更新日: 2023.12.22 その他年金

同じ世帯年収900万円でも「年金額」が異なるのはなぜ?パターン別に年金受給額を試算

執筆者 : 柘植輝

同じ世帯年収900万円でも「年金額」が異なるのはなぜ?パターン別に年金受給額を試算
年収によって将来の年金受給額が変わることは、多くの人が知っていることでしょう。しかし、世帯年収が同じでも、世帯によって年金の受給額が大きく異なるということを知っている人は、そう多くはないのかもしれません。
 
そこで、世帯年収が同じでも、将来の年金受給額が異なる理由を、世帯年収900万円の世帯を例に解説していきます。
柘植輝

執筆者:柘植輝(つげ ひかる)

行政書士
 
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2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。

同じ世帯年収900万円でも年金額が異なるのはなぜ?

同じ世帯年収でも、将来受け取る年金額が異なるのには理由があります。その理由として、年収は常に一定ではないということがあります。誰もが、最初に働いたときから、年収900万円を稼げていたわけではないでしょう。
 
多くの会社員は、若い20代30代の内は年収が300万円台や400万円台などと比較的低めのはずです。40代50代と昇進していくことで、ようやく年収900万円に達する方がほとんどでしょう。
 
厚生年金の受給額は、おおむね現役時代の平均年収に比例します。そのため、今は世帯年収が900万円であっても、過去に世帯年収が900万円より低い期間があると、それに応じて年金額が少なくなり、逆に年収の高い期間があれば、年金額が増えることになります。
 
また世帯年収が900万円であっても、夫婦がともに厚生年金に入っているか、そうでないかによって、年金額が増減します。おもにそのような理由から、世帯年収が900万円であっても、将来受け取る年金額に差がつくのです。
 
それでは実際に、年金受給額を条件別に確認してみましょう。なお、年金の試算については、特に指定のない限り、下記のような条件で行います。

●「公的年金シミュレーター」を利用
●夫婦ともに1980年10月1日生まれ
●夫婦ともに20歳から22歳の間、学生として国民年金に加入
●就労する期間、または専業主婦の期間は23歳から59歳まで
●年金は65歳から受給

 

年収900万円の夫と専業主婦の妻

現役時代の年収の平均が900万円の夫と、23歳以降は専業主婦の妻という世帯の場合、夫婦で受け取る年金額は、夫が年間252万円、妻が年間80万円の合計で332万円です。
 
月額換算では28万円ほどとなります。夫の年収が900万円と高収入だけあって、妻が国民年金のみであっても、年間300万円を超える年金を受け取ることができるようです。
 

年収800万円の夫とパートで年収100万円の妻

続いて、ほかの条件はすべて同様として、現役時代の平均年収が800万円の夫と、平均年収100万円をパートで稼ぐ妻という、世帯年収が同じ900万円の世帯を見ていきましょう。
 
この場合、夫が受け取る年金は年間229万円となります。そして妻は、専業主婦と変わらず年間80万円です。世帯が受け取る年金は合計で309万円となり、月額換算ではおよそ26万円です。
 
妻が働いているにもかかわらず、妻の年金額が変わらない理由は、妻が厚生年金に加入していないからです。専業主婦も、扶養内で働く主婦も、加入する年金は国民年金の第3号被保険者であり、厚生年金には加入していません。それゆえ、妻の年金額自体は変わらないのです。
 
さらに、世帯年収が同じ900万円でも、夫の年収が低い分、夫単独で世帯年収が900万円の世帯よりも、世帯全体の年金額が少なくなるのです。
 

年収600万円の夫と年収300万円の妻

では、年収600万円の夫と年収300万円の妻という、共働き世帯ではどうでしょうか。
 
夫については23歳から30歳までは年収300万円、31歳から40歳までは400万円、41歳から50歳までは500万円、51歳から59歳までは年収600万円、と推移したと仮定します。また、妻については、23歳から59歳までの会社員としての平均年収が300万円とします。
 
この場合、夫の年金は年間167万円、妻の年金は年間138万円となり、世帯で受け取る年金の合計は305万円となります。月額換算ではおよそ25万円で、夫単独で世帯年収を900万円稼ぐ世帯よりも、やや少なくなります。
 
その理由の一つは、夫の平均年収にあります。今は世帯年収が900万円あっても、夫が20代の頃の世帯年収は600万円であり、世帯年収が900万円に達するのは51歳からです。このように世帯全体の平均年収が低いため、同じ世帯年収900万円の世帯でも、ほかの世帯に比べて、受け取る年金の額が少なくなるのです。
 

まとめ

同じ世帯年収900万円とはいっても、夫婦の働き方によっては年金額が大きく異なるようです。とはいえ、世帯年収が900万円あれば、年金は世帯全体で少なくとも25万円程度は受け取ることができるでしょう。
 
もちろん、具体的な金額は世帯によって異なります。もし、将来受け取れる年金額について気になったならば、一度「公的年金シミュレーター」などで試算してみることをおすすめします。
 

出典

厚生労働省 公的年金シミュレーター
 
執筆者:柘植輝
行政書士

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