更新日: 2024.01.25 その他年金

40年近く遺族年金を受給、65歳からの年金はどうなる?

執筆者 : 井内義典

40年近く遺族年金を受給、65歳からの年金はどうなる?
Aさん(女性)は1959年3月生まれ。会社員だった夫・Bさんが1984年12月に亡くなって以来、40年近く遺族年金を受給しています。
 
受給している遺族年金は年間約95万円。61歳から65歳まで、特別支給の老齢厚生年金(特老厚)・年間40万円を受給する権利もありますが、より金額の高い遺族年金を選択受給することになり、当該特老厚の支給は停止されていました。
 
もうすぐ65歳。65歳からの老齢基礎年金は年間70万円、老齢厚生年金は年間40万円になる見込みです。65歳になると、遺族年金も含めて、年金の受け取り方はどのようになるのでしょうか。
井内義典

執筆者:井内義典(いのうち よしのり)

1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP(R)認定者、特定社会保険労務士、1級DCプランナー

専門は公的年金で、活動拠点は横浜。これまで公的年金についてのFP個別相談、金融機関での相談などに従事してきたほか、社労士向け・FP向け・地方自治体職員向けの教育研修や、専門誌等での執筆も行ってきています。

日本年金学会会員、㈱服部年金企画講師、FP相談ねっと認定FP(https://fpsdn.net/fp/yinouchi/)。

夫は1986年3月以前に他界

公的年金制度は1986年4月1日以降の新法の制度と1986年3月31日以前の旧法の制度とで大きく異なっています。現在、年金受給者のほとんどが新法の年金を受給しています。
 
特別支給の老齢厚生年金(特老厚)、老齢基礎年金、老齢厚生年金、障害基礎年金、障害厚生年金、遺族基礎年金、遺族厚生年金など、1986年4月以降に受給する権利が発生するこれらの年金は新法の制度になります。
 
しかし、Aさんの場合、会社員だった夫・Bさんが亡くなったのは1984年12月。1986年3月31日以前の死亡となるため、Aさんの受給している遺族年金については旧法(旧厚生年金保険法)の遺族年金となります。1986年4月1日以降に死亡した場合に支給される、新法の遺族厚生年金ではありません。
 
Aさんはすでにこの遺族年金(寡婦加算込み)・約95万円で受給していますが、61歳になってからは特老厚の受給権も発生しています。
 
しかし、旧法の遺族年金と特老厚は、いずれか選択して受給することになっています。旧法の遺族年金のほうが金額も高いため、当該遺族年金を選択して受給し、特老厚は支給停止(支給は0円)となっていました。
 

65歳からの年金は?

65歳になると、Aさんの老齢年金については特老厚がなくなり、代わりに老齢基礎年金と老齢厚生年金が受給できるようになります。ただし、65歳以降もこれらの老齢年金と遺族年金の受給について調整があります。
 
新法の遺族厚生年金の場合ですと、老齢基礎年金と老齢厚生年金と併せて遺族厚生年金を受給できる代わりに、遺族厚生年金は老齢厚生年金相当額を差し引いた差額分での支給となります(【図表1】)。
 
現在、65歳以上のほとんどの遺族年金受給者は新法の遺族厚生年金で受給していることになり、このパターンでの受給が多いでしょう。
 


 
一方、Aさんのように旧法(旧厚年法)の遺族年金が受けられる場合については、まず、旧法の遺族年金と老齢基礎年金は併せて受給できます。そして、旧法の遺族年金と老齢厚生年金はいずれか選択となり、この点が新法の遺族厚生年金の場合と異なります(【図表2】)。
 
老齢厚生年金は40万円であるのに対し、旧法の遺族年金は65歳以降も引き続き95万円で受給でき、しかも非課税です。金額の高い遺族年金を選択するでしょう。その結果、65歳以降は老齢基礎年金70万円と遺族年金95万円、合計165万円で受給することになり、老齢厚生年金は支給停止となります(【図表2】)。
 

 
旧法の年金を受給する人は時とともに少なくなってきていますが、もし受給している場合は、新法と異なる扱いとなります。気になることがあった場合は年金事務所に相談してみましょう。
 
執筆者:井内義典
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP(R)認定者、特定社会保険労務士、1級DCプランナー

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