更新日: 2024.01.24 国民年金

国民年金の納付期間が「5年延長」に?もしそうなったらどうなるの?

執筆者 : 柘植輝

国民年金の納付期間が「5年延長」に?もしそうなったらどうなるの?
「近い将来、国民年金の保険料の納付期間が5年延長されるのではないか」という報道が、以前から一部のメディアでなされています。果たしてそのうわさは本当なのでしょうか。また、もし5年延長になったとしたら、私たちの暮らしにはどのような影響があるのでしょうか。考えていきます。
柘植輝

執筆者:柘植輝(つげ ひかる)

行政書士
 
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2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。

現状の国民年金制度は?

まずは日本年金機構「老齢基礎年金の受給要件・支給開始時期・年金額」を基に、現状の国民年金の制度について確認していきましょう。現状、国民年金の保険料は、原則として20歳から60歳までの40年間(480月)納付しつづけることになっています。そして、40年間支払いつづけることで、国民年金(老齢基礎年金)を65歳から満額を受け取れるようになっています。
 
国民年金は令和5年度の年金額を例にすると、満額で年間79万5000円が支給されることになります。
 
※出典:日本年金機構「令和5年4月分からの年金額等について」
 
もし、支払ってきた保険料が480月分に満たない場合、その分支給される国民年金の額も少なくなります。
 
例えば、保険料納付済月数が420月だった場合、支給される額は480分の420になるため、69万5625円となるわけです。
 

国民年金保険料の納付期間が5年延長されるのは本当?

以前から「国民年金保険料の納付期間が、現状の40年から5年間延長され、45年になる」とうわさされています。このうわさが現実のものとなる可能性は、決して低くありません。
 
その根拠の一つに、2019年の財政検証結果があります。年金は5年に1回財政検証が行われ、それを基に今後の流れが決まります。
 
そこには、国民年金保険料を45年間拠出延長することが、年金の給付水準を確保することに有効だと記載されています。
 
実際2023年10月には、国民年金の保険料の納付期間を5年延長する案について本格的な審議がされており、賛成する意見が多数との報道もされています。
 
そもそも、過去60歳から支給されることになっていた年金は、平成6年の改正によって、原則65歳から支給されることになっています。
 
これらを踏まえると、国民年金保険料の納付期間が5年延長される可能性は十分にありそうです。具体的な時期は、次回の財政検証が行われるであろう2024年に決まると想定されます。
 

もし国民年金の保険料納付期間が5年延長となったら、どんな影響が?

もし、国民年金の保険料納付期間が5年延長された場合、まず考えられることは、年金を満額を受け取るのに必要な保険料の総額が増えることです。
 
令和5年度ベースの保険料、1万6520円を基準に考えてみましょう。現行の納付期間480月では、払い込む保険料の総額は792万9600円です。これが5年延長されると、納付期間が今までより60月増えてトータルで540月となり、支払う保険料の総額は892万800円と、現行制度より99万1200円も増えることになります。
 
また、この保険料分の支出を賄うために、65歳、またはそれよりも先の年齢になっても働きつづける人が、今まで以上に増えることも予想されます。
 
なお、会社員など厚生年金加入者は、厚生年金と同時に国民年金にも加入していることになるため、国民年金の保険料納付期間の延長はひとごとではありません。
 

まとめ

上記より、国民年金の保険料納付期間が5年延長される可能性はそれほど低くないことが分かりました。それによって私たちが支払う国民年金の保険料は、100万円近く増加することになります。今後の詳細な流れは、2024年の財政検証によって明らかになることでしょう。
 
年金は全ての国民の老後に関係する重要な事柄です。今後も関心を持ち、年金について考えていきたいところです。
 

出典

日本年金機構 老齢基礎年金の受給要件・支給開始時期・年金額
令和5年4月分からの年金額等について
厚生労働省 給付水準の将来見通し(平成26年財政検証、人口 中位ケース)
 
執筆者:柘植輝
行政書士

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