大学生の国民年金保険料、「学生納付特例」を使わずに20歳からキッチリ保険料を納めたら、将来、年金はどのくらいもらえるのでしょうか?

配信日: 2025.02.27

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大学生の国民年金保険料、「学生納付特例」を使わずに20歳からキッチリ保険料を納めたら、将来、年金はどのくらいもらえるのでしょうか?
20歳の誕生日を迎えると、程なく、日本年金機構から「国民年金加入のお知らせ」が届きます。大学生等の学生であっても、国民年金の第1号被保険者となり保険料の支払い義務が発生します。
 
ただし、「学生納付特例」という制度を利用することも可能です。この特例制度については「払わなくてもいい」「学生ならば利用すべき」とさまざまな誤解があるようです。
 
ここでは、制度の解説とともに、将来受け取れる年金額についてもお伝えします。
大竹麻佐子

執筆者:大竹麻佐子(おおたけまさこ)

CFP®認定者・相続診断士

 
ゆめプランニング笑顔相続・FP事務所 代表
証券会社、銀行、保険会社など金融機関での業務を経て現在に至る。家計管理に役立つのでは、との思いからAFP取得(2000年)、日本FP協会東京支部主催地域イベントへの参加をきっかけにFP活動開始(2011年)、日本FP協会 「くらしとお金のFP相談室」相談員(2016年)。
 
「目の前にいるその人が、より豊かに、よりよくなるために、今できること」を考え、サポートし続ける。
 
従業員向け「50代からのライフデザイン」セミナーや個人相談、生活するの観点から学ぶ「お金の基礎知識」講座など開催。
 
2人の男子(高3と小6)の母。品川区在住
ゆめプランニング笑顔相続・FP事務所 代表 https://fp-yumeplan.com/

知っておきたい国民年金の「学生納付特例制度」

「学生納付特例制度」とは、大学生などの学生が、申請により国民年金保険料の納付を猶予される制度です(※)。
 
日本では20歳になると国民年金の加入者となり、保険料の支払い義務が発生します。2024年度の国民年金保険料は月額1万6980円で、60歳までの40年間継続して保険料を納付すると、原則として65歳から満額の老齢基礎年金を受け取ることができます。
 
ただ、収入のない学生にとって、毎月、国民年金保険料を支払うことは難しいかもしれません。そこで、申請することで、在学期間中の保険料納付を猶予されるのが「学生納付特例制度」です。
 
この特例制度は、支払いの免除ではなく「猶予」です。つまり、在学期間中は払わなくてもよいものの、社会人となってから「追納(さかのぼって納付すること)」する必要があります。追納できる期間は10年です。あくまでも納付の先送りであることに注意が必要です。
 
対象となるのは、大学(大学院)、短大、高等学校、高等専門学校、専修学校、各種学校に在学する学生等で、学生納付特例を受けようとする年度の前年の所得が基準以下、または失業等の理由がある方です。
 
この制度を利用することで、学生である期間中に保険料を納付しなくても、将来の老齢年金の受給権確保だけでなく、障害を負ったときの障害基礎年金の受給資格を確保することができます。
 

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納付が難しい場合には…

国民年金は、原則として65歳以降「老齢基礎年金」として、生涯にわたり年金を受け取ることができます。ただし、受給資格を得るためには、受給資格期間が10年以上であることが要件となります。
 
学生納付特例を利用して保険料を納付していない場合でも、受給資格期間にカウントされます。
 
卒業後、会社員として就職した場合には、給与から年金保険料が差し引かれ、この期間は「納付済期間」となります。学生時代の特例利用の期間と合算され、60歳まで継続すれば40年間の受給資格期間を達成することができます。
 
ただし、猶予期間中に保険料を追納しなかった場合には、相当する期間の分の金額は受給することができません。
 
例えば、4月生まれの学生が20歳から大学卒業までの2年間(24ヶ月)、学生納付特例を利用し、就職後も追納しなかった場合、その後すべての期間において納付したとしても、受給資格期間は40年ですが、納付済期間は38年であるため、2年分の年金額が減額されます。
 

具体的な数字で検証~40年間納付した人と2年分追納しなかった人の年金額の比較

具体的な数字で検証してみましょう。
 

■20歳から60歳まで40年間継続して納付した場合

2024年度新規裁定者(初めて年金受給を申請する人)
年金額(満額):81万6000円(月額6万8000円)
※満額とは、20歳から60歳までの40年(480月)間を継続して納付した場合の金額をいいます。
 

■20歳以降大学生の2年間、学生納付特例を申請し、その後追納した場合

年金額:81万6000円(月額6万8000円)
※追納により40年間(480月)分を納付しているため、特例を利用しなかった方と同じ
 

■20歳以降大学生の2年間、学生納付特例を申請し、その後追納しなかった場合

年金額:81万6000円×(480-24)/480(月)= 77万5200円(月額6万4600円)
 
実際には、会社員の場合、上乗せ部分の老齢厚生年金と合算での受け取りとなります。老齢基礎年金のみで計算すると、65歳から100歳までの35年にわたって満額を受給した場合の受給総額は2856万円であるのに対し、2年分減額では総額2713万2000円となります。
 
この差額をどう捉えるのかは、個人により異なるでしょう。また、物価などの影響により年金額は年ごとに変動がありますし、いつまで生きるのか(受給できるのか)は予測できません。ただし、生涯にわたって受け取れる公的年金は、保険料を納付することで少しでも増やしたいものです。
 

まとめ

年金というと、「老齢年金」をイメージする方が多いようですが、公的年金制度には、ほかに病気やけがなどにより障害状態となり働けないときに受け取れる「障害年金」、一家の働き手や年金受給者が亡くなったときに受け取れる「遺族年金」があります。
 
国民年金の加入により受け取れる年金は、それぞれ「老齢基礎年金」「障害基礎年金」「遺族基礎年金」と呼ばれています。
 
学生納付特例制度を利用している期間中は、保険料を支払っていませんが、けがなどにより働けなくなった場合でも「障害基礎年金」を受け取る資格があります。可能性はゼロではないため、想定したうえで備えるということも大切です。
 
なお、「学生だから特例を使うべき」という考え方は必ずしも正解ではありません。先送りするよりも、本来納付すべきときに納付できるのであれば納付すべきです。社会人になってからの追納は、支払いの意思はあっても、給与からの捻出は意外と大変なようです。
 
ついつい納付期限を過ぎてしまい、結果として「未納」となるケースも散見されます。親と同一生計であれば、親が保険料を負担することで、親の社会保険料控除が適用となり、節税となるメリットもあります。
 
いずれにしても、制度をきちんと理解したうえで、利用することをおすすめします。
 

出典

(※)日本年金機構 国民年金保険料の学生納付特例制度
 
執筆者:大竹麻佐子
CFP®認定者・相続診断士

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