「払い損はイヤなので…」60歳から年金を受給した場合、途中から「損」になる時期がある?
配信日: 2023.12.30
本記事では、年金が払い損になってしまわないように、60歳から繰上げ受給した場合の損益分岐点となる年齢を解説します。
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)
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60歳から年金を受給した場合、80歳10ヶ月を過ぎると損をする
繰上げ受給による年金額の減額率から受け取れる年金額を試算し、65歳からの受給開始と比較した場合の損益分岐点となる年齢を計算すると、80歳10ヶ月が導き出されます。結論として、年金を60歳から繰上げ受給した場合、65歳からの受給開始の場合と比べると、80歳10ヶ月を過ぎた時点で損をしてしまいます。
本項では、損益分岐点の計算方法について順を追って解説します。
年金の繰上げ受給とは?
年金は原則として65歳から受給開始ですが、繰上げ受給や繰下げ受給の制度を利用することで、60歳から75歳の間の任意のタイミングで受給が開始できます。
繰上げ受給を利用した場合、昭和37年4月2日以降生まれの方は、最大で24%受け取れる年金額が減額されます。ただし、昭和37年4月1日以前生まれの方の減額率は最大30%であるため、減額率は緩和されています。
60歳まで年金受給を繰上げた場合に受け取れる年金額は?
令和5年4月分より、67歳以下の方の年金額は図表1のとおりです。
【図表1】
国民年金 | 6万6250円 |
厚生年金 | 22万4482円 |
合計 | 29万732円 |
日本年金機構「令和5年4月分からの年金額等について」より筆者作成
昭和37年4月2日以降生まれの方の場合、60歳まで繰上げた場合の減額率は24.0%となるため、繰上げ受給をして受け取れる年金額は次のように計算できます。
29万732円×(100-24%)=22万956円
60歳まで年金受給を繰上げた場合に、受け取れる年金額は月あたり22万956円です。
60歳から年金受給を繰上げた場合、損益分岐点は80歳10ヶ月
60歳まで年金受給を繰上げた場合、65歳からの受給と比較した際の損益分岐点を計算します。
65歳で受け取る年金を100%とした場合、60歳まで繰上げた場合に減額される年金額(100×24.0%)を5年間で受け取れなかった場合の年金24.0%で割ると、損益分岐点を算出できます。
・100×5年÷24.0= 20.833(20年10ヶ月)年後
・ 60歳+20年10ヶ月=80歳10ヶ月
よって、80歳10ヶ月が、65歳から年金を受給開始した場合よりも損をしてしまう損益分岐点となる年齢です。
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多くの方が60歳から年金を受給した場合に損をしてしまう
60歳から年金を受給開始した場合、65歳から受給開始した場合と比較すると、80歳10ヶ月を過ぎると損をしてしまいます。
本項ではどのような方が、65歳からの受給開始と比べて損をしてしまうのかについて解説します。また、どの程度の方が繰上げ受給を利用しているのかを知ったうえで、繰上げ受給を利用するかどうかの参考にしてみましょう。
平均寿命まで生きると損をしてしまう
厚生労働省の公表する令和4年簡易生命表によると、平均寿命は図表2のとおりです。
【図表2】
男性 | 81.05歳 |
女性 | 87.09歳 |
厚生労働省「令和4年簡易生命表の概況 1 主な年齢の平均余命」より筆者作成
男女の平均寿命を合計すると約84歳のため、平均寿命まで生きた場合、損をしてしまうことが分かります。
繰上げ受給を利用している方は0.6%
厚生労働省の公表する「厚生年金保険・国民年金事業年報」によると、令和3年度末での年金の繰上げ率は0.6%と、繰上げ受給を利用している方の割合が非常に少ないことが分かります。
60歳から年金を受給開始すると多くの方が損をしてしまう点に注意!
60歳から年金を繰上げ受給した場合、65歳から年金を受給開始した場合と比較して、80歳10ヶ月を超えた段階から損をしてしまいます。平均寿命は男女計で約84歳のため、平均寿命まで生きる多くの方が損をしてしまう計算です。
損をしたくないから、早く寿命を迎えたいと考えながら生きるのも不健康です。したがって、繰上げ受給を利用するかどうかは慎重に考えたほうがよいでしょう。
出典
日本年金機構 年金の繰上げ受給
厚生労働省 厚生年金保険・国民年金事業年報
日本年金機構 令和5年4月分からの年金額等について
厚生労働省 令和4年簡易生命表の概況
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー