年金は「賦課方式」より「積立」のほうがお得? 90歳までに「3000万円」もらえるなら損ではないの? 金額をシミュレーション
配信日: 2025.01.15
本記事では、年金の賦課方式について簡単に説明した上で、65歳から90歳まで年金3000万円をもらうケースと、働いている間に同じ金額を貯蓄するケースを比較します。年金と貯蓄の基本的な違いも解説しますので、参考にしてください。
執筆者:松尾知真(まつお かずま)
FP2級
目次
日本の公的年金制度は賦課方式を採用
今、収めている年金保険料は、現在の高齢者世代の給付に使われており、将来に向けた積立ではありません。このスキームは「賦課方式」と呼ばれ、「世代間で支え合う」のが公的な年金制度の本質です。
年金保険料が将来への積立ではないことで「払っても損するのではないか」と考える人もいるでしょう。しかし、現在の保険料や給付額を前提に考えれば、国民年金も厚生年金も10年程度の年金受給で負担した保険料を回収できると考えられています。
実際には年金への加入期間や厚生年金における標準報酬月額次第で、回収できる期間は異なります。また、今後は受給水準の変動も想定されますが、賦課方式により、そのときの現役世代の給与水準に応じて年金を受け取れることに変わりありません。
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65歳から90歳まで年金で3000万円もらうには
ここからは、年金受給と貯蓄を比較してみます。まず、65歳から90歳までの25年間で年金3000万円もらうには、どれくらいの年収が必要なのか考えてみましょう。今回の例では、1年間の年金受給額は3000万円÷25年=120万円が必要です。
そこで、20歳から60歳まで40年間、月に直して480ヶ月働いた場合で、120万円の年金受給に必要な年収を逆算します。まず、老齢基礎年金は満額受給できるものとし、令和6年度の81万6000円と仮定すると、厚生年金の報酬比例部分で120万円-81万6000円=38万4000円が必要です。
報酬比例部分の金額は「標準報酬月額×5.481÷1000×加入月数」で求められます。もし、年収180万円で標準報酬月額15万円なら、15万円×5.481÷1000×480ヶ月=約39万4000円です。つまり、40年間年収180万円で働けば、年間81万6000円+39万4000円=121万円、25年間で3025万円を受給できます。
年収180万円で3000万円貯蓄するには
一方、20歳から60歳までの間に、3000万円貯蓄する場合も考えてみます。働く期間は40年間、480ヶ月であるため、預金利息などを無視してシンプルに考えれば、毎月必要な貯蓄額は3000万円÷480ヶ月=6万2500円です。
ただ、年収180万円で月約15万円の収入から、6万2500円を貯蓄に回すと、月々の生活費は月9万円未満になります。総務省統計局の家計調査から、単身世帯の平均的な消費支出は月16万円以上であることを考えると、月6万円以上の貯蓄は容易ではないでしょう。
年金の保険料を貯蓄に回すと?
年収180万円で60歳までに3000万円を貯蓄するのは、かなり生活費を切り詰める必要があり、簡単なことではありません。それなら毎月の年金保険料を支払わず、貯蓄すればいいと思う人がいるかもしれません。
もちろん、年金保険料の支払いは義務であり、猶予や免除の手続きをせずに未納にしてはいけません。また、会社員は保険料が給与から強制的に徴収されるため、保険料を貯蓄に回すというのは無理のある考え方です。そのため、あくまでも試算として、保険料と必要な貯蓄額を比べてみます。
まず、年収180万円の人が支払う年金の保険料をシンプルに計算してみます。国民年金保険料は令和6年度で月1万6980円、厚生年金の保険料率は標準報酬月額の18.3%です。ただ、厚生年金保険料は労使折半で会社が半分負担してくれます。
そのため、月々の保険料は1万6980円+標準報酬月額15万円×9.15%の計算式で約3万円にしかならず、必要な貯蓄額の半分ほどです。この試算からも、今回の例では、年金の保険料だけで必要な貯蓄は賄えないでしょう。
実際には、年金受給期間の長短によって、受け取る年金総額が変わるため、払った保険料分を年金でもらえるかどうかは分かりません。ただ、90歳ぐらいまで長生きすると、もらえる年金受給総額を貯蓄で賄うのはかなり難しいと思われます。
そもそも年金と貯蓄の違いは?
そもそも年金と貯蓄には大きな違いがあります。それは貯蓄がお金をためるだけなのに対し、公的な年金制度は保険料を支払うことで、さまざまな保障を受けられることです。
年金は「老齢給付」に目が行きがちですが、実際には「障害給付」「遺族給付」と併せて、3つの保障があります。例えば、大けがをして働けなくなったときや、生活を支えていた配偶者が亡くなったときなど、異なる理由で給付を受けることが可能です。つまり、保険料を払っていれば、老後の備えに加え、それ以外の「人生のリスク」にも備えられます。
また「老齢給付」は使えばなくなる貯蓄とは違い、長生きリスクを少なくするため、一生涯にわたって受給可能です。単純な収支だけではなく、このように、年金制度にはさまざまな保障機能があることも理解しておきましょう。
まとめ
年金は賦課方式であり、年金保険料を将来のために積み立てているわけではないため、損するのではないかと不安になりがちです。しかし、今の支給水準であれば、年金を10年ほど受給すれば保険料を回収できることが多いと考えられています。
また、今回のように90歳まで生きて年金の受給期間が長くなるようだと、年金受給額を貯蓄で賄うのはかなり難しいでしょう。
貯蓄とは違い、公的年金制度にはさまざまな保険的機能があるのも大きなメリットです。何より保険料の支払いは義務であり、損得で考えても意味はありません。老後に受給可能な年金額や公的年金制度のメリットなども理解した上で、自分の老後には、ほかに何が必要か考えてみてはいかがでしょうか?
出典
厚生労働省 いっしょに検証!公的年金
総務省統計局 家計調査報告 2023年(令和5年)平均結果の概要
日本年金機構 は行 報酬比例部分
執筆者:松尾知真
FP2級