更新日: 2024.01.24 その他年金
年金は何歳から受け取るのがおすすめ?平均年収を想定して「60歳・65歳・70歳」で比較
執筆者:柘植輝(つげ ひかる)
行政書士
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2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。
受取時期によって、年金の受取額が変わるのはなぜ?
受取時期によって、年金の受取額が変わるのには二つの理由があります。
一つ目は「年金は受け取る年齢によって、支給額が増減する」という点です。原則、年金は65歳から受け取ることができます。そのため、65歳から受け取りを開始すれば、年金の受給額は減りも増えもしません。
しかし、65歳よりも早く受け取ると、支給される1月当たりの年金額は減少します。最速で60歳から受け取ることができますが、日本年金機構「年金の繰上げ受給」「年金の繰下げ受給」によると、1月早めるごとに年金は0.4%、最大で24%減額されます。逆に65歳よりも遅く受け取ると、年金額は1月当たり0.7%、最大84%増加することが分かります。
二つ目が「年金は生きている間だけ受け取れる」という点です。例えば、84歳まで生きた方が60歳から年金を受け取っていれば、24年間受け取ったことになりますが、70歳から受け取ることにしていれば14年しか受け取れなかった、という具合です。
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60歳・65歳・70歳、それぞれ受け取り時期による違いは?
厚生労働省年金局「令和4年度厚生年金保険・国民年金事業の概要」によると、令和4年度末の厚生年金の受給者の平均年金月額はおよそ14万5000円です。厚生年金の受給額はおおむね年収に比例するため、時代に応じた平均的な年収で働いてきた方が受け取れる年金額を1月当たり14万5000円としましょう。
その上で、60歳、65歳、70歳で受け取ったときの生涯の年金受取額をそれぞれ見ていきます。なお、何歳まで生きるのかという点については、厚生労働省「令和4年簡易生命表の概況」を基に男女の平均寿命の中間点の84歳とします。
まず1月当たりの額ですが、60歳から年金を受け取る場合、24%減額された11万200円になります。それに対して、65歳から受け取る場合は14万5000円のままです。そして、70歳から受け取る場合は、42%増額された20万5900円になります。
すると、70歳から受け取った場合、受取期間は14年と短いものの、1月当たりの支給額は最も高くなり、受け取る年金の総額も最も大きくなります。逆に、1月当たりの支給額が最も小さくなる60歳から受け取った場合は、受け取れる年金の総額も最も少なくなります。特に両者の差は300万円近く開いており、無視することができません。
表1
60歳で受け取り開始 | 65歳で受け取り開始 | 70歳で受け取り開始 |
3173万7600円 | 3306万円 | 3459万1200円 |
※各サイトを基に算出し、筆者が作成
平均年収で働いてきて、平均寿命で亡くなる場合、70歳から受け取ると、最も多く年金を受け取ることができそうです。
安易に70歳からの受給を選択しないこと
先ほどの試算を見ると「70歳から受け取った方がいいのか」と思うかもしれませんが、それにはある程度のリスクがあります。
一つが、その間の生活費です。一般的には60歳ないし65歳で定年退職となるため、5年から10年の間の生活費をどうするかという課題が残ります。
また、人は病気や事故などでいつ亡くなるか分かりません。予定より早期に亡くなり、70歳まで繰り下げない方がよかった、という結果に終わることもあります。
このようなリスクを踏まえると、総受取額だけを見て「70歳から年金を受け取る」と決めるのではなく、自分のライフスタイルやもしもの時のリスクを踏まえ、納得できるタイミングで受給するのがおすすめです。
まとめ
「平均年収で働いてきて、平均寿命まで生きる」と仮定した場合の年金の受取時期について、60歳・65歳・70歳の三通りの年齢で比較すると、70歳で受け取った場合が、最も多く年金を受け取れるようです。
しかし、年金の受取時期を決めるに当たっては、諸般の事情を考慮して決めなければ、後悔する可能性もあります。
年金の受給開始時期に迷っているのであれば、後悔することのないよう、生活費や死亡のリスクなどを考慮し「より多く」と欲を出さず、万が一のことがあっても納得できる年齢に決めるようにしてください。
出典
日本年金機構 年金の繰上げ受給
年金の繰下げ受給
厚生労働省 令和4年度厚生年金保険・国民年金事業の概況
主な年齢の平均余命
執筆者:柘植輝
行政書士