更新日: 2024.08.27 その他年金
50代女性「非正規公務員」です。業務量は常勤職員と変わりませんが勤務時間が「15分」短くなりましたが、老後に影響はありますか?
では、非正規雇用のまま老後を迎えるとして、年金などにどのような影響があるのでしょうか? FPが解説します。
執筆者:篠原まなみ(しのはら まなみ)
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP認定者、宅地建物取引士、管理業務主任者、第一種証券外務員、内部管理責任者、行政書士
外資系証券会社、銀行で20年以上勤務。現在は、日本人、外国人を対象とした起業家支援。
自身の親の介護、相続の経験を生かして分かりやすくアドバイスをしていきたいと思っています。
非正規公務員とは
自治体が人件費の支出を抑えるため、非正規職員の採用を増やしています。
総務省が行った令和5年度 会計年度任用職員制度の施行状況等に関する調査結果によると、2023年度の地方公務員の臨時・非常勤職員(以下非正規公務員という)の任用件数は、74万2 725人となり、2005年の調査開始以来、増え続けています。前回の調査(2020年度)(注1)と比べても4万8252人(6.9%)増えました(※1)
一方の正規公務員は、2023年4月1日現在で、280万1596人で、1994年をピークとして2016年まで一貫して減少し、その後は、横ばいから微増傾向です。2022年度比では、2068人の減少となりました(※2)いまや地方公務員の5人に1人は、非正規公務員ということになります。
総務省が発表している地方公務員数の状況によると、非正規公務員は、会計年度任用職員と臨時的任用職員と特別職非常勤職員からなっており(注2)、そのうち会計年度任用職員が、89.1%を占めています。
会計年度任用職員とは、地方公務員法の改正により2020年度から制度化された比較的新しい職で、1会計年度(4月1日から翌年3月31日まで)を最長の任期として任用され、主に常勤職員が行う各種業務の補助を行う非常勤の地方公務員とされています(注2)。
フルタイムで働いているのは7万4949人で全体の11.9%で、残りの88.8%(58万7952人)は、パートタイムになります。もちろん、自ら希望してパートタイムで働く人も多くいます。
一方で、業務量は常勤職員とほぼ変わらないのに、自治体が退職手当の支給を避けようと勤務時間を少しだけ短く設定して、パートタイムとして扱うようなケースも存在します。
翌年度も職が存在し、職場との関係が良好な場合は、公募によらず再度任用となる場合など複数回更新している人もいますが、年度末の3月にならないと更新されるかどうかわからないので、不安定な立場に置かれています。
例えば、10年間真面目に働いて職場に認められていた人でも職がなくなり、雇止めになる可能性があります。また、非正規公務員は、職責や仕事量に比べて賃金が低い傾向にあります。
2023年の調査結果では、任用団体数がもっとも多い「事務補助職員」については、1時間あたりの給料(報酬)の額が「900円超1000円以下」の区分に属する団体が多く、団体ごとに単純平均した平均額は、「1059円」となっています(※1)。
注1: 地方公務員の臨時・非常勤職員に関する調査は、3年に1度行われています。
注2: 任用期間が6ヶ月以上かつ1週間当たりの勤務時間が19時間25分(常勤職員の半分)以上の職員を対象としているので、雇用期間が6ヶ月未満などの短期の非正規職員は、数に入っていません。
【PR】資料請求_好立地×駅近のマンション投資
【PR】J.P.Returns
おすすめポイント
・東京23区や神奈川(横浜市・川崎市)、関西(大阪、京都、神戸)の都心高稼働エリアが中心
・入居率は99.95%となっており、マンション投資初心者でも安心
・スマホで読めるオリジナルeBookが資料請求でもらえる
非正規雇用の年金への影響
それでは、職があり、職場との関係も良好で毎年更新を続けた場合の(老齢)年金への影響はどうなるのでしょうか。
年金には厚生年金注と国民年金があり(※3)、厚生年金(注3)の加入条件は、厚生年金の適用事業所になっている勤務先で常時使用されることです。正社員・正規職員だけでなく、パートタイムやアルバイト・臨時職員なども条件を満たせば加入できます。
(1) 1週間の所定労働時間および1ヶ月の所定労働日数が同じ事業所で同様の業務に従事している一般社員の4分の3以上であること
(1)の条件を満たさない短期間労働者であっても被保険が101人以上(注4)いる事業所等で、以下の就労条件を満たすと厚生年金に加入することになります(※4)。
・週の就労時間が20時間以上
・所定内賃金が月額8.8万円以上
・2ヶ月を超える雇用の見込みがある
・学生でないこと
なお、老齢年金を受け取ることができる加入期間は、以前は25年でしたが、2017年8月1から10年間になりました。
毎月、給料から引かれる厚生年金保険料は、給料の額によって変わります。給料の額が高くなれば基本的に厚生年金保険料も上がりますが、将来受け取る老齢年金の受給額も増えます。厚生年金に加入する場合は、国民年金と厚生年金と両方が受給できます。
一方、厚生年金の加入条件を満たさない場合は、国民年金のみに加入することになりますが、20歳から60歳になるまでの40年間納めていた場合でも月額6万8000円(注5)です。
注3: 被用者年金制度の一元化により、共済年金制度は厚生年金制度に統一され、平成27年10月1日から厚生年金に公務員や私学教職員も加入することとなりました。
注4: 令和6年10月から被保険者数51人以上の事業所等になります(※4)。
注5: 2024年4月分からの年金額です。
まとめ
非正規公務員は、福祉や教育の場での仕事が多く、やりがいを持ち、正規公務員よりもベテランの人もいます。それでも非正規公務員ということで待遇面では、正規公務員よりもかなり劣り、老後の不安を抱えている人が多いという問題点があります。
出典
(※1)総務省 令和5年度 会計年度任用職員制度の施行状況等に関する調査結果 (任用件数等)
(※2)総務省 地方公務員数の状況
(※3)日本年金機構 公的年金制度の種類と加入する制度
(※4)日本年金機構 短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用拡大のご案内
執筆者:篠原まなみ
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP認定者、宅地建物取引士、管理業務主任者、第一種証券外務員、内部管理責任者、行政書士