更新日: 2023.12.24 その他年金
同じ世帯年収900万円でも「年金額」が異なるのはなぜ?パターン別に年金受給額を試算
そこで、世帯年収が同じでも、将来の年金受給額が異なる理由を、世帯年収900万円の世帯を例に解説していきます。
執筆者:柘植輝(つげ ひかる)
行政書士
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2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。
同じ世帯年収900万円でも年金額が異なるのはなぜ?
同じ世帯年収でも、将来受け取る年金額が異なるのには理由があります。その理由として、年収は常に一定ではないということがあります。誰もが、最初に働いたときから、年収900万円を稼げていたわけではないでしょう。
多くの会社員は、若い20代30代の内は年収が300万円台や400万円台などと比較的低めのはずです。40代50代と昇進していくことで、ようやく年収900万円に達する方がほとんどでしょう。
厚生年金の受給額は、おおむね現役時代の平均年収に比例します。そのため、今は世帯年収が900万円であっても、過去に世帯年収が900万円より低い期間があると、それに応じて年金額が少なくなり、逆に年収の高い期間があれば、年金額が増えることになります。
また世帯年収が900万円であっても、夫婦がともに厚生年金に入っているか、そうでないかによって、年金額が増減します。おもにそのような理由から、世帯年収が900万円であっても、将来受け取る年金額に差がつくのです。
それでは実際に、年金受給額を条件別に確認してみましょう。なお、年金の試算については、特に指定のない限り、下記のような条件で行います。
●「公的年金シミュレーター」を利用
●夫婦ともに1980年10月1日生まれ
●夫婦ともに20歳から22歳の間、学生として国民年金に加入
●就労する期間、または専業主婦の期間は23歳から59歳まで
●年金は65歳から受給
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年収900万円の夫と専業主婦の妻
現役時代の年収の平均が900万円の夫と、23歳以降は専業主婦の妻という世帯の場合、夫婦で受け取る年金額は、夫が年間252万円、妻が年間80万円の合計で332万円です。
月額換算では28万円ほどとなります。夫の年収が900万円と高収入だけあって、妻が国民年金のみであっても、年間300万円を超える年金を受け取ることができるようです。
年収800万円の夫とパートで年収100万円の妻
続いて、ほかの条件はすべて同様として、現役時代の平均年収が800万円の夫と、平均年収100万円をパートで稼ぐ妻という、世帯年収が同じ900万円の世帯を見ていきましょう。
この場合、夫が受け取る年金は年間229万円となります。そして妻は、専業主婦と変わらず年間80万円です。世帯が受け取る年金は合計で309万円となり、月額換算ではおよそ26万円です。
妻が働いているにもかかわらず、妻の年金額が変わらない理由は、妻が厚生年金に加入していないからです。専業主婦も、扶養内で働く主婦も、加入する年金は国民年金の第3号被保険者であり、厚生年金には加入していません。それゆえ、妻の年金額自体は変わらないのです。
さらに、世帯年収が同じ900万円でも、夫の年収が低い分、夫単独で世帯年収が900万円の世帯よりも、世帯全体の年金額が少なくなるのです。
年収600万円の夫と年収300万円の妻
では、年収600万円の夫と年収300万円の妻という、共働き世帯ではどうでしょうか。
夫については23歳から30歳までは年収300万円、31歳から40歳までは400万円、41歳から50歳までは500万円、51歳から59歳までは年収600万円、と推移したと仮定します。また、妻については、23歳から59歳までの会社員としての平均年収が300万円とします。
この場合、夫の年金は年間167万円、妻の年金は年間138万円となり、世帯で受け取る年金の合計は305万円となります。月額換算ではおよそ25万円で、夫単独で世帯年収を900万円稼ぐ世帯よりも、やや少なくなります。
その理由の一つは、夫の平均年収にあります。今は世帯年収が900万円あっても、夫が20代の頃の世帯年収は600万円であり、世帯年収が900万円に達するのは51歳からです。このように世帯全体の平均年収が低いため、同じ世帯年収900万円の世帯でも、ほかの世帯に比べて、受け取る年金の額が少なくなるのです。
まとめ
同じ世帯年収900万円とはいっても、夫婦の働き方によっては年金額が大きく異なるようです。とはいえ、世帯年収が900万円あれば、年金は世帯全体で少なくとも25万円程度は受け取ることができるでしょう。
もちろん、具体的な金額は世帯によって異なります。もし、将来受け取れる年金額について気になったならば、一度「公的年金シミュレーター」などで試算してみることをおすすめします。
出典
厚生労働省 公的年金シミュレーター
執筆者:柘植輝
行政書士