更新日: 2024.03.08 国民年金

30歳の会社員です。大学時代に「2年間」年金を払っていませんでしたが、将来の年金はどのくらい減りますか? 追納したほうがいいでしょうか?

執筆者 : 古澤綾

30歳の会社員です。大学時代に「2年間」年金を払っていませんでしたが、将来の年金はどのくらい減りますか? 追納したほうがいいでしょうか?
日本国内に住んでいる20歳以上60歳未満の人は、学生であっても国民年金保険料を支払わなければなりません。自分で支払っている人や、学生の間は保護者に支払ってもらうなどのケースもありますが、学生の間は「学生納付特例制度」が利用できます。
 
本記事では、学生納付特例制度の概要や注意点、追納しない場合の年金額について解説します。
古澤綾

執筆者:古澤綾(ふるさわ あや)

FP2級

「学生納付特例制度」とは?

「学生納付特例制度」とは、前年の所得が一定額以下の学生を対象に、在学中の保険料納付を猶予する制度です。
 
学生とは大学だけでなく、大学院、短期大学、高等学校、高等専門学校、特別支援学校、専修学校などの各種学校を指します。制度を利用するときは、住民票のある市区町村の役所や役場の国民年金担当窓口や、最寄りの年金事務所に申請が必要です。
 
本制度はあくまで猶予であるため、卒業後は原則として保険料を納める必要があります。保険料を支払わなかった場合は納める国民年金保険料が減るため、将来受け取れる老齢基礎年金額も減る点に注意が必要です。ただし、学生納付特例制度を利用した期間は、保険料納付済み期間にはカウントされるため、老齢基礎年金の受給資格期間に含まれます。
 
なお、2023年度の国民年金保険料は収入などに関わらず一律1ヶ月あたり1万6520円ですが、段階的に引き上げられており、2025年度には1万7510円となることが決まっています。
 

保険料を2年間払わなかったら年金はどのくらい減る?

学生納付特例制度を利用し、保険料を追納しなかった場合には将来受け取れる老齢基礎年金はどのくらい減るのでしょうか? 大学を卒業するまでの2年間、学生納付特例制度を利用した場合を例にとり、考えてみましょう。
 
2024年度の老齢基礎年金の満額81万6000円の場合で計算すると、次のようになります。
 
81万6000円×24ヶ月(2年間)/480ヶ月(40年)=4万800円
 
つまり老齢基礎年金は年間4万800円減ります。たかが年間約4万円と思うかもしれませんが、65歳から85歳までの20年間、減額された金額で受給すると81万6000円となり、1年間の老齢基礎年金の額と同じになります。つまり1年分、もらえる年金額が少なくなるということです。
 

10年間は保険料を追納できる

学生納付特例制度を利用した期間は、10年以内であれば保険料をさかのぼって納められる「追納」ができます。全期間分の国民年金保険料を追納することで、将来受け取れる老齢基礎年金が満額となります。2024年度の老齢基礎年金の満額は、前記のとおり年額81万6000円です。
 
例えば2016年4月から2017年3月までの1年間、学生納付特例制度を利用していた場合、全額を追納できるのは2026年4月までとなります。もし2026年10月に追納の申請をした場合は、10年間が経過していない2016年10月から2017年3月までの分しか追納できません。
 
ただし、納付猶予を受けた期間の翌年度から数えて3年度目以降に保険料を追納する場合には、当時の保険料額に経過期間に応じた加算額が上乗せされます。そのため、追納するなら早めにおこなうほうが良いでしょう。また、追納した国民年金保険料は社会保険料控除の対象となるため、所得税や住民税が軽減されます。
 

まとめ

学生にとって毎月約1万7000円の国民年金保険料を支払うのはなかなか大変です。「学生納付特例制度」を利用すれば、保険料の支払いを猶予してもらえます。しかし、猶予してもらった保険料を納めずにいると、将来受け取れる老齢基礎年金額が減ってしまいます。
 
追納できるのは、制度の利用から10年以内です。制度の利用から3年度目を超えると、期間に応じて加算額が上乗せされた保険料額となるため、めどがついたら早めに追納するようにしましょう。
 

出典

日本年金機構 国民年金保険料の学生納付特例制度
日本年金機構 国民年金保険料の追納制度
 
執筆者:古澤綾
FP2級

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