更新日: 2024.11.19 その他年金
夫は年収「1000万円」、老後も安泰だと思っていたら、50歳で夫が死亡。妻はこれから暮らしていける?「遺族年金」と「生活費」をシミュレーション
本記事では、50歳で年収1000万円だった夫に先立たれた妻が、今後暮らしていけるのかシミュレーションします。また、その後の対策などについても解説しますので、参考にしてください。
執筆者:松尾知真(まつお かずま)
FP2級
年収1000万円の夫が亡くなると、妻が受け取る遺族年金は?
夫が亡くなった妻にとって、その後の生活の大きな糧になるものの1つは遺族年金でしょう。そこで年収1000万円だった夫が50歳で亡くなったあと、妻がもらえる遺族年金を計算してみます。
遺族年金には、遺族基礎年金と遺族厚生年金があります。遺族基礎年金は18歳到達年度の末日までの子どもか、その子どものある配偶者が受給対象者であり、受給額は「81万6000円(2024年度)+子どもの加算額」です。
遺族厚生年金は、子どもがいない妻でも「死亡した夫の老齢厚生年金の報酬比例部分×4分の3」の金額を受給可能です。受給額の計算にあたっては、年収1000万円、50歳で亡くなったことから厚生年金の加入期間を22歳からの28年間と仮定します。
報酬比例部分の計算式は2003年4月前後の加入期間によって違いますが、今回は分かりやすく2003年4月以降の「平均標準報酬額×5.481÷1000×加入月数」で計算します。
平均標準報酬額を1000万円÷12=約83万3000円、加入月数は28年×12ヶ月=336月とすれば、遺族厚生年金の受給額は、約83万3000円×5.481÷1000×336×0.75=年額約115万円です。
さらに、夫を亡くした妻が40歳から65歳未満で、18歳到達年度の末日までの子どもがいない場合には「中高齢寡婦加算」により年額61万2000円が加算されます。これらをまとめると図表1のとおりです。
図表1
妻の年齢 | 遺族基礎年金 | 遺族厚生年金 | 中高齢寡婦加算 | 受給額計 | |
---|---|---|---|---|---|
子どものいない妻 | 40歳未満 | 支給なし | 約115万円 | 支給なし | 約115万円 |
40歳~ 65歳未満 |
61万2000円 | 約176万2000円 | |||
65歳以上 | 支給なし | 約115万円 | |||
子どものいる妻 | 30歳以上 | 81万6000円+ 子どもの加算額 |
支給なし | 約196万6000円+ 子どもの加算額 |
年収1000万円の夫が亡くなった場合の遺族年金受給額
※金額はいずれも年額
※子どもとは18歳到達年度の末日までの子ども
※厚生年金加入期間は28年間と仮定
※子どものいる妻で30歳未満の場合、遺族厚生年金の受給期間は5年間
日本年金機構 遺族基礎年金(受給要件・対象者・年金額)、遺族厚生年金(受給要件・対象者・年金額) より筆者作成
このことから、妻は子どもの有無にかかわらず、40歳から65歳になるまでは、少なくとも年間約176万2000円、月額約14万6000円の遺族年金を受給可能です。また、65歳以降は中高齢寡婦加算がなくなる代わりに、自身の年金を受給できます。これらを考え併せると、年収1000万円で50歳の夫を亡くした妻は、40歳以上であれば暮らしを支える最低限の収入は得ることはできそうです。
ただ、子どもがいない場合で、夫が自営業やフリーランスなどで厚生年金に未加入なら、配偶者は遺族年金を受け取れません。そのため、特に自営業やフリーランスの夫を持つ配偶者は、生命保険などで不慮の事態に備える必要があります。
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妻が夫の亡くなったあとでも暮らしていくための対策は?
総務省統計局の2023年「家計調査報告」によれば、単身世帯の消費支出は1世帯あたり月平均16万7620円であり、月々15万円弱の遺族年金では十分とまでは言えません。
また、貯蓄がどれくらいあるのか、持ち家なのか賃貸なのかなど、それぞれの資産状況でその後の生活も変わるでしょう。年収が1000万円あったような家庭では、平均以上の生活ぶりになっている可能性もあります。
そのため、すぐには難しいかもしれませんが、ある程度収入に見合った生活を心がける必要があります。また、貯蓄や夫の退職金、生命保険の保険金などがあれば、これらの資金をしっかり活用して中長期的に家計を考えることが大切です。
それでも生活費が不足するようであれば、日々の収入を得るため、妻自身で収入を得る必要があります。それまで専業主婦であれば、働きに出るのは少しハードルが高いかもしれませんが、フルタイムでなくてもパートで年間100万円でも収入を得られれば、生活に余裕が生まれるでしょう。
まとめ
厚生年金に加入している夫の配偶者であれば、子どもがいなくても、夫の生前の年収に応じて遺族厚生年金を受給できます。配偶者の年齢に応じた加算制度もあり、遺族年金で生活費の多くを賄うことはできるでしょう。
ただ、遺族年金だけでは十分な金額とまでは言えないため、夫の退職金、生命保険の保険金、貯蓄などをうまく活用し、少し長いスパンでの家計設計が重要です。それでも収入が足りないときは自分で稼ぐといった対策が必要になるかもしれません。
いずれにしても、人生100年時代と考えれば、まだまだ人生はこれからです。夫との死別は心の整理も難しいものでしょうが、少し時間がたったら、今後の新しい生き方を考えてみてはいかがでしょうか?
出典
日本年金機構 遺族基礎年金(受給要件・対象者・年金額)
日本年金機構 遺族厚生年金(受給要件・対象者・年金額)
総務省統計局 家計調査報告[家計収支編]2023年(令和5年)平均結果の概要
執筆者:松尾知真
FP2級