月収「50万円」を超えたら「年金カット」、働く高齢者を悩ませる「50万円の壁」が見直されるかもしれないって本当?
配信日: 2025.02.11


執筆者:植田周司(うえだ しゅうじ)
CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士、円満相続遺言支援士(R)
外資系IT企業を経て、FPとして「PCとFPオフィス植田」を起業。独立系のFPとして常に相談者の利益と希望を最優先に考え、ライフプランをご提案します。
お客様に「相談して良かった」と言っていただけるよう、日々努力しています。
在職老齢年金とは?
「働きながら年金をもらっているのに、収入が増えると年金が減る」と聞いたことはありませんか? これが、「在職老齢年金制度」です。
現在、65歳以上の方が働きながら年金を受け取る場合、給与と年金の合計が月額50万円を超えると、超えた分の半分が年金から減額される仕組みになっています。
例えば、月の給与が45万円で老齢厚生年金が10万円の場合、合計額は55万円です。基準額の50万円を5万円オーバーしているので、その半分の2万5000円が年金から差し引かれます。
なお、以下の2つも在職老齢年金の減額対象です。
・65歳までの特別支給の老齢厚生年金(2030年までに段階的に終了予定)
・老齢厚生年金を65歳より前に繰上げ受給している場合
(参考:2022年4月に「60歳以上65歳未満」と「65歳以上」の基準が47万円に統一され、2023年に48万円、2024年には50万円に引き上げられました)
図表1は在職老齢年金の現状ですが、この資料によると65歳以上の在職している年金受給権者の16%が支給停止の対象となっています。また、支給停止対象者数は、直近10年間で約24万人増加しています(25万5000人(平成25(2013)年度末)→49万5000人(令和4(2022)年度末))。その支給停止対象額は、4500億円となっています。
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なぜ制度の見直しが必要なの?
この制度には、「働く意欲をそいでしまう」という批判の声が多くあります。せっかく頑張って働いても、年金が減ってしまうのでは、働く気持ちがなえてしまうというわけです。
図表1のグラフをよく見ると、月収46万円の割合が44万円より多いことが分かります。これは年金が減額されないよう、働く時間等を調整して月収を47万円以下に抑えていると考えられます(図表1の2022年末時点では、基準額47万円を超えると減額調整です)。
さらに制度見直しの理由の一つは、少子高齢化による人手不足が深刻化しているなか、高齢者の方々に長く働いてもらうためです。年金が減ってしまうことを気にせず、意欲的に働ける環境をつくる必要があると考えられています。
もう一つは、年金をもらえる年齢に達しても働き続ける人が増えているためです。「年金をもらうために長年保険料を払ってきたのに、たくさん働くと減らされるのはおかしい!」という意見もあります。
高齢者の方々が、より長く、より積極的に働ける社会を目指すため、厚生労働省は制度の見直しを検討しています(※1)。
制度の見直し内容
こうした問題点を解消するために、厚生労働省では制度の見直しが検討されていて、以下の3つの案が提示されています。
<完全撤廃案>
在職老齢年金制度をなくし、働き続けても年金を減額しないという案です。この案は、支給停止がなくなるため、本来年金に加入して保険料を支払った分はすべて受け取れるべきだという考えに基づいています(4500億円の財源が必要)。
<基準額引き上げ案(71万円)>
年金が減額される基準額を、71万円に引き上げようという案です。これにより多くの高齢者が減額に苦しむことなく、現役のように働き続けることができるとされています(2900億円の財源が必要)。
<基準額引き上げ案(62万円)>
基準額を62万円に引き上げることで、一定の緩和を目指す案です。これにより、中間層の高齢労働者が経済的に恩恵を受けやすくするとされています(1600億円の財源が必要)。
見直しには、以下のようなメリットとデメリットがあります。
・働く意欲が高まる
・年金保険料を納めた分をしっかり受け取れる
・収入による年金減額という不公平感が解消される
・年金財政の支出が増える(年間1600~4500億円程度)
・将来世代の年金給付水準に影響が出る可能性
・高所得者に有利な改正となる
今後の見通しは?
2024年12月、自民党政務調査会は「見直しにともなって年金財政からの支出が増加し、将来世代の給付水準に影響がおよぶ可能性があることから、将来的な制度廃止を視野に入れながら、まずは基準額の引き上げを行うべき」という提言をまとめました(※2)。
完全な制度廃止には大きな財源が必要なため、自民党の提言のように段階的な見直しが行われる見込みです。まずは、基準額の引き上げからスタートし、その影響を見ながら、将来的な制度廃止を検討していくことになりそうです。
まとめ
在職老齢年金制度の見直しは、働く高齢者にとってはうれしい改正ですが、年金財政への影響も大きいため、慎重に進められることになりそうです。
これからも働き続けたい方は、基準額の引き上げにより、より柔軟な働き方が可能になるかもしれません。今後の動向に注目していきましょう。
出典
(※1)厚生労働省 年金局 在職老齢年金制度について
(※2)厚生労働省 第24回社会保障審議会年金部会 参考資料2 年金制度改革に向けた提言
執筆者:植田周司
CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士、円満相続遺言支援士(R)