年金を繰上げ受給中、失業給付を受給すると年金は受けられない?
配信日: 2024.02.27
執筆者:井内義典(いのうち よしのり)
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP(R)認定者、特定社会保険労務士、1級DCプランナー
専門は公的年金で、活動拠点は横浜。これまで公的年金についてのFP個別相談、金融機関での相談などに従事してきたほか、社労士向け・FP向け・地方自治体職員向けの教育研修や、専門誌等での執筆も行ってきています。
日本年金学会会員、㈱服部年金企画講師、FP相談ねっと認定FP(https://fpsdn.net/fp/yinouchi/)。
年金の繰上げ受給
65歳からの老齢基礎年金と老齢厚生年金は、60歳以降であれば65歳前に繰上げ受給もできます。1962年4月2日以降生まれの人は1ヶ月繰上げにつき0.4%減額(1962年4月1日以前生まれの人は0.5%減額)されます。
年金を早く受け取れる代わりに、その減額率によって減額された年金が生涯続きます。60歳になった月に繰上げ請求をすると、24%(0.4%×60ヶ月)減額され、残りの76%の額で受給することになります(【図表1】)。
老齢厚生年金を繰上げする場合は、同時に老齢基礎年金も繰上げすることになります。
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失業給付の基本手当
失業給付の基本手当は、雇用保険に一定期間加入したうえで65歳前(65歳の誕生日の前々日まで)に離職し、失業と認定されると受給できます。離職後、公共職業安定所(ハローワーク)に求職の申し込みをして、失業と認定された日について支給されます。失業の認定については、原則28日に1回の失業認定日に、その直前の28日の各日について行われます。
基本手当の日額は、賃金日額(離職前6ヶ月間の賞与等を除いた賃金を180で割った額)×45~80%で計算されます(※金額に上限と下限あり)。離職前の雇用保険の被保険者であった期間(加入期間)や離職理由によって給付日数が決まります。
基本手当と繰上げした老齢厚生年金との調整
しかし、繰上げした老齢厚生年金を受給する65歳未満の人が基本手当を受けるようになると、当該年金はその間受けられなくなります。離職後に求職の申込をした月の翌月分から年金が支給停止されることになっています。同時に繰上げした老齢基礎年金は支給調整の対象にはならず、受け取れます。基本手当の支給が終わると、老齢厚生年年金の支給が再開されます。
なお、基本手当は日額で計算され、一方、年金は「○年○月分」と月単位で計算されることから、基本手当が支給された一部の支給月について、年金の支給停止の解除(事後精算)が行われることもあります。
年金は、生涯の受給累計額で見て、繰上げしなかった場合(65歳受給開始)の額が繰上げをした場合の額に追いつき、そして逆転します(【図表2】)。長生きをするほど、繰上げしない場合の額が累計額で多くなります。
2022年4月改正で、減額率が1ヶ月0.5%から0.4%になって繰上げしやすくなっています。しかし、基本手当の受給があって年金が停止されると、追いつく時期は【図表2】よりは早まることになるでしょう。
65歳以降の年金とは調整されない
繰上げ後、65歳以降も減額された年金を受給します。失業給付については、65歳前に離職した場合であれば、ハローワークへの求職の申し込みや失業の認定が65歳以降であっても基本手当の対象になります。しかし、基本手当と65歳以降の老齢基礎年金・老齢厚生年金との調整はなく、いずれも受給できます。
なお、65歳以降(65歳の誕生日の前日以降)に離職し、失業している場合は基本手当は支給されません。代わりに高年齢求職者給付金が支給されますが、この高年齢求職者給付金も老齢基礎年金や老齢厚生年金との調整はありません。
繰上げ請求の際には、基本手当との調整、その他の注意点について確認しましょう。
出典
厚生労働省 国民年金法
厚生労働省 厚生年金法
執筆者:井内義典
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP(R)認定者、特定社会保険労務士、1級DCプランナー