うちの家庭、iDeCoとNISAどちらが向いていますか? 夫・高卒会社員+妻・扶養内パートのケース
配信日: 2023.12.30
ただ、高卒の平均年収が大卒と比べて低いという資料を見て、今後の生活資金など不安になり、予算的にまずはiDeCoかNISAのどちらか一方から始めたいそうです。どのようにしたら良いかアドバイスします。
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執筆者:植田周司(うえだ しゅうじ)
CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士、円満相続遺言支援士(R)
外資系IT企業を経て、FPとして「PCとFPオフィス植田」を起業。独立系のFPとして常に相談者の利益と希望を最優先に考え、ライフプランをご提案します。
お客様に「相談して良かった」と言っていただけるよう、日々努力しています。
高卒と大卒の賃金格差
厚生労働省「令和2年賃金構造基本統計調査の概況」の学歴別に賃金を見ると、男性では、大卒 39.19 万円、高卒 29.5 万円、また女性では、大卒 28.83 万円、高卒 21.8 万円となっています(※1)。
高卒の収入は男女とも大卒と比較して75%程度となっています。厚生年金は年収が少なければ受け取る年金額も少なくなります。一般的に老後の収入は年金が主となるため、Aさん夫婦の心配ももっともです。これから子どもの教育費も増えるため、今から準備することが大切です。
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投資の目的とゴール
資産運用を行うときは、目的(何に使うのか)とゴール(いつまでにいくら蓄えるのか)を明確にしておきましょう。目的とゴールが不明確なまま資産運用を始めて、いつの間にか、お金を増やすことだけが目的となっている人もいます。
Aさんの場合、今後の生活資金が不安とのことですが、住宅ローンも確実に返済していて現状の生活費は問題なさそうです。ただし、将来の子どもの教育資金、老後の生活費については今から準備が必要と考えられます。それぞれ必要な時期と目標額を明確にして、毎月の積立額を算出します。
iDeCoとNISA比較
AさんはiDeCoとNISAのどちらかを始めたいとのことですので、まずはその違いを確認しておきましょう。
両方とも資産形成・運用を非課税でできる制度ですが、以下のように、その目的やルールに大きな違いがあります。なお、確定拠出年金には企業型と個人型があり、今回は個人型のiDeCoを対象にご説明します。
表1はiDeCoとNISAの比較表です。最も大きな違いは引き出し制限です。iDeCoは年金制度の一部として老後資金を補完する目的のため、60歳まで引き出すことができません。また、最長でも65歳までしか積み立てることができません。NISAはいつでも現金化できるため、自宅の購入や子どもの教育費、老後資金など多目的に利用できます(※2、※3)
最初に始めるならiDeCo
Aさんの場合、iDeCoとNISAのどちらか一方となるとiDeCoをお勧めします。iDeCoには所得減税があり、例えば年間24万円積み立てた場合、所得税の税率20%(注)とすると、年間で約4.8万円所得税が減税となります。翌年の住民税も2.4万円少なくなります。同じ条件で20年間iDeCoを積み立てたとすると、144万円税金が安くなります(注:別途復興特別所得税も下がります)。
NISAには所得減税がありませんので、まったく同じ投資信託に同じように投資したとしても、iDeCoのほうが有利となります。
なお、Aさんの奥さまは扶養控除内でパートとして働いているため、所得税、住民税を払っていないとすると、iDeCoの所得控除のメリットはありません。そのため奥さまの場合は、引き出し制限のないNISAを利用することをお勧めします。
また、iDeCoは投資対象が比較的リスクの少ない投資信託に絞られています。どの投資信託を選んでも、長期積み立てを継続すれば、大きな失敗をすることは少ないでしょう。初心者にも簡単に始められて、あまり運用に手間がかからないのもメリットです。
逆に、新NISAでは成長投資枠を使って株式等の多様な商品に投資することが可能です。それがメリットでもありますが、投資を始める方にとっては多くの勉強が必要となり、知識や経験不足で失敗する可能性も十分考えられます。
途中からNISAの併用がお勧め
先の2つの比較で説明しましたように、iDeCoは60歳まで引き出せないことに注意が必要です。NISAは任意の時点でいつでも現金化することができるため、子どもの教育資金目的で利用することが可能です。
iDeCoで老後資金を蓄えながら、資産運用の勉強と経験を積んで、少し余裕ができてきたらNISAを始めると良いでしょう。現在コツコツと積み立てているお金をNISAに変更することで、教育資金を効率良く準備できます。NISAはいろいろな商品に投資することが可能ですが、教育資金目的であれば、積み立て投資枠での運用をお勧めします。
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まとめ
iDeCoとNISAは、その目的により上手に使い分けましょう。将来的にiDeCoとNISAの2つを運用することを考えると、両方を取り扱っている金融機関で口座開設することをお勧めします。また、iDeCoから資産形成を始める場合でも、新NISAの運用をスムーズに始めるために、時間のある時に新NISAの口座開設も行っておきましょう。
出典
(※1)厚生労働省 令和2年賃金構造基本統計調査の概況
(※2)金融庁 新しいNISA
(※3)iDeCo公式サイト
執筆者:植田周司
CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士、円満相続遺言支援士(R)