更新日: 2024.01.24 厚生年金
厚生年金の「最高額」とは? もらえる人の現役時代の「年収」はいくら?
そこで今回は「厚生年金の最高額は何円となるのか」「それをもらえるのはどのような人で、現役時代の年収はどれくらいなのか」ということを考えていきます。
執筆者:柘植輝(つげ ひかる)
行政書士
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2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。
厚生年金の支給額が人によって異なる理由
老齢厚生年金(以下、厚生年金とします)の支給額が人によって異なる理由は、厚生年金への加入期間とその間の収入が人によって異なるためです。厚生年金の支給額において大部分を占める報酬比例部分は、加入期間の平均年収(厳密には平均標準報酬額)が高ければ高いほど、加入月数が長ければ長いほど増加します。
図表1
※出典:日本年金機構「は行 報酬比例部分」
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厚生年金の最高額はいくら? 年収はどれくらい?
しかし、厚生年金の支給額は青天井ではありません。加入可能な年齢や平均標準報酬額には上限が定められているからです。理論上、加入可能な年齢の上限は70歳、平均標準報酬額の上限は月額65万円(報酬月額63万5000円以上・年収換算762万円以上)です。
それでは、厚生年金の最高額を調べるため、給料が月額63万5000円だと仮定し、16歳から64歳まで働き続けた場合における支給額を厚生労働省の「公的年金シミュレーター」で計算してみます。条件は下記のとおりに設定します。
●1980年4月2日生まれ
●16歳から64歳まで月額63万5000円の給料で就労
図表2
※出典:厚生労働省「公的年金シミュレーター」
この場合、支給される額は年間で285万円となります。しかし、これが厚生年金の最高額というわけではありません。前述のとおり、厚生年金は70歳に達する年齢まで加入することができるからです。そこで、上記の条件のうち、働き続ける期間を69歳までに変更して計算してみます。
図表3
出典:厚生労働省「公的年金シミュレーター」
この場合、70歳から受け取る厚生年金は314万円にまで増加します。なお、65歳から受け取る年金額が104万円と小さくなるのは、在職老齢年金という制度が存在するためです。
在職老齢年金とは、60歳以降に厚生年金保険に加入しながら受ける厚生年金をいいます。在職老齢年金では賃金と年金額に応じて年金額の一部または全部が支給停止される場合があり、賃金と年金額の合計が48万円を超える場合は、48万円を超えた金額の半分が年金額より支給停止されます(ただし、老齢基礎年金は全額支給されます)。
※出典:日本年金機構「さ行 在職老齢年金」
今回の仮定では、給与だけで既にその48万円を超えてしまっているため、65歳から69歳までの間に支給される年金額が減少することになります。
繰下げ受給によってさらに増やすこともできる
年金を増やす方法として、繰下げ受給という制度もあります。繰下げ受給とは、年金の受取開始時期を遅らせる代わりにより多くの額を受け取れるようになるというものです。
繰り下げは1ヶ月単位で75歳まで行うことができます。1ヶ月繰り下げるごとに年金額は0.7%増額されるため、元の年金額が高いほど増加する額も大きくなります。
65歳から厚生年金を285万円受け取れる方が、75歳まで繰り下げたと仮定しましょう。この場合、年金額は84%増額されるため、75歳から受け取れる年金はなんと524万4000円もの額になります。
※出典:日本年金機構「年金の繰下げ受給」
在職老齢年金のことも踏まえると、年金を増やしたい場合は、働き続けることだけではなく繰下げ受給も検討の余地があるでしょう。
まとめ
厚生年金の最高額は、繰下げ受給なしで300万円以上、繰下げ受給ありなら500万円以上を狙うことができることが分かりました。
とはいえ、そのためには現役時代の平均年収が762万円以上必要であるなど、そう簡単なことではないでしょう。
厚生年金については、最高額は参考程度にとどめておき、実際自分が将来いくら受け取れるのかを確認した上で、それを基に老後の生活を考えていくことをおすすめします。
出典
日本年金機構 老齢厚生年金の受給要件・支給開始時期・年金額
日本年金機構 は行 報酬比例部分
日本年金機構 令和2年9月分(10月納付分)からの厚生年金保険料額表(令和5年度版)
厚生労働省 公的年金シミュレーター
日本年金機構 さ行 在職老齢年金
日本年金機構 年金の繰下げ受給
執筆者:柘植輝
行政書士