更新日: 2023.12.23 その他年金

離婚したら夫の年金の「半分」をもらえると聞いたけど、分割の対象は年金の「全額」ではない?

離婚したら夫の年金の「半分」をもらえると聞いたけど、分割の対象は年金の「全額」ではない?
「年金分割」という制度によって、離婚後は妻が夫の年金を半分受け取れると、誤解をしている方がいます。しかし、実際の年金分割は「夫の年金を半分受け取れるようになる」という仕組みではありません。そこで、年金分割の仕組みについて解説していきます。
柘植輝

執筆者:柘植輝(つげ ひかる)

行政書士
 
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2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。

年金分割によって、夫婦の年金記録を半分にできる

年金分割とは、夫婦の婚姻期間中の厚生年金加入記録を、半分にして分け合うものです。例えば婚姻期間が10年であったとして、その間に夫が厚生年金に加入しており、妻は専業主婦であったという場合、10年間の厚生年金の加入記録を、夫5年・妻5年という具合に分け合います。
 
仮に、その10年の加入期間によって厚生年金が将来月額換算で3万円増えるという場合、夫は将来の年金が月額で1万5000円減り、妻は月額1万5000円増えることになります。
 
また、年金分割には「合意分割」と「3号分割」とがあります。
 
合意分割とは、50%を上限に、当事者の合意による割合または裁判所が決めた割合で、年金分割をすることです。それに対して3号分割とは、国民年金の第3号被保険者であった方からの請求によって、厚生年金の加入記録を合意なく半分ずつに分割するものです。
 
なお、年金分割は原則として「離婚などをした日の翌日から起算して2年以内」という期限があります。離婚後は早めに手続きができるように、あらかじめ最寄りの年金事務所へ行って、制度や手続きについて確認しておくことをおすすめします。
 

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あくまで半分を受け取れるのは、厚生年金の加入記録であって、年金額ではない

年金分割について特に注意すべきことは、「夫が将来受け取る年金の半分を、妻が受け取れるわけではない」ということです。
 
年金分割によって得られるのは、あくまでも「婚姻期間中」の「厚生年金に加入していた際の年金記録」です。そのため、夫が将来月額換算15万円の年金を受け取れるからといって、妻がその半分に相当する、月額換算7万5000円を受け取れるようになるわけではありません。
 
また、分割の対象となるのは厚生年金の部分です。そのため、夫が自営業者で、国民年金にしか加入していない場合は、年金分割をすることができません。
 
さらに、自身が夫よりもお金を稼いでいる、もしくは夫が専業主夫である場合も、年金分割によって分割を受けることはできません。このような場合、むしろ自分から夫へ年金記録を分割することになる可能性もあります。年金分割は、単に夫から妻に年金記録を渡すためではなく、老後の夫婦間の公平を図るための制度であるからです。
 

どれくらいの金額が年金分割によって変動している?

夫婦の状況にもよりますが、基本的に、年金分割によって自分の得られる年金額が、10万円や20万円と増えるわけではありません。
 
厚生労働省の「令和3年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によれば、令和3年度において、年金分割によって年金が減少した方(分割した側、いわゆる第1号改定者)は、平均して2万9459円減少しています。逆に、年金分割によって年金が増えた方(いわゆる第2号改定者)においては、平均して3万1112円増加しています。
 
ここから、年金分割によって変動する年金額は、おおむね3万円程度だということが分かります。
 
年金分割を受けたからといって、それだけでは、老後の年金額が劇的に増えるものではないことを知っておきましょう。
 

まとめ

年金分割とは、離婚の際に、婚姻期間中の厚生年金の加入記録を夫婦で分割するものです。それによって、おおむね3万円ほど、老後の年金が増える見込みがあります。
 
とはいえ、夫の年金額そのものを半分にして受け取れるわけではないため、それだけで老後の生活を激変させられるわけではありません。
 
また年金分割には、2年という期限もあります。
 
もし、年金分割について気になっているようであれば、一度、最寄りの年金事務所へ問い合わせることをおすすめします。
 

出典

日本年金機構 離婚時の年金分割

厚生労働省 令和3年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況 表 離婚分割 受給権者の分割改定前後の平均年金月額等の推移(29ページ)

 
執筆者:柘植輝
行政書士

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