加入により老齢基礎年金を満額にした場合と同等の結果が得られます。さらに厚生年金加入期間が増えることで、厚生年金本体の受給額も増加します。
まとめ
40年間(480月)の保険料納付済期間がないと、満額の老齢基礎年金が受給できません。しかし任意加入することで満額にすることが可能です。任意加入制度の利用は個人の自由ですが、保険料を納めていない期間があって経済的に余裕がある場合は、任意加入を検討してみてはいかがでしょうか。
出典
日本年金機構 老齢年金ガイド令和5年度版
日本年金機構 平成3年4月前から学生であったにもかかわらず、平成3年4月から国民年金の保険料免除期間とされているのはどうしてですか。
執筆者:橋本典子
特定社会保険労務士・FP1級技能士