更新日: 2024.02.14 その他年金

受給開始後も会社に勤務、年金が再計算で増える条件は?

受給開始後も会社に勤務、年金が再計算で増える条件は?
Aさん(女性)は62歳で特別支給の老齢厚生年金(以下、特老厚)を受給し始めましたが、62歳も以降引き続き会社に勤務し、厚生年金の保険料も引き続き納めていました。62歳の前月まで、Aさんの厚生年金被保険者期間は220月です。
 
62歳から1年後、63歳になる前月の末に退職し、翌月(63歳になる月)から別の会社に転職しました。「退職すると62歳以降の納めた保険料分の年金が増える」と聞いていましたが、年金額に変化はありません。では、いつ、どのように年金は増えるのでしょうか。
井内義典

執筆者:井内義典(いのうち よしのり)

1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP(R)認定者、特定社会保険労務士、1級DCプランナー

専門は公的年金で、活動拠点は横浜。これまで公的年金についてのFP個別相談、金融機関での相談などに従事してきたほか、社労士向け・FP向け・地方自治体職員向けの教育研修や、専門誌等での執筆も行ってきています。

日本年金学会会員、㈱服部年金企画講師、FP相談ねっと認定FP(https://fpsdn.net/fp/yinouchi/)。

年金受給開始とその後に納めた厚生年金保険料

特老厚は、生年月日により支給の有無や支給開始年齢が決まっている、60歳台前半の年金です。支給開始年齢を迎えて特老厚の受給権が発生すると、その支給開始年齢到達月(受給権発生月)の前月までの加入記録で年金額が計算されます。Aさんの場合は62歳で受給権が発生し、その年金額は62歳の前月までの記録(合計220月の厚生年金加入記録)で計算されています。
 
しかし、Aさんは年金を受けられる62歳以降も引き続き働き、厚生年金被保険者となり続けています。厚生年金の被保険者は70歳未満の人を対象とするなか、支給開始年齢以降の厚生年金加入期間分についての保険料は無駄にはなりません。その分については年金の再計算のタイミングで含まれることになり、再計算後、納めた分だけ年金が増えます。
 

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1ヶ月以内に再加入しないことが条件

年金の再計算については条件があります。退職して厚生年金の被保険者でなくなった場合、それまで納めた厚生年金加入記録をもとに再計算が行われることになり、退職月の翌月分から年金額が変わります。これが、「退職時改定」です。
 
ただし、退職による厚生年金被保険者の資格を喪失(退職の翌日に喪失)してから1ヶ月以内に再び当該被保険者にならないことがその改定の条件です(図表1)。つまり、退職しても1ヶ月以内に再就職・厚生年金へ再加入した場合は対象にならず、年金額は今までと同じです。
 
図表1
 
Aさんの場合は63歳の前月末に退職し、その翌月にすぐ再就職してまた厚生年金に加入しているため、退職時改定は行われていません。つまり、この時点で受給権発生月(62歳到達月)分から退職月(63歳到達の前月)分は足されません。その後も65歳までに退職時改定の対象にならなければ、62歳から65歳までの特老厚は220月の厚生年金加入記録で計算された額のままとなるでしょう。
 

退職しないまま65歳を迎えた場合

以上が退職時改定の条件ですが、65歳になると特老厚の受給は終わります。代わりに65歳からは、老齢基礎年金と老齢厚生年金が受給できます。
 
特老厚と老齢厚生年金は別の年金となり、65歳時点での老齢厚生年金は65歳の前月までの加入記録で計算されます。65歳になったときに退職していても、退職していなくても同様に取り扱われます。
 
Aさんが65歳まで継続勤務(厚年加入)すると、65歳からの老齢厚生年金については受給権発生月・62歳から65歳の前月までの加入期間(36月)分も反映されています。65歳になって初めて含まれることになり、合計256月(220月+36月)の厚生年金被保険者期間で計算されます(図表2)。
 
図表2
 
なお、65歳到達月以降も厚生年金に加入する場合、老齢厚生年金については、その後の退職時改定のほか、在職中の年1回の改定(在職定時改定)、70歳到達(厚生年金の加入上限)の改定が行われます(【図表2】の※)。65歳以降さらに年金を増やせることになりますが、65歳以降も会社に勤務する場合は押さえておきたい点となるでしょう。
 

出典

日本年金機構 特別支給の老齢厚生年金
日本年金機構 令和4年4月から在職定時改定制度が導入されました
日本年金機構 在職老齢年金の計算方法
 
執筆者:井内義典
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP(R)認定者、特定社会保険労務士、1級DCプランナー

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