更新日: 2024.04.25 その他年金

おひとりさまで貯金が「500万円」あるなら、無理に「65歳」を年金受給開始のタイミングとしなくてもよいですか?

執筆者 : 柘植輝

おひとりさまで貯金が「500万円」あるなら、無理に「65歳」を年金受給開始のタイミングとしなくてもよいですか?
「おひとりさま」で、貯金を500万円有している方から、年金の受給開始時期について先日相談がありました。
 
その方は「無理に65歳から受け取る必要はないのでは」と考えているようです。さて、この場合、年金はいつから受け取るべきなのでしょうか。考えていきます。
柘植輝

執筆者:柘植輝(つげ ひかる)

行政書士
 
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2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。

貯金が500万円あっても、決して十分とは言い切れない

額だけ見れば、500万円という貯金額は決して小さくありません。むしろ大きな額の貯金です。一般的な年収が400万円から500万円程度と言われる昨今、年収相当の貯金があるということは、安心できる状況です。
 
しかし、老後を考えると、500万円という貯金額は決して十分とは言い切れません。かつては政治家の発言などを元に「老後までには、2000万円の老後資金が必要なのではないか」と騒がれたくらいです。
 
実際に、「500万円の老後資金で安泰」という人はほとんどいません。では、総務省統計局の「家計調査」を参考にしてみましょう。
 
本統計によれば、令和5年度の65歳以上の単身無職世帯においては、消費支出だけで毎月14万5430円が生じています。年間では174万5160円です。500万円もの貯金があっても、3年足らずでなくなる計算になります。
 

貯金が500万円しかないなら、繰下げ受給は絶対してはいけないの?

そもそも貯金額に関係なく、年金を受け取らなくても働いたり貯金を取り崩したりして支出を賄える間は、年金の繰下げ受給を続けても構いません。
 
繰下げ受給は、年金の受給開始時期を1ヶ月遅らせるごとに、受け取る年金額が0.7%増加するため、将来をより安泰なものとすることができます。
 
また、あえて年金を受け取らず、繰下げ受給をしつつ必要な支出を就労によって賄う、という方法も有効でしょう。最近では、高年齢者雇用安定法の整備をはじめ、高齢者が働きやすい社会基盤ができていることから、70歳や75歳とかなり高い年齢になっても働ける職場も出てきています。
 
貯金を食いつぶすような生活は避けるべきですが、働きつづける、あるいは投資など他の手段で収入を確保しつづけられるなどの状況であれば、年金の受取開始時期を65歳以降にしてもよいでしょう。
 

年金受給開始時期を遅らせる場合の注意点

年金の受給開始時期を65歳以降に遅らせることには、いくつか注意点があります。
 
まず、人生に何が起こるかは分かりません。先ほどのように、500万円という額の貯金は、老後の生活をする上で、決して大きい額ではありません。突発的な病気やけがの治療費、家のリフォームや引っ越しなど、まとまった支出の生じるイベントが起これば、どんどんお金は減っていきます。
 
また、年金はすぐに給付されるわけではありません。受け取り申請してから実際に振り込まれるまでには、数ヶ月かかります。
 
そして口座にも毎月年金が振り込まれるわけではなく、原則2ヶ月に1度(偶数月)、2ヶ月分が振り込まれます。ギリギリで年金を受給しようとすると、貯金が底を尽きる可能性もあります。年金の受給開始時期を遅らせるのであれば、これらの点にも注意する必要があるでしょう。
 

まとめ

一般的に、500万円の貯金は大きな額です。しかし、老後の生活を営むには、統計上一般的な生活を送るだけで、年間で174万5160円もかかります。そこから比較すると決して十分ではなく、おひとりさまであっても500万円の貯金しかないのであれば、年金受給の繰下げ受給には慎重になるべきです。
 
今一度、自身の老後の収支を想定し、いつから年金を受け取れば老後に無理なく生活できるか、考えてみてください。
 

出典

総務省統計局 家計調査報告 〔家計収支編〕 2023年(令和5年)平均結果の概要
 
執筆者:柘植輝
行政書士

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