更新日: 2023.12.26 その他年金

会社員と自営業者、同じ年収600万円なら「年金保険料」と「年金受給額」はどのくらい違うのでしょうか?

執筆者 : 小山英斗

会社員と自営業者、同じ年収600万円なら「年金保険料」と「年金受給額」はどのくらい違うのでしょうか?
働き方によって、将来もらえる年金額に違いが生じることがあります。会社員と自営業者では、納める年金保険料と将来受け取れる年金に、どのくらい違いがあるのでしょうか? 本記事では、同じ年収600万円の場合、会社員と自営業者で、公的年金にどのくらいの差が生じるのかを解説します。
小山英斗

執筆者:小山英斗(こやま ひでと)

CFP(日本FP協会認定会員)

1級FP技能士(資産設計提案業務)
住宅ローンアドバイザー、住宅建築コーディネーター
未来が見えるね研究所 代表
座右の銘:虚静恬淡
好きなもの:旅行、建築、カフェ、散歩、今ここ

人生100年時代、これまでの「学校で出て社会人になり家庭や家を持って定年そして老後」という単線的な考え方がなくなっていき、これからは多様な選択肢がある中で自分のやりたい人生を生涯通じてどう実現させていくかがますます大事になってきます。

「未来が見えるね研究所」では、多くの人と多くの未来を一緒に描いていきたいと思います。
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公的年金制度のおさらい

日本の公的年金制度は、「2階建て」といわれています。1階部分の「国民年金」には、日本に住む20歳以上60歳未満の全ての人が加入します。全ての人が加入することから、国民年金は「基礎年金」ともよばれています。2階部分の「厚生年金」は会社員や公務員が加入することになっています。つまり、会社員であれば国民年金と厚生年金の両方に加入することになります。
 
また、職業などによって3つの被保険者の種別があり、自営業者は「第1号被保険者」、会社員は「第2号被保険者」に該当します。
 
図表1


出典:日本年金機構 公的年金制度の種類と加入する制度
 

国民年金の保険料と年金受給額

第1号被保険者である自営業者と、第2号被保険者である会社員の、どちらも加入する国民の年金保険料は、収入に関係なく、1ヶ月当たり1万6520円(令和5年度)です。ただし会社員の場合、加入している厚生年金保険が国民年金の費用を負担しているので、会社員が自ら国民年金保険料を支払う必要はありません。
 
また、国民年金保険料を20歳から60歳までの40年間欠かさず納めた場合、将来もらえる老齢基礎年金の年金額は、満額で79万5000円(令和5年4月分から)です。なお、昭和31年4月1日以前生まれの人は、79万2600円となります。
 

厚生年金の保険料と年金受給額

第2号被保険者である会社員が、加入する厚生年金の保険料と将来もらえる年金の受給額は、収入に応じて変わってきます。
 

給与と賞与に応じて決まる厚生年金保険料

厚生年金保険料は、毎月の給与(標準報酬月額)と賞与(標準賞与額)に共通の保険料率を掛けて計算され、事業主と被保険者とが半分ずつ負担します。給与には基本給のほか、役職手当、通勤手当、残業手当などの各種手当も含まれます。
 
厚生年金では、給与を一定の幅で区分した「報酬月額」に当てはめて決定された「標準報酬月額」を、保険料や年金額の計算に用います。令和5年度の標準報酬月額は、1等級(8万8000円)から32等級(65万円)までの32等級に分かれています。
 
年収600万円の会社員の場合、月額換算した給与を50万円とすると、27等級(報酬月額48万5000円~51万5000円)であり、標準報酬月額50万円に該当します。したがって、この会社員が負担する厚生年金保険料は4万5750円となります。
 
なお、厚生年金保険料の半分は会社が負担しているため、実際に納められている保険料は、倍の9万1500円です。
 

老齢厚生年金の受給額

会社員は、老齢基礎年金に上乗せして、65歳から老齢厚生年金を受給できるようになります。老齢厚生年金の年金額は、以下の式で求められます。
 
年金額 = 報酬比例部分 + 経過的加算 + 加給年金額
 
例として、20歳から60歳までの40年間の平均年収が、600万円(平均標準報酬額50万円)であった会社員の場合を考えてみましょう。ここでは経過的加算、加給年金はなしとして、報酬比例部分のみで老齢厚生年金額を試算してみます。
 
なお、報酬比例部分の計算式は厚生年金の加入期間により異なりますが、あくまで目安のための試算であることから、単純に「平成15年4月以降の加入期間に適用される計算式」を用います。
 
老齢厚生年金額=平均標準報酬額50万円×5.481/1000×480ヶ月=131万5440円
 
厚生年金に40年間加入していて、その間の平均年収が600万円の会社員であれば、老齢基礎年金79万5000円と老齢厚生年金131万5440円、合計211万440円をもらえることになります。
 

年収600万円の会社員と自営業者の年金の差

年収600万円の会社員と自営業者とで、国民年金と厚生年金の保険料および年金受給総額を試算した結果は、図表2のようになりました。
 
図表2

年金保険料(月額) 年金受給額
会社員 4万5750円 211万440円
自営業者 1万6520円 79万5000円
差額 2万9230円 131万5440円

筆者作成
 
年金保険料は自営業者より会社員のほうが多いですが、厚生年金保険料は会社と会社員が折半しているので、実際に納められている保険料の差はもっとあることになります。一方で、納めている保険料が多い分、会社員のほうが受け取れる年金額も多くなっています。また、年金受給額を月額に換算すると、その差は約11万円となります。
 

老後の生活費を考えて、老後資金の準備を検討しましょう

会社員であれ自営業者であれ、老後にどのくらいの生活費が必要か検討することは、大事になってきます。必要な生活費を年金でどのくらいカバーできるのかが分かれば、おのずと老後のために準備しておかなければならない老後資金を見積もることができます。
 
年金額だけを比べると、自営業者は会社員よりも老後資金の準備がより必要になります。しかし定年のある会社員と違い、自営業者であれば、60歳以降も同額の収入を見込んで働きつづけることで、生活費をまかなう方法も考えられるでしょう。
 
年金額を増やすためには、公的年金以外にも、任意加入できるiDeCoや国民年金基金といった制度もありますので、検討してみましょう。
 

出典

日本年金機構 公的年金制度の種類と加入する制度
日本年金機構 国民年金保険料
日本年金機構 老齢基礎年金の受給要件・支給開始時期・年金額
日本年金機構 令和2年9月分(10月納付分)からの厚生年金保険料額表(令和5年度版)
日本年金機構 老齢厚生年金の受給要件・支給開始時期・年金額
日本年金機構 は行 報酬比例部分
 
執筆者:小山英斗
CFP(日本FP協会認定会員)

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