更新日: 2024.01.11 その他年金
年金を「繰上げ受給」する場合の注意点3選!障害年金や遺族年金への影響はある?
そこで、今回は繰上げ受給の注意点を解説していきます。
執筆者:柘植輝(つげ ひかる)
行政書士
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2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。
年金額が減額する
繰上げ受給最大の注意点といっていいものに、年金額の減額があります。繰り上げは1ヶ月単位で行うことができ、1ヶ月繰り上げるごとに、将来受け取る年金額は0.4%減額されます(昭和37年4月2日以降生まれの方)。
繰り上げの上限は60歳であり、最大で24%減額されることになります。仮に、65歳から月換算10万円の年金を得られる方の場合、上限である60歳まで繰り上げると、月換算の年金額は7万6000円になるというわけです。
繰上げ受給は、一度請求するとその後取り消しをすることはできず、将来にわたって減額された年金額で受け取りつづけることになります。そのため、後悔しないよう検討する必要があるでしょう。
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他の年金への影響を考慮する
日本年金機構「年金の繰上げ受給」によると、繰上げ受給をすると、遺族年金や障害年金へ影響するようです。特に大きなものとしては「障害年金の受給が不可能になる可能性がある」という点です。
例えば「障害認定日には障害が大きくなかったけれど、その後重症化し、障害年金を受給できるようになった」という場合を考えてみましょう。そのような場合でも、繰上げ受給をすると障害年金が受給できなくなります。また、繰上げ請求をすると、それ以降に病気や事故で障害を負っても、障害年金が受給できなくなります。
さらに繰上げ受給は併給の禁止に抵触するため、65歳までの間は、繰上げ請求した老齢年金は、遺族厚生年金など他の年金と選択することとなります。
他にも、国民年金を満額に近づけるための任意加入や、保険料の追納などといったこともできなくなってしまいます。
このように、繰上げ受給が他の年金に与える影響は、非常に大きく複雑です。この点については、繰上げ受給前に必ず年金事務所などへ相談しておくことをおすすめします。
長生きのリスクを考慮する
繰上げ受給をする場合に絶対考えておかなければならないものとして、長生きのリスクがあります。繰上げ受給は早期に亡くなった場合には年金を多く受け取れますが、長生きすれば総受取額は小さくなります。
例えば、70歳で亡くなると仮定し、65歳から月額換算10万円を受け取れる方が60歳まで繰り上げた場合を考えてみましょう。月々の受取額は7万6000円になりますが、生涯での年金受取額は912万円です。しかし、65歳から受け取った場合は600万円になります。
同条件で90歳まで生きたと仮定しましょう。60歳から受け取った場合は、2736万円になります。一方、65歳から受け取れば3000万円となり、300万円近い金額の差がつきます。
繰上げ受給は、月々の年金受取額を減額され、長い年数で受け取ることができれば、総受取額は繰上げ受給しない場合に比べて少なくなることが分かります。
このように、長生きすればするほど、繰上げ受給は損をすることになります。「人生100年時代」といわれる昨今ですが、医療の発展などで今後はより寿命が延びることも考えられています。想定より長生きして、老後資金が尽きるということもあり得るため、繰上げ受給については、この点も知っておかなければなりません。
まとめ
繰上げ受給をする場合の注意点は、単純に毎月の年金額が減ることだけではありません。障害年金や遺族年金が受け取れなくなるなど、予想外の部分で年金額が大きく減少する可能性もあります。
加えて、短期的に見れば総受取額が多くなるものの、長生きすればするほど差がつき、損をするようになってしまいます。
このように、年金の繰上げ受給は、単に毎月の老齢年金の受給額が減少すること以上にさまざまな影響をもたらします。一度繰上げを選ぶと、以降は変更することができません。後悔することがないように、繰上げ受給をする場合はその影響を念入りに確認し、最悪の結果を踏まえつつシミュレーションしておいてください。
出典
日本年金機構 年金の繰上げ受給
執筆者:柘植輝
行政書士