更新日: 2024.01.15 その他年金

夫の死亡による遺族年金、私の子だけでなく前妻の子と同居で影響はある?

夫の死亡による遺族年金、私の子だけでなく前妻の子と同居で影響はある?
公的年金の遺族年金には、遺族基礎年金と遺族厚生年金があります。遺族基礎年金は定額で支給される年金で、一方、遺族厚生年金は原則、死亡した人の報酬比例部分の4分の3相当で支給される年金となっています。
 
夫が死亡した当時、夫と妻の子だけでなく、夫と前妻の子がいて同居していた場合、妻(後妻)の遺族年金の額に影響はあるのでしょうか。
井内義典

執筆者:井内義典(いのうち よしのり)

1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP(R)認定者、特定社会保険労務士、1級DCプランナー

専門は公的年金で、活動拠点は横浜。これまで公的年金についてのFP個別相談、金融機関での相談などに従事してきたほか、社労士向け・FP向け・地方自治体職員向けの教育研修や、専門誌等での執筆も行ってきています。

日本年金学会会員、㈱服部年金企画講師、FP相談ねっと認定FP(https://fpsdn.net/fp/yinouchi/)。

今回の事例

Aさん(40歳)は、25年以上会社員を続けている夫・Bさん(50歳)、AさんとBさんの間の子・Cさん(10歳・障害なし)、Bさんの前妻・Dさん(42歳)との間の子・Eさん(15歳・障害なし)と暮らしていました。
 
そのようななか、Bさんが亡くなりました。Bさんの死亡当時まで、Aさん、Bさん、Cさん、Eさんで同居していたことによって生計が同一であり、Aさんや学生であるCさんとEさんの年収も850万円未満であることから、Bさんによって生計を維持されていたことになります(図表1)。
 
Bさんの厚生年金加入記録から計算される老齢厚生年金(報酬比例部分)については、100万円相当となっています。なお、AさんとEさんは養子縁組をしていません。
 


 

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遺族基礎年金を受給する人

Bさんの死亡当時、AさんもCさんもEさんも生計を維持されていたことになります。遺族基礎年金は生計を維持されていた「子のある配偶者」と「子」が対象遺族です。
 
遺族年金での子とは、18歳年度末までの子(一定の障害がある場合は20歳未満の子)を指し、子のある配偶者は、死亡した人の配偶者で、死亡した人の子と生計が同一の人を指します。
 
AさんにとってEさんは実子でも養子でもありませんが、死亡したBさんから見ての子です。Aさんの実子・Cさんだけでなく、前妻の子・Eさんと生計が同じであるため、Aさんは2人の子のある配偶者に該当します。
 
Dさんについては、そもそも配偶者ではありません。そのため、遺族基礎年金は配偶者であるBさんに受給権が発生し、また、Bさんの子であることでCさん、Eさんにも受給権が発生します。
 
ただし、遺族基礎年金は受給権者全員が受給できるわけではありません。受給権者で優先順位の最も高い人が受給できることになり、「子のある配偶者」が「子」に優先します。
 
そのため、遺族基礎年金は実際Aさんに支給されることになり、CさんとEさんは支給停止となって実際の支給がありません。配偶者であるAさんが受給する遺族基礎年金は、基本額に子の数に応じた加算がされて支給されます。
 
子の加算も、死亡した人から見ての子の数ですので、2人分(CさんとEさん)の子の加算がされた125万2400円(2023年度の年額。基本額79万5000円+子の加算22万8700円×2)となります。
 

遺族厚生年金を受給する人

一方、遺族厚生年金については、その対象となる遺族に配偶者、子が含まれ、Bさんに生計を維持されていたAさん、Cさん、Eさんに受給権が発生します。
 
遺族基礎年金同様全ての受給権者は受給できず、優先順位の高い人が受給します。遺族基礎年金と異なり、子のない配偶者も遺族に含まれますが、優先順位は「子のある配偶者」「子」「子のない配偶者」の順です。
 
今回のケースでは「子のある配偶者」であるAさんが遺族厚生年金を受給することになり、Bさんの報酬比例部分の4分の3相当の75万円で計算されます。CさんとEさんは支給停止となります(支給は0円)。
 

後妻に遺族基礎年金と遺族厚生年金

以上のことから、図表2のようになり、Aさんの遺族基礎年金と遺族厚生年金の合計は200万2400円となる計算です。CさんやEさんが18歳年度末を迎えたり、Aさんがもし再婚したりすると、その受給もまた変わりますが、まずはこちらの額で受給することになります。
 


 
EさんはAさんの実子または養子でなくても、遺族基礎年金は2人分の子の加算がある点がポイントとなるでしょう。
 
執筆者:井内義典
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP(R)認定者、特定社会保険労務士、1級DCプランナー

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