夫が「繰下げ受給」を執拗に勧めてくるのですが、65歳と70歳で受給額はどのくらい変わるのでしょうか?

配信日: 2023.12.25

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夫が「繰下げ受給」を執拗に勧めてくるのですが、65歳と70歳で受給額はどのくらい変わるのでしょうか?
スマートフォンの普及やSNSの発達により、情報がより早く、より多くの方に届くようになりました。
 
それによって「年金は繰下げ受給をした方が良い」といった情報を耳にする機会も増え、中には周囲の人にしきりに勧められるという方もいらっしゃるようです。
 
そこで今回は、繰下げ受給によって年金の受給額はどのくらい変わるのか、65歳と70歳とで試算してみます。
柘植輝

執筆者:柘植輝(つげ ひかる)

行政書士
 
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2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。

繰下げ受給の概要

まず始めに、繰下げ受給の概要について確認していきましょう。繰下げ受給とは、年金を65歳時点で受け取らず、66歳以後75歳までの間で繰り下げて受け取ることをいいます。繰下げ受給には、年金を受け取る時期が遅くなるというデメリットと、将来受け取る年金額が増加するというメリットがあります。
 
具体的には、1ヶ月繰り下げるごとに受け取れる年金額が0.7%増額します。繰下げ受給は75歳まで行うことができるため、将来受け取ることのできる年金額は最大84%増額されることになります。例えば、元の年金額が月9万円である場合、最大まで繰り下げると月16万5600円もの年金を受給できるようになります。
 

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繰下げ受給がおすすめされる理由

年金の繰下げ受給がおすすめされる最大の理由は、将来受け取れる年金額が目に見えて増額されるからです。前述したとおり、75歳まで繰り下げれば驚異の84%増となり、2倍近い額の年金を受け取ることができるようになります。
 
また、長生きすることへの懸念の一つに老後の生活費がありますが、繰下げ受給によって受け取れる年金額を増やすことは、老後の生活費が不足するリスクを軽減することにもつながります。
 

65歳と70歳受給額はどう変わる?

では、繰下げ受給によって1月当たりの年金額はどう変わるのか、令和5年度の国民年金支給額満額である月額6万6250円を例に確認していきましょう。
 
まず、65歳から受け取った場合、年金額は増減されないため、1月当たりの年金額はそのまま6万6250円になります。一方、70歳まで繰り下げた場合、年金額は42%増額されるため、1月当たりの年金額は9万4075円になります。
 
年換算すると、65歳から受け取った場合の年金額は79万5000円となるのに対し、70歳まで繰り下げた場合は112万8900円にもなります。このように、受け取り時期を65歳から70歳へと5年間繰り下げることで、受け取る年金額は1.5倍近くも増えるのです。
 

総受給額が増えるとは限らない

ただし、注意すべき点として、繰下げ受給をしたからといって、将来必ずしもより多くの年金を受け取れることになるとは限らないという点があります。
 
一例として、年金受給者が80歳で亡くなると仮定してみます。このとき、65歳から受け取る場合の受給期間は15年間、生涯で受け取る年金の総額は1192万5000円です。それに対し、70歳で受け取る場合の受給期間は10年間しかないため、生涯で受け取る年金の総額は1128万9000円になります。
 
このように、繰下げ受給をして1月当たりの年金額が増えたとしても、長生きしなければ受給期間が十分に確保できず、総受給額はむしろ少なくなってしまうことになります。繰下げ受給によって総受給額を増やしたい場合は、計算上、81歳ごろまで生きる必要があります。
 

まとめ

周囲の人が年金の繰下げ受給を勧めてくる理由は、繰り下げ期間に応じて将来受け取れる年金額が増額される点を意識してのことだと考えられます。しかし、長生きできなかった場合は十分な受給期間が確保できず、結果的に総受給額が少なくなってしまうこともあり得ます。
 
年金の繰下げ受給を検討する際は、受給開始時期や十分な受給期間が確保できそうかなど、将来についてシミュレーションした上で決定するようにしましょう。
 

出典

日本年金機構 年金の繰下げ受給
日本年金機構 令和5年4月分からの年金額等について
 
執筆者:柘植輝
行政書士

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