更新日: 2023.12.26 その他年金

障害年金は60歳以下でももらえる? 障害者手帳はどのような人がもらえる?

執筆者 : 小山英斗

障害年金は60歳以下でももらえる? 障害者手帳はどのような人がもらえる?
病気やけがなどで、日常生活や仕事に制限を受けるような状態になったとき、経済的負担を軽減するための障害年金や、障害者手帳が交付されることで受けられる公的サービスなどがあります。本記事では、それらを受けることのできる条件について解説します。
小山英斗

執筆者:小山英斗(こやま ひでと)

CFP(日本FP協会認定会員)

1級FP技能士(資産設計提案業務)
住宅ローンアドバイザー、住宅建築コーディネーター
未来が見えるね研究所 代表
座右の銘:虚静恬淡
好きなもの:旅行、建築、カフェ、散歩、今ここ

人生100年時代、これまでの「学校で出て社会人になり家庭や家を持って定年そして老後」という単線的な考え方がなくなっていき、これからは多様な選択肢がある中で自分のやりたい人生を生涯通じてどう実現させていくかがますます大事になってきます。

「未来が見えるね研究所」では、多くの人と多くの未来を一緒に描いていきたいと思います。
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障害年金と障害者手帳は別の制度

同じ「障害」という名前がついていることから、「障害年金と障害者手帳は同じ制度のもの」と思っている人もいるかもしれません。しかし、それらは別の制度のもとで運営されているものです。
 
障害年金は、「日本年金機構」が運営している年金制度です。一定の条件を満たすことで、年金を受給することができます。一方で、障害者手帳は、「地方自治体」による公的サービスを通して交付されるものです。障害者手帳を取得することで、税の軽減措置や公共交通機関での料金の割引サービス、医療費の助成などを受けることができます。
 
また、障害年金にも障害者手帳にも障害認定基準となる「等級」がありますが、別の制度のため、それぞれの等級は連動しているわけではありません。「障害年金の等級」と「障害者手帳の等級」が同じではないことに、注意が必要です。
 

障害年金とは

障害年金は、老齢年金や遺族年金と同様に、国の年金制度の一つです。障害年金には、国民年金に加入していた場合に請求できる「障害基礎年金」と、厚生年金に加入していた場合に請求できる「障害厚生年金」があります。
 

障害年金はどのようなときにもらえる?

障害年金は原則20歳から65歳の誕生日の前日まで請求できますが、障害年金を受給するためには、図表1の3つの要件を満たす必要があります。
 
図表1

要件 障害基礎年金 障害厚生年金
加入要件 初診日に国民年金の被保険者である。もしくは初診日が以下のいずれかに該当する。
 
・20歳前である
・日本国内に住んでいる、60歳以上65歳未満の年金未加入期間である
初診日に厚生年金の被保険者である
障害程度要件 障害の状態が、障害認定日に、障害等級表で定められた1級または2級のいずれかに該当 障害の状態が、障害認定日に、障害等級表で定められた1級から3級のいずれかに該当
保険料納付要件 以下のいずれかを満たすこと。ただし、20歳前の年金制度に加入していない期間に初診日がある場合、納付要件は不要。
 
■2/3要件(原則)
初診日の前日に、初診日がある月の前々月までの被保険者期間で、国民年金の保険料納付済期間(厚生年金保険の被保険者期間、共済組合の組合員期間を含む)と保険料免除期間を合わせた期間が2/3以上あること。
 
■直近1年要件(特例)
初診日が2026年4月1日前にあるときは、初診日において65歳未満の場合、初診日の前日において、初診日の属する月の前々月までの1年間に保険料の未納がないこと。
左記の「2/3要件」もしくは「直近1年要件」を満たしていること。

出典)日本年金機構「障害基礎年金の受給要件・請求時期・年金額」と「障害厚生年金の受給要件・請求時期・年金額」より筆者作成
 
「初診日」とは、障害の原因となった病気やけがについて、初めて医師または歯科医師の診療を受けた日のことです。初診日に国民年金と厚生年金のどちらに加入していたかによって、「障害基礎年金」と「障害厚生年金」のどちらを受給できるのかが決まりますので、初診日は重要となります。
 
なお、初診日に厚生年金に加入していた人は、1級、2級であれば障害基礎年金と障害厚生年金の両方が受給でき、3級であれば障害厚生年金のみの受給となります。
 
また「障害認定日」とは初診日から1年6ヶ月を経過した日、またはそれよりも早く病気やけがが治った日(症状が固定し、治療の効果が期待できない状態を含む)になります。なお、障害認定日以後に20歳に達したときは、20歳に達した日となります。ほかにも、初診日から1年6ヶ月以内に、手術などにより所定の状態になった日なども、障害認定日になる場合があります。
 

障害の程度(等級)とは?

障害の状態に応じて、法令により、障害の程度(等級)が定められています。その状態の目安は、等級別に図表2のとおりです。
 
図表2

障害の程度(等級) 状態の目安
1級 他人の介助を受けなければ日常生活のことがほとんどできないほどの状態。
2級 必ずしも他人の助けを借りる必要はなくても、日常生活は極めて困難で、労働によって収入を得ることができないほどの状態。
3級 労働が著しい制限を受ける、または、労働に著しい制限を加えることを必要とするような状態。日常生活にはほとんど支障がない。

出典)日本年金機構「障害厚生年金の受給要件・請求時期・年金額」より筆者作成
 

障害年金はいくらもらえる?

