更新日: 2024.03.07 その他年金
親の年金見込み月額がわずか「7万円」です。これは「計算ミス」ですか?
執筆者:柘植輝(つげ ひかる)
行政書士
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2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。
年金月額7万円はあり得ないことではない
「親の年金の見込み額が月に7万円」ということを知って、信じられないというのも無理はありません。親がこれまで必死に働き、年金の保険料を納めてきたことを知っている方であれば、なおのことそう思うでしょう。
しかし、実際には年金が7万円どころかそれ以下の方は多いです。厚生労働省年金局「令和4年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、令和4年度末現在における厚生年金の受給月額の平均は、およそ14万5000円(国民年金部分含む)でした。それに対して、国民年金のみの場合は月におよそ5万6000円となっています。両者の差はおよそ9万円になります。
ここから考えると、長らく国民年金のみに加入していた方や、厚生年金の加入期間が短かったような方であれば、年金額が7万円というのも、おかしくはないのです。
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7万円の年金額で不足するのであれば繰下げ受給を検討や就労も視野に
もし、親の年金額が少なく、今後の生活が難しいという状況であれば、繰下げ受給や就労といった方法で、年金含む収入を殖やす方向で考えていくことが必要です。
日本年金機構「年金の繰下げ受給」によると、受給開始時期を1月繰り下げるごとに年金額を0.7%増加させることができるようです。繰下げ受給は75歳まで可能であるため、最大で84%も、将来受け取る年金額を増加させられることが分かりました。
仮に、1月当たり7万円の年金を受け取れる方が75歳まで受給開始時期を繰り下げたとすると、受け取る年金月額は12万8800円になるわけです。これは国民年金の平均的な支給額を大きく上回り、かつ、厚生年金の支給月額の平均に大きく近づいています。
そして、その間の生活費は就労によって賄うことで、無理なく繰下げ受給を行うことができます。就労は将来受け取る厚生年金を殖やすことにもつながります。なぜなら厚生年金は65歳以降70歳までは、勤務先で社会保険への加入要件を満たすことで、加入を継続することになるからです。
このように、老後の生活に年金が不足している場合でも、繰下げ受給や就労も視野に入れることで、老後の生活を安定させることができます。
最悪は生活保護の受給も視野に
年金だけでは生活できない、かといって就労や繰下げ受給も難しい、加えて子どもや親せきなどからの支援は期待できないなどの状態であれば、生活保護の受給もやむを得ないでしょう。生活保護は、最低限度の生活を維持するためのセーフティーネットです。公的年金だけでは生活できない高齢者もその支援の対象になります。
実際、厚生労働省 社会・援護局保護課「生活保護の被保護者調査(令和5年11月分概数)の結果を公表します」において、令和5年11月分のデータは、高齢者世帯が生活保護受給世帯全体の55.2%を占めていることが見て取れます。
生活保護は住所地の地域を管轄する福祉事務所や市区町村の担当窓口などが相談を受け付けています。万が一の場合はそちらへ相談することをおすすめします。
まとめ
年金受給の迫った親の年金月額が7万円というのは、決してあり得ないことではなく、国民年金のみの加入が長く続いた場合は十分あり得る金額です。とはいえ、年金額は繰下げ受給や老後の就労などで殖やすことができます。
もし、親の年金月額が7万円であり、それだけでは生活できない可能性が高いという場合、早めの対応が必要です。
就労や繰下げ受給の他、最悪の場合は生活保護の受給も視野に入れつつ、早急に今後について考え、対応していく必要があるでしょう。
出典
厚生労働省
年金局 令和4年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況
社会・援護局保護課 生活保護の被保護者調査(令和5年11月分概数)の結果を公表します
執筆者:柘植輝
行政書士