更新日: 2024.08.20 その他年金
62歳の妻は「特別支給の老齢厚生年金」を受け取れる? 普通の年金にいくら“追加”で支給されるの? 受給要件・受給額もあわせて解説
本記事では、特別支給の老齢厚生年金の受給要件や受給額など、特別支給の老齢厚生年金の概要について解説します。
執筆者:梅井沙也香(うめい さやか)
FP2級
特別支給の老齢厚生年金とは?
特別支給の老齢厚生年金とは、厚生年金保険の受給開始年齢を段階的に引き上げるために設けられた制度です。
1985年の法律改正で、厚生年金保険の受給開始年齢が60歳から65歳に引き上げられたことで、5年後となった受給年齢をスムーズに引き上げるための特別措置として設けられました。
特別支給の老齢厚生年金を受け取るには要件を満たしている必要があります。年金の受給要件や受給額を解説するので確認してみましょう。
受給要件
特別支給の老齢厚生年金を受け取れるのは「1961年4月1日以前に生まれた男性」または「1966年4月1日以前に生まれた女性」のどちらかに該当する人です。
老齢基礎年金の受給資格期間(10年)があり、厚生年金保険等に1年以上加入していれば、生年月日に応じた受給開始年齢から支給されます。生年月日に応じた受給開始年齢は図表1の通りです。
図表1
日本年金機構 特別支給の老齢厚生年金より筆者作成
特別支給の老齢厚生年金の受給者は、受給開始年齢に達する3ヶ月前に送付される「年金請求書」を、受給開始年齢に到達した日以降に提出する必要があります。
受給額
特別支給の老齢厚生年金の受給額は、年齢や厚生年金保険の加入期間などによって変わるため人によって異なります。
特別支給の老齢厚生年金は「報酬比例部分」と「定額部分」に分かれており、それぞれの特徴は図表2の通りです。
図表2
報酬比例部分 | 老齢厚生年金や障害年金などの年金給付において、 年金額の計算の基礎となるもの |
定額部分 | 特別支給の老齢厚生年金の計算の基礎となるもの |
筆者作成
報酬比例部分は、特別支給の老齢厚生年金の支給要件を満たしている人全員が受給できる部分で、加入期間や過去の報酬等によって金額が異なります。
報酬比例部分の金額を求める計算式は図表3の通りです。
図表3
(1) | 平成15年3月以前の加入期間 | 平均標準報酬月額×7.125/1000×平成15年3月までの加入月数 |
(2) | 平成15年3月以降の加入期間 | 平均標準報酬月額×5.481/1000×平成15年4月以降の加入月数 |
(1)+(2)=報酬比例部分 |
日本年金機構 は行 報酬比例部分 より作成
ただし、平成6年の水準で標準報酬を再評価して計算した年金額の「従前額」よりも、図表2で計算した報酬比例部分が少ない場合は、従前額が報酬比例部分の金額となります。
従前額の計算式は図表4の通りです。
図表4
(1) | 平成15年3月以前の加入期間 | 平均標準報酬月額×7.5/1000×平成15年3月までの加入月数 |
(2) | 平成15年3月以降の加入期間 | 平均標準報酬月額×5.769/1000×平成15年4月以降の加入月数 |
(1)+(2)×1.041=従前額 |
日本年金機構 は行 報酬比例部分 より作成
定額部分は「1954年4月1日以前生まれの女性」と「1949年4月1日以前生まれの男性」が受給できる部分で、厚生年金の加入期間によって金額が異なります。
定額部分の金額を求める計算式は図表5の通りです。
図表5
1956年4月1日以前生まれ | 1696円×定額単価×被保険者期間(月数) |
1956年4月2日以後生まれ | 1701円×定額単価×被保険者期間(月数) |
計算式の「定額単価」には生年月日に応じて図表6の数値を当てはめます。
図表6
日本年金機構 年金額の計算に用いる数値
特別支給の老齢厚生年金を受け取れる場合は、自分の生年月日や加入期間などから、普通の年金にどのくらい追加して受け取れるのか計算してみると良いでしょう。
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まとめ
特別支給の老齢厚生年金を受け取れるのは「1961年4月1日以前に生まれた男性」または「1966年4月1日以前に生まれた女性」に該当する人なので、2024年時点で62歳の女性は特別支給の老齢厚生年金を受給可能です。
老齢基礎年金の受給資格期間(10年)があり、厚生年金保険等に1年以上加入していると、生年月日に応じて60歳~64歳の間に受給が開始されます。
受給額は、年齢や厚生年金保険の加入期間などによって変わるため、報酬比例部分と定額部分の計算式から、自分や家族の年金額を算出してみましょう。
出典
日本年金機構 特別支給の老齢厚生年金
日本年金機構 特別支給の老齢厚生年金を受給するときの手続き
日本年金機構 は行 報酬比例部分
日本年金機構 た行 定額部分
日本年金機構 年金額の計算に用いる数値
執筆者:梅井沙也香
FP2級