2024年度の年金額はどれくらい上がる?(1)
配信日: 2024.04.07
第1回の今回は、まず年金額改定の基本ルールについて確認します。
執筆者:井内義典(いのうち よしのり)
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP(R)認定者、特定社会保険労務士、1級DCプランナー
専門は公的年金で、活動拠点は横浜。これまで公的年金についてのFP個別相談、金融機関での相談などに従事してきたほか、社労士向け・FP向け・地方自治体職員向けの教育研修や、専門誌等での執筆も行ってきています。
日本年金学会会員、㈱服部年金企画講師、FP相談ねっと認定FP(https://fpsdn.net/fp/yinouchi/)。
年金額改定に使う基準は物価か賃金
毎年度、年金額は改定されることになっていて、その年金額改定にはルールがあります。経済の統計数値に基づいて改定されることになりますが、原則、当該年度に67歳以下である「新規裁定者」と68歳以上になる「既裁定者」とで改定方法が異なります。
新規裁定者は「名目手取り賃金変動率」を基準に改定され、一方、既裁定者は「物価変動率」を基準に改定されることになっています。名目手取り賃金変動率は「物価変動率×実質賃金変動率×可処分所得割合変化率」で計算され、物価変動率は前年の全国消費者物価指数の変動率となります。
ただし、物価変動率が名目手取り賃金変動率を上回る場合は、新規裁定者も既裁定者も名目手取り賃金変動率を基準に改定されることになっています(【図表1】の(4)(5)(6))。
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2024年度は前年度より+2.7%
2024年度の改定において用いる、名目手取り賃金変動率は+3.1%、物価変動率は+3.2%で、いずれもプラスになりました。物価変動率が名目手取り賃金変動率を上回っているため、新規裁定者(1957年4月2日以降生まれ)も既裁定者(1957年4月1日以前生まれ)も、名目手取り賃金変動率を基準に改定されます。【図表1】でいえば(4)に該当します。
しかし、実際の年金額の改定にあたって、+3.1%でそのまま増えるわけではありません。改定に際して「マクロ経済スライド」による調整があり、その分、年金額の上昇が抑制されます。
これは、年金財政の均衡の見通しが立つまでの間(調整期間)、保険料を負担する現役世代の人口減少と給付費の増加につながる平均余命の伸びを勘案した「スライド調整率」を用いて給付水準を調整(抑制)する仕組みです。
2024年度のマクロ経済スライドの調整は-0.4%です。この-0.4%分の抑制の結果、新規裁定者も既裁定者も実際は+2.7%での改定となります(【図表2】)。
以上のように、2024年度の年金額は、生年月日・年齢に関わりなく、賃金を基準にプラス改定となり、2023年度の年金額より上がります。より具体的にどのように年金額が改定されるかは次回(2)で取り上げます。
出典
厚生労働省 国民年金法
特定非営利活動法人 年金・福祉推進協議会 WEB年金広報(2024年2月号)
執筆者:井内義典
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP(R)認定者、特定社会保険労務士、1級DCプランナー