定年後は今の会社で「嘱託社員」として働きたいのですが、年金も満額分をもらいたいです。嘱託社員になると年金は減ってしまいますか?

配信日: 2025.02.23

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定年後は今の会社で「嘱託社員」として働きたいのですが、年金も満額分をもらいたいです。嘱託社員になると年金は減ってしまいますか?
定年後は今の会社で嘱託社員になることを望んでいるAさん。年金も満額分をもらいたいとのことです。「嘱託社員になると年金は減ってしまうのでしょうか……職を変えたほうがいいですか?」とのご相談です。
柴沼直美

執筆者:柴沼直美(しばぬま なおみ)

CFP(R)認定者

大学を卒業後、保険営業に従事したのち渡米。MBAを修得後、外資系金融機関にて企業分析・運用に従事。出産・介護を機に現職。3人の子育てから教育費の捻出・方法・留学まで助言経験豊富。老後問題では、成年後見人・介護施設選び・相続発生時の手続きについてもアドバイス経験多数。現在は、FP業務と教育機関での講師業を行う。2017年6月より2018年5月まで日本FP協会広報スタッフ
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60~65歳までの間:高年齢雇用継続給付

Aさんのご希望は2つ、「嘱託職員として勤務希望」と「年金満額受給」です。
 
まず、「年金の受給はどのような状態になればカットされるのか?」について確認します。
 
Aさんの年齢が不明ですが、定年で嘱託職員としての選択肢を検討しているのであれば、おそらく60~65歳と考えられます。
 
2025年で定年年齢60歳に達したとすると、生年は昭和39年ですので、原則として老齢年金の支給開始年齢は65歳です。65歳までは「老齢年金」を繰上げ支給申請しないかぎり、年金が満額受給できないという心配は基本的にはありません。
 
ただ、嘱託職員となったことによって給与が退職前の水準から大幅に下がった場合に、雇用保険から「高年齢雇用継続給付」が支給されます。嘱託職員で給与が大幅に下がるからという理由で、年金の支給開始年齢を60歳からというように繰上げ申請した場合は注意が必要です。
 
「高年齢雇用継続給付」とは、雇用保険の加入期間が5年以上ある60歳以上65歳未満の加入者に対して、賃金額が60歳到達時の75%未満となった場合、賃金額の最高15%に相当する額が雇用保険等から支払われる制度です。
 
ただしこの給付と年金、給与の合計が一定額を超えると、年金が一部支給停止になる場合があります。支給停止調整額は、令和6年度で50万円です。
 

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具体例で確認:満額受給できる場合と一部支給停止になる場合

■ケース1:すべて受給できる場合

60歳定年時の賃金が40万円で、嘱託職員で再雇用された場合の給与が20万円、賞与なしになったとします。これは40万円の50%ですから、賃金額の15%に相当する3万円が、雇用保険の高年齢雇用継続給付から支給されます。
 
老齢厚生年金の月額換算を、120万円÷12=10万円とします。
 
20万円+10万円=30万円
 
この合計額が支給停止ラインの50万円を超えていないので、

「老齢厚生年金の10万円」
「嘱託職員の月額給与20万円」
「高年齢雇用継続給付3万円」

をすべて受け取ることができます。
 

■ケース2:支給停止になる場合

60歳定年時の給与が50万円だった場合、嘱託再雇用の給与が80%である40万円、賞与なしだったとします。ここで老齢厚生年金受給額が10万円の場合、支給停止ライン50万円に到達した時点で、この額を超えた部分が支給停止となります。
 
一部支給停止になるのは、「老齢厚生年金」で「老齢基礎年金」は影響ありません。
 

65歳以降:在職老齢年金の仕組み ~月額給与20万円、賞与の月割り額10万円の場合~

現在60~65歳の再雇用を採り入れている企業は多くなっていますが、65歳以降も継続雇用してもらえるかどうかは企業によります。今回、70歳まで再雇用してもらえる企業であるという前提で考えましょう。
 
65歳以降は、原則として「年金支給開始年齢」に到達していますので、今度は「高年齢雇用継続給付」ではなく「在職老齢年金」との関係を考える必要があります。
 
在職老齢年金とは、年金を受給しながら働いて収入を得ている場合に、その収入に応じて老齢厚生年金の一部または全部が減額される仕組みです。この制度の目的は、現役で働いている高齢者と年金財政のバランスを保つことにあります。
 
在職老齢年金では、具体的に以下2つの収入の合計額に基づいて年金額が調整されます。
 

・総報酬月額相当額:月々の給与+賞与の月割り額
・年金の基本月額:老齢厚生年金の月額

 
この合計額が一定の基準額を超えると、老齢厚生年金が減額されます。令和6年度の支給停止調整額は、50万円です。
 
例えば、65歳で月額20万円、ボーナスが年間120万円だとします。この年間賞与を12で割って加えたものを「総報酬月額相当額」といいますが、この例では20万円の月額給与プラス月割り賞与10万円で、30万円が総報酬月額相当額です。
 
Aさんが、40年間会社員の間、未納することなく年金保険料を納付していたと仮定して、満額の基礎年金は月額換算で6万8000円、老齢厚生年金は月額16万円、合計で約22万8000円受給できるとしましょう。
 
(総報酬月額相当額 + 年金の基本月額 - 50万円)の2分の1が減額されますので、
30万円+16万円<50万円
ですから、カットされません。
 
言い換えると、総報酬月額相当額が35万円になったら、
35万円+16万円-50万円=1万円
この超えた2分の1相当額の5000円が支給停止となります。
 
在職老齢年金の場合も、影響を受けるのは「老齢厚生年金」だけです。「老齢基礎年金」は影響を受けません。
 

まとめ

60~65歳までは、雇用保険からの「高年齢雇用継続給付」との調整、65歳以降は「在職老齢年金」によりそれぞれ「老齢厚生年金」に影響がおよび、一部支給停止になる可能性があることを確認してきました。
 
「そんなことなら、転職のほうがいいのか?」と、結論を急ぐのはどうでしょうか。年齢を重ねると、経験値も積みあがっていきますが、同時に柔軟性や新しい環境になじむのにストレスを感じてしまうということもあるかもしれません。シニア時代をより自分らしく働けることを軸に、選択肢を検討することが大切でしょう。
 

出典

日本年金機構 在職老齢年金の支給停止の仕組み 〜働きながら年金を受けるときの注意事項〜
 
執筆者:柴沼直美
CFP(R)認定者

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