障害年金で受給できる年金額は、障害基礎年金と障害厚生年金で異なります。また、等級によっても違いがあります。障害基礎年金は定額ですが、障害厚生年金は納めていた保険料や納付期間によって異なります。
 
なお、障害厚生年金に該当する状態よりも軽い障害が残ったときは、障害厚生年金受給者に限り、障害手当金(一時金)を受け取れる仕組みもあります。
 
図表3

等級 障害基礎年金 障害厚生年金
1級 ■昭和31年4月2日以降生まれ
99万3750円+子の加算額
■昭和31年4月1日以前生まれ
99万750円+子の加算額
報酬比例の年金額の1.25倍

65歳未満の配偶者の加給年金額(22万8700円)
2級 ■昭和31年4月2日以降生まれ
79万5000円+子の加算額
■昭和31年4月1日以前生まれ
79万2600円+子の加算額
報酬比例の年金額

65歳未満の配偶者の加給年金額(22万8700円)
3級 支給なし 報酬比例の年金額
ただし、以下の最低保証あり
■昭和31年4月2日以降生まれ
59万6300円
■昭和31年4月1日以前生まれ
59万4500円

 
■子の加算額

2人まで 1人につき22万8700円
3人目以降 1人につき7万6200円

※子とは18歳になった後の最初の3月31日までの子、または20歳未満で障害等級1級または2級の状態にある子
 
出典)日本年金機構「障害基礎年金の受給要件・請求時期・年金額」・「障害厚生年金の受給要件・請求時期・年金額」より筆者作成
 

障害者手帳はどのような人がもらえる?

障害者手帳は、地方自治体による公的サービスのなかで交付されるものです。さまざまな助成や税の軽減、公共交通機関での割引サービスなどの優遇を受けられます。また、就職の際には障害者雇用枠も利用できるようになります。
 
障害者手帳には主に図表4の3種類があり、対象となる人に各種手帳が交付されます。障害の程度を表す「等級」の定義も、手帳によって異なります。
 
図表4

手帳の種類 等級 対象者
身体障害者手帳 1級~7級 病気やけがなどにより、日常生活に支障をきたす障害を負った人
精神障害者保健福祉手帳 1級~3級 なんらかの精神疾患(発達障害やてんかんを含み、知的障害を除く)により、長期にわたり日常生活および社会生活に支障をきたす人
療育手帳
※手帳名には別名がある場合があり、東京都や横浜市では「愛の手帳」となっている。
最重度~軽度
(表記方法は発行する自治体でさまざま)
例)
東京都:1度(最重要)、2度(重要)、3度(中度)、4度(軽度)
横浜市:A1(最重要)、A2(重要)、B1(中度)、B2(軽度)
知的障害のある人

出典)厚生労働省「身体障害者手帳」「障害者手帳」、東京都福祉局 東京都児童相談センター・児童相談所「愛の手帳」、より筆者作成
 
上記の各手帳交付を受けるための障害認定基準は、自治体によって異なりますので、詳細はお住まいの自治体の相談窓口やホームページで確認するようにしましょう。
 

障害者手帳を持つことで受けられるサービス

障害者手帳を持つことで受けられる軽減措置やサービスも、自治体によって異なります。以下は、神奈川県横浜市在住の対象者に対して実施されている、軽減措置やサービスの一例です。
 

・所得税・住民税の障害者控除
・自動車税(軽自動車税)環境性能割・自動車税種別割、軽自動車税(種別割)の減免
・NHK放送受信料の免除
・携帯電話料金の割引等
・水道料金等の減免
・ごみ出しの支援(対象者宅の敷地内や玄関先から、直接ごみを収集)
・重度障害者医療費助成(保険診療の一部負担金を助成)
・交通手段の割引(鉄道・バス運賃の割引、タクシー料金の割引、有料道路通行料金の割引など)

 

まとめ

障害年金は、病気やけがで収入が減少してしまったようなときに受給することで、家計の助けになります。また、障害者手帳を持つことで、日常生活を支援するさまざまなサービスを受けることが可能になります。
 
ただし、障害年金と障害者手帳は別制度であるため、それぞれに障害の程度の基準となる等級がありますが、連動しているわけではないことに注意しましょう。
 
また、障害者手帳で受けられるサービスは自治体によっても異なります。住まいの地域でどのようなサービスを受けることができるのか、自治体の窓口で相談するとよいでしょう。
 

出典

日本年金機構 障害基礎年金の受給要件・請求時期・年金額
日本年金機構 障害厚生年金の受給要件・請求時期・年金額
厚生労働省 身体障害者手帳
厚生労働省 障害者手帳
東京都福祉局 東京都児童相談センター・児童相談所 愛の手帳
横浜市 NHK放送受信料の免除
横浜市 水道料金等の減免
 
執筆者:小山英斗
CFP(日本FP協会認定会員)

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