更新日: 2023.12.29 その他年金
がんで余命1年半と言われました。年金を「繰下げ受給」する予定だったのですが、今から受給を開始できないでしょうか……?
そこで、がんで余命1年半と診断されたことを理由に、「繰り下げを中止して年金を受給したい」と考えている方を例に考えていきます。
執筆者:柘植輝(つげ ひかる)
行政書士
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2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。
繰下げ受給の概要
年金の繰下げ受給とは、65歳より遅くに年金の受け取りを開始することで、将来、その分増額された年金を受け取ることができるというものです。
繰り下げは1ヶ月単位で、最大75歳まで行うことができます。1ヶ月繰り下げることで、年金額は0.7%増額されます。仮に75歳まで繰り下げれば、84%も年金が増額されることになるわけです。
例えば、11万円の年金を受け取ることのできる方が、75歳まで繰り下げを行うと、年金額は9万2400円も増加して、合計で1ヶ月当たり20万2400円にもなるのです。
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繰り下げは中止できる
繰り下げは、いつでも中止することができます。その際に、繰り下げを中止して年金を受給するには、2種類の方法があります。まず通常の年金の繰下げ受給を選べば、その時点に応じて増額された年金を生涯にわたって受け取り続けることができます。
それとは別に、これから受け取る年金の増額分はなかったことになるものの、65歳時点までさかのぼって、それまで受け取っていなかった分の年金をまとめて受け取ることができます。
例えば、ある方が「この先、月換算10万円予定の年金で生活するには心もとない」と感じて、年金の繰下げ受給で支給額の増額を予定しているとしましょう。
その方が68歳時点でまだ年金を受給していなかったとすると、そこから65歳までさかのぼった段階の支給予定額である月換算10万円で、65歳から68歳までの分の年金を一括で受け取ることができます。
なお、年金の繰り下げを取りやめることには、特別な事情は必要ありません。がんで余命宣告を受けている場合はもちろん、単に「生活に困ったから」という理由でも問題ありません。
繰下げ受給の手続きは特段複雑なものではありません。最寄りの年金事務所へ、年金に関する請求書を提出することで行えます。詳細については、最寄りの年金事務所へ相談してください。
余命宣告を受けたら繰り下げを中止するべき?
余命宣告を受けて、生存可能な時間が明確になった場合には、基本的には年金の繰り下げを中止して、65歳までさかのぼってまとめて年金を受け取るといいでしょう。
年金の繰下げ受給を選ぶと、月々の受給額が増加する反面、受給できる期間は短くなってしまいます。つまり、生涯で受け取れる年金総額が少なくなる可能性があるということです。
例えば、ある方の年金額を月換算10万円だと仮定して、75歳で亡くなったとします。この場合、この方が65歳から受け取っていれば、10年間で1200万円の年金を受け取ることができます。
しかし、70歳で受け取りを開始していて75歳で亡くなっていれば、42%も年金が増額されたとしても、総額では852万円しか受け取ることができません。
こういった理由から、がんに限らず病気で余命宣告などを受けて、年金を受け取れる期間が短いと想定されるときは、繰下げ受給を予定していても、それを取り消して、65歳までさかのぼった分の年金を一括で受け取るほうがよいと考えられるのです。
ちなみに、70歳以降になってから、さかのぼって年金を受け取ることを選択した場合は、特例的な繰下げみなし増額制度により、請求の5年前の日時点で繰下げ受給の申し出があったものとみなして、増額された年金を一括で受け取ることとなります(昭和27年4月2日以後に生まれた方、または平成29年4月1日以後に受給権が発生した方が対象です)。
ただ、80歳以後に請求した場合は適用されません。なお、既に繰下げ受給によって増額された年金を受け取り始めている場合は、その繰下げ受給を取り消すことはできないため、注意してください。
まとめ
年金の繰下げ受給は受け取り期間が短くなる分、1ヶ月当たりの年金が増額されますが、短期間しか受け取れなければ、総受給額は少なくなる可能性が高くなります。年金は、繰下げ受給の待機中であっても、実際に受け取りを開始していなければ、65歳までさかのぼって受給することもできます。
もし、がんで余命宣告されているなど、年金を長く受け取り続けることができない場合は、年金の繰り下げを取りやめて、65歳までさかのぼって年金を受け取ることをおすすめします。
出典
日本年金機構
66歳以後に年金の請求(繰下げ請求または65歳にさかのぼって請求)をするとき
年金の繰下げ受給
執筆者:柘植輝
行政書士