定年後は「嘱託社員」として働き続ける予定ですが、働いていると年金が「支給停止」になると聞きました。年金は繰り下げしたほうがいいですか?
配信日: 2024.08.22
執筆者:三藤桂子(みふじけいこ)
社会保険労務士、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、FP相談ねっと認定FP、公的保険アドバイザー、相続診断士
大学卒業後、公務員、専業主婦、自営業、会社員、シングルマザーとあらゆる立場を経験した後、FPと社会保険労務士の資格を取得し、個人事業主から社会保険労務士法人エニシアFP を設立。
社会保険労務士とFP(ファイナンシャルプランナー)という二刀流で活動することで、会社側と社員(個人)側、お互いの立場・主張を理解し、一方通行的なアドバイスにならないよう、会社の顧問、個別相談などを行う。
また年金・労務を強みに、セミナー講師、執筆・監修など首都圏を中心に活動中(本名は三角桂子)。
目次
定年後の再雇用とは
定年後の再雇用とは、これまで勤務していた会社を定年退職した後、再び同じ会社で新たな雇用契約を結んで働くことです。よくあるケースとして、定年退職後、嘱託社員として65歳まで1年ごとの契約更新とする有期雇用契約です。
定年後の再雇用は、働く意欲がある高年齢者がその能力を十分に発揮できるよう、高年齢者雇用確保措置として高年齢者雇用安定法で定められています。会社は定年を迎えた従業員が働くことを希望すれば、従業員を65歳まで雇用し続けなければいけません。さらに70歳まで雇用することは会社の努力義務となっています。
定年後に嘱託職員で働く場合、雇用契約書は現役時代の年収500万円に比べ、低い金額となるケースが多いです。まずは雇用契約書で給与額、賞与額を確認し、さらにねんきん定期便などの年金見込み額から繰り下げすると支給停止するかどうかを計算してみましょう。
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働きながら年金を受け取る人は注意
働きながら年金を受け取る人は注意が必要です。ただし、自営業やパート等で社会保険に加入しない働き方をする人は対象となりません。社会保険に加入し働きながら年金を受け取ると、在職老齢年金制度により支給停止となる可能性があります。
年金の1ヶ月分(基本月額)と給与と賞与の1ヶ月分(総報酬月額相当額)を足して50万円(2024年度額)を超えると、50万円を超えた分の2分の1の年金が支給停止されます。この制度は老齢年金を受け取る人が対象で、該当すれば、何歳になっても適用されます。
支給停止するかどうか自身の計算で心配であれば、年金事務所等で試算や相談をしてみるのも一案です。
繰り下げしても増えない人がいる
年金の繰り下げは、原則として65歳時点の老齢厚生年金額を基準として計算されます。前段の在職老齢年金制度によって支給停止した分があると、繰り下げしても増えていないと感じる人もいます。
なぜなら支給停止している年金は、繰り下げしたとしても繰り下げの対象とならない(増えない)からです。国民年金部分である老齢基礎年金は支給停止の対象外なので、仮に70歳までの5年間(60月)を繰り下げした場合、42%増額した年金を受け取ることができます。
厚生年金保険部分である老齢厚生年金(報酬比例額)は、支給停止された金額は増額しないので、仮に65歳の年金見込み額が150万円だったとして、100万円が支給停止され続けた場合、50万円の42%増額になるので、繰り下げしても増えた感が少ないです。
家族構成によって繰り下げするか判断する
Aさんの家族構成によって、繰り下げがお得なのか判断するのも選択肢です。Aさんが厚生年金保険に長く(20年以上、240月)加入して、配偶者が年下(受給権発生時に厚生年金保険加入期間が20年未満)である場合、家族手当として、Aさんの厚生年金保険に加給年金が年額約40万円受け取ることができます。
歳の差が大きいと受け取る期間が長いので、厚生年金保険は繰り下げせずに受けとるという選択肢もあります。
ただし、給与が高く、原則、厚生年金保険の報酬比例部分が全額停止になると、加給年金も受け取ることができないため、注意が必要です。繰り下げは、老齢基礎年金と老齢厚生年金の両方もしくは一方だけでもできます。家族構成等で繰り下げすることを検討してみましょう。
老齢年金は課税対象になるので、税金や保険料があがる可能性も
老齢年金は原則、課税の対象となります。例えば、65歳未満は108万円以上、65歳以上は158万円以上で所得税の課税対象です。繰り下げしたことにより、年金額が増えると税金や保険料が高くなる可能性があります。不安を感じているのであれば、一度専門家に相談、もしくは行政等に確認してみてから繰り下げを検討してはいかがでしょうか。
執筆者:三藤桂子
社会保険労務士、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、FP相談ねっと認定FP、公的保険アドバイザー、相続診断士