更新日: 2023.12.26 その他年金

前妻との子に仕送りをする夫が死亡。子がいない私に遺族年金は支給される?

前妻との子に仕送りをする夫が死亡。子がいない私に遺族年金は支給される?
公的年金の遺族年金には、遺族基礎年金と遺族厚生年金があります。遺族基礎年金は定額で支給され、遺族厚生年金は原則、死亡した人の老齢厚生年金(報酬比例部分)の4分の3相当で支給されます。
 
死亡した夫との間に子がなく、夫が別居する前妻の子に仕送りをしていた場合、妻(後妻)本人は遺族年金を受給できるのでしょうか。
井内義典

執筆者:井内義典(いのうち よしのり)

1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP(R)認定者、特定社会保険労務士、1級DCプランナー

専門は公的年金で、活動拠点は横浜。これまで公的年金についてのFP個別相談、金融機関での相談などに従事してきたほか、社労士向け・FP向け・地方自治体職員向けの教育研修や、専門誌等での執筆も行ってきています。

日本年金学会会員、㈱服部年金企画講師、FP相談ねっと認定FP(https://fpsdn.net/fp/yinouchi/)。

今回の事例

Aさん(40歳)は、25年以上会社員を続けている夫・Bさん(50歳)と暮らしていました。AさんとBさんとの間には子はいません。
 
そんななか、Bさんが他界しました。Bさんには前妻・Cさん(42歳)との間の子・Dさん(15歳・障害はなし)がいます。Aさんは年収が850万円未満であるため、Bさんに生計を維持されていました(【図表1】)。
 
一方、DさんはCさんと同居していましたが、学生であるため収入はありません。Bさんは生前そのDさんへ養育費の仕送りを行っており、AさんとDさんに音信等もありました。そのため、DさんもBさんに生計を維持されています(【図表1】)。
 

 
そして、Bさんは死亡当時50歳でしたが、その当時の厚生年金加入記録で計算される老齢厚生年金(報酬比例部分)は100万円相当となります。
 

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遺族基礎年金を受給できる人

Bさんの死亡当時、AさんもCさんも生計を維持されていました。遺族基礎年金は死亡当時生計を維持されていた「子のある配偶者」と「子」を対象としています。
 
遺族年金における子とは、死亡した人から見ての子で、18歳年度末までの子(一定の障害がある場合は20歳未満の子)を指します。そして、「子のある配偶者」とは、その子と生計同一である、死亡当時の配偶者を指します。
 
死亡したBさんから見ての配偶者はAさん、子はDさんということにはなりますが、AさんとDさんは別居し、生計が同一ではないことから、Aさんは「子のある配偶者」には該当しません。そのため、Aさんには遺族基礎年金の受給権は発生しません。
 
一方、Dさんは生計を維持されていたBさんの子であることから、Dさんには遺族基礎年金の受給権が発生します。しかし、この遺族基礎年金はDさんには支給されません。Dさんの遺族基礎年金は、その実母・Cさんと生計が同一である場合は支給停止となるルールがあるためです。そのため、遺族基礎年金はAさんにもDさんにも支給されません。
 
なお、Cさんは、Bさんとすでに離婚し、Bさん死亡当時の配偶者ではないため、Dさんと一緒に暮らしていても、「子のある配偶者」に該当しません。
 

遺族厚生年金を受給できる人

一方、遺族厚生年金については、AさんとDさんに受給権があります。ただし、受給権者全員に支給されるわけではなく、優先順位の最も高い人に支給されます。
 
遺族厚生年金の対象となる遺族に配偶者と子が含まれ、遺族基礎年金と異なって「子のない配偶者」でも対象になりますが、実際に支給される人の優先順位は「子のある配偶者」「子」「子のない配偶者」の順となります。
 
Aさんは「子のない配偶者」です。「子」が「子のない配偶者」に優先することになり、結果、遺族厚生年金はDさんに支給され、Aさんは支給停止(支給は0円)となります。
 
Dさんの遺族厚生年金には、遺族基礎年金のように実母・Cさんと生計が同じであることによる支給停止制度はなく、その額は、Bさんの報酬比例部分の4分の3相当の75万円です。
 

死亡当時の段階では後妻に遺族年金はなし

以上をまとめると【図表2】のように、Cさんに遺族厚生年金のみ支給されます。
 

 
遺族厚生年金については、将来Cさんが18歳の年度末を迎えると、Cさんは受給できなくなり、その後Aさんが受給します(※再婚等があった場合を除く)。しかし、それまでは、「子のない配偶者」であったということから、Aさんには遺族基礎年金だけでなく、遺族厚生年金も支給されないことになるでしょう。
 
執筆者:井内義典
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP(R)認定者、特定社会保険労務士、1級DCプランナー

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