大学生でも「年金を納める」って知りませんでした…!今から追納した場合、将来いくら年金が増えますか?
配信日: 2024.01.17
国民年金の保険料を納めていない大学生の方が、あとから保険料を追納した場合、将来の年金額はどのくらい増やせるのか、学生を対象とした保険料の納付猶予制度と併せて確認していきます。
執筆者:柘植輝(つげ ひかる)
行政書士
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2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。
国民年金は学生でも保険料を支払う義務がある
日本国内に住んでいる20歳以上、60歳未満のすべての人は、国民年金への加入と保険料の納付が義務付けられています。もちろん大学生であっても、20歳からは国民年金に加入して保険料を支払わなければなりません。
国民年金保険料を未納のままにしていると納付勧奨が行われ、さらに督促状で指定された期限までに保険料が納付されない場合、最終的には本人に加えて、世帯主や配偶者といった連帯納付義務者の財産が差し押さえられることもあります。
また、保険料が未納となっている期間は、原則の65歳から年金を受け取るために必要な受給資格期間(保険料納付済期間と免除期間などを合計した期間)には含まれません。
老齢基礎年金の受給資格期間は10年以上が基本となっているので、例えば大学在学中のうち2年間のみ保険料が未納であっても、卒業後に10年以上の受給資格期間を満たしていれば将来的に年金が受給できないということはありません。
ただし、受け取れる老齢基礎年金は保険料の未納期間に応じて減額されます。
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在学中に保険料の納付が困難なら学生納付特例制度を利用
国民年金保険料を未納にしていると将来の年金額に影響するほか、財産が差し押さえとなる恐れもありますが、大学在学中に保険料の納付が困難な場合、学生納付特例制度を利用して未納の状態を解消することができます。
学生納付特例制度とは所得が一定以下の学生を対象として、申請により国民年金保険料の納付が猶予される制度です。
所得については、申請する本人の前年の所得で「128万円+扶養親族等の数×38万円+社会保険料控除等」が基準となっており、親など家族の所得は関係ありません。
※出典:日本年金機構「国民年金保険料の学生納付特例制度」
また、学生納付特例制度は申請した年度(4月から翌年3月)について保険料の納付猶予を受けられますが、在学中であれば納付期限から2年を経過していない期間の未納分もさかのぼって申請できます。
申請の手続きは市区町村役場の国民年金担当窓口や最寄りの年金事務所、在学中の学校のほか、提出書類の郵送やマイナポータル経由での電子申請も行えます。
ただし、学生納付特例制度によって保険料の納付を猶予された期間は年金の受給資格期間には含まれますが、老齢基礎年金の受給額には反映されません。
そのため、将来受け取る老齢基礎年金を満額にしたい、または満額に近づけたいと考えた場合には、猶予された期間の保険料を追納(後払い)する必要があります。
追納によってどれくらい年金額を増やせるのか
学生納付特例制度を利用して保険料の納付猶予を受けていた期間がある方が、追納によってどれくらい年金を増額できるのか確認します。
老齢基礎年金は、国民年金の全加入期間(480ヶ月)の保険料を納めることで満額を受け取れ、令和5年度の満額は年額79万5000円となっています。老齢基礎年金の受給額の計算式は以下のとおりです。
79万5000円×国民年金加入期間の保険料納付月数÷480ヶ月
学生納付特例制度により、例えば2年(24ヶ月)の猶予期間があるケースでは、そのほかの国民年金加入期間(456ヶ月)の保険料をすべて納付した場合に受け取れる老齢基礎年金は年額75万5250円で、満額に対して約4万円の減額となります。
79万5000円×456ヶ月÷480ヶ月=75万5250円
猶予期間の国民年金保険料については、1ヶ月分を追納するごとに年金額をおよそ1656円増やせます。計算式は以下の通りです。
79万5000円×1ヶ月÷480ヶ月=1656円
※1円未満の端数は四捨五入して計算
大学在学中に納付猶予を受けた2年分の保険料うち、1年分(12ヶ月分)を追納した場合、老齢基礎年金は年間で1万9872円の増額となります。もちろん2年分をすべて追納すれば、猶予期間に対する減額はなくなります。
追納を行うには年金事務所の窓口、または郵送での申請が必要ですが、追納が承認された月から前10年以内であれば猶予期間の保険料を納めることができます。そのため、大学在学中に猶予された保険料の追納は、社会人になってからでも十分に間に合います。
また、追納した国民年金保険料は全額が所得控除の対象となるので、所得税・住民税の節税効果もあります。ただし、猶予を受けた期間の翌年度から3年目以降は、経過期間に応じた加算額が追納する保険料(当時の保険料額)に上乗せされます。
まとめ
大学生でも20歳からは国民年金保険料を納める義務があり、納付が困難な場合でも学生納付特例制度を利用して猶予を受けられます。
保険料の納付猶予を受けた期間について老齢基礎年金の受給額には反映されませんが、受給資格期間には算入され、10年以内であれば保険料を追納して年金額を増やす、また満額とすることも可能です。例えば、1年分の保険料の追納によって増やせる老齢基礎年金は年額で約2万円と想定されます。
国民年金保険料を納めていない学生の方で、将来、満額の年金を受け取りたいという場合は学生納付特例制度を申請し、納付猶予を受けてから10年以内に追納することをおすすめします。
なお、納付猶予、免除申請ができるのは納付期限から2年以内の保険料に限られるので注意しましょう。
出典
日本年金機構 国民年金保険料の学生納付特例制度
日本年金機構 老齢基礎年金の受給要件・支給開始時期・年金額
日本年金機構 国民年金保険料の追納制度
執筆者:柘植輝
行政書士