更新日: 2024.06.30 その他年金

自分はずっと専業主婦でしたが、夫がなくなった場合に、遺族年金はどれくらい受け取れますか?

自分はずっと専業主婦でしたが、夫がなくなった場合に、遺族年金はどれくらい受け取れますか?
会社員の夫が死亡したときに、夫に生計を維持されていた妻には遺族厚生年金が支給されます。また、一定の要件を満たす子がいる場合は、合せて遺族基礎年金を受け取ることができます。
 
今回は、遺族年金の仕組みと、妻の年齢に応じて受け取れる遺族年金について、詳しく解説します。
辻章嗣

執筆者:辻章嗣(つじ のりつぐ)

ウィングFP相談室 代表
CFP(R)認定者、社会保険労務士

元航空自衛隊の戦闘機パイロット。在職中にCFP(R)、社会保険労務士の資格を取得。退官後は、保険会社で防衛省向けライフプラン・セミナー、社会保険労務士法人で介護離職防止セミナー等の講師を担当。現在は、独立系FP事務所「ウィングFP相談室」を開業し、「あなたの夢を実現し不安を軽減するための資金計画や家計の見直しをお手伝いする家計のホームドクター(R)」をモットーに個別相談やセミナー講師を務めている。
https://www.wing-fp.com/

遺族年金の仕組み

わが国の年金制度には、国民年金と厚生年金の2種類があります。会社員の妻に支給される遺族年金には、下図のとおり、一定の要件を満たす子がいる妻に支給される「遺族基礎年金」と、遺族厚生年金があります(※1、2)。
 
図表1

図表1

 

1.遺族基礎年金の受給要件

会社員の夫が死亡したとき、夫に生計を維持されていた子がいる妻には、遺族基礎年金が支給されます(※1)。「生計を維持されている妻」とは原則として、亡くなった方と生計を同一にし、収入要件を満たしている(前年の年収が850万円未満、または前年の所得が655万5千円未満)の妻となります。
 
また、遺族基礎年金における「子」とは、18歳になった年度の3月31日までにあるか、20歳未満で障害年金の障害等級1級または2級の状態にある方となります。
 

2.遺族厚生年金の受給要件と受給額

会社員の夫が死亡したとき、夫に生計を維持されていた妻には、遺族厚生年金が基本的に終身で支給されます(※2)。この際、妻の年齢は問いませんが、30歳未満で子がいない方の遺族厚生年金は5年間の有期年金となります。
 
また、一定の要件を満たす子がいる妻には、遺族基礎年金が併せて支給されます。
 
なお、一定の要件(後述)を満たす40歳以上65歳未満の妻には、遺族厚生年金に加え、中高齢寡婦加算があります。
 

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妻の年齢に応じた遺族年金の額

夫が死亡したときの妻の年齢と子どもの有無によって、受給できる遺族年金の額や期間が異なります。ここでは仮に「専業主婦」と想定して、本人の厚生年金は無いか、僅かであると考えた上でシミュレーションしてみましょう。
 

1.子のない妻に支給される遺族年金

子のない妻に支給される遺族年金は、遺族厚生年金のみとなり、その額は原則として、死亡した夫の老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3の額になります(※2)。
 
夫の報酬比例部分の額=平均標準報酬額×0.005481(注)×加入期間の月数
(注)平成15年3月以前の加入期間は計算式が異なります。
 
平均標準報酬額とは、厚生年金保険料の算定に用いられた「標準報酬月額」と「標準賞与額」の総額を加入月数で割った額になります。便宜的には、加入期間の平均年収(税引前)を12月で割って概算することができます。
 
従って、子のない妻に支給される遺族厚生年金の額は、以下の式で計算することができます。
 
遺族厚生年金の額=平均標準報酬額×0.005481×加入期間の月数×3/4
 
なお、夫の厚生年金の被保険者期間が300月(25年)に満たない場合は、加入期間が300月あったものと見なして算定されます。
 

2.一定の要件を満たす子がいる妻に支給される遺族年金

要件を満たす子がいる妻には、遺族厚生年金に加えて遺族基礎年金が支給されます。遺族基礎年金は、子の数に応じて下表の額が支給されます(※1)。
 
図表2

家族構成 年金額(令和6年度額)
妻と子1人 81万6000円+23万4800円=105万800円
妻と子2人 81万6000円+23万4800円×2=128万5600円
妻と子3人 81万6000円+23万4800円×2+7万8300円=136万3900円
※3人目以降、子ども1人当たり7万8300円を加算

(※1を基に筆者作成)
 
なお、遺族基礎年金の支給対象となっている子が18歳到達年度の末日(障害の状態にある場合は20歳)に達すると、遺族基礎年金は支給停止となります。
 

3.40歳以上65歳未満の妻に支給される遺族年金

以下のいずれかに該当する妻には、40歳から65歳になるまで、遺族厚生年金に加え、中高齢寡婦加算があります(※2)。
 

(1)夫の死亡時に40歳以上65歳未満で、生計を同一にする子がいない妻
(2)遺族基礎年金も合せて受けていた妻が、子が18歳到達年度の末日(障害の状態にある場合は20歳)に達したため、遺族基礎年金を受給できなくなったとき

 
なお、令和6年度の中高齢寡婦加算額は、61万2000円です。
 

4.65歳以上の妻が受給する年金

65歳以上の妻は、それまで受給していた遺族厚生年金に加え、自分自身の老齢基礎年金を受給することになります。なお、会社員の被扶養配偶者であった妻は、夫の死亡以降60歳になるまで、国民年金の第1号被保険者として国民年金の保険料を納付する必要があります。
 

まとめ

会社員の夫が死亡したとき、その夫に生計を維持されていた専業主婦には、遺族厚生年金が支給されます。この際、一定の要件を満たす子があるときには、遺族基礎年金が併給されます。また、一定の要件を満たす40歳以上65歳未満の妻には、遺族厚生年金に加えて中高齢寡婦加算が受けられます。
 
なお、夫が死亡した時点で30歳未満の子のない妻に支給される遺族厚生年金は、5年間の有期年金となります。
 

出典

(※1)日本年金機構 遺族基礎年金(受給要件・対象者・年金額)
(※2)日本年金機構 遺族厚生年金(受給要件・対象者・年金額)
(※3)日本年金機構 年金用語集 は行 標準報酬部分
 
執筆者:辻章嗣
ウィングFP相談室 代表
CFP(R)認定者、社会保険労務士

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