大学生のときに「2年間」国民年金を払っていませんでした。このまま払わない場合、受給できる年金はどのくらい下がるのですか?
配信日: 2025.03.20 更新日: 2025.03.21

今回は、国民年金の学生納付特例制度と追納制度について解説します。

執筆者:辻章嗣(つじ のりつぐ)
ウィングFP相談室 代表
CFP(R)認定者、社会保険労務士
元航空自衛隊の戦闘機パイロット。在職中にCFP(R)、社会保険労務士の資格を取得。退官後は、保険会社で防衛省向けライフプラン・セミナー、社会保険労務士法人で介護離職防止セミナー等の講師を担当。現在は、独立系FP事務所「ウィングFP相談室」を開業し、「あなたの夢を実現し不安を軽減するための資金計画や家計の見直しをお手伝いする家計のホームドクター(R)」をモットーに個別相談やセミナー講師を務めている。
https://www.wing-fp.com/
「学生納付特例制度」の落とし穴
日本国内に居住している方は、20歳から国民年金の被保険者となり、保険料を支払う必要があります。ただし、学生には、保険料の納付が猶予される「学生納付特例制度」があり、多くの学生がこの制度を利用しています(※1)。
学生納付特例制度を利用している期間は、老齢基礎年金を受け取るために必要な受給資格期間に含まれます。しかしながら、老齢基礎年金額の計算対象となる期間には含まれません。
したがって、学生納付特例の制度を利用した期間は、そのまま放置しておくと保険料の未納期間となってしまい、将来受け取る老齢基礎年金の額が減額されることになります。
なお、障害や死亡といった不慮の事態が生じた場合、要件を満たせば障害基礎年金や遺族基礎年金が支給されますが、学生納付特例制度を利用している期間は、保険料納付済期間と同様に当該要件の対象期間として扱われます。
【PR】資料請求_好立地×駅近のマンション投資
【PR】J.P.Returns
おすすめポイント
・東京23区や神奈川(横浜市・川崎市)、関西(大阪、京都、神戸)の都心高稼働エリアが中心
・入居率は99.95%となっており、マンション投資初心者でも安心
・スマホで読めるオリジナルeBookが資料請求でもらえる
老齢基礎年金の算定方法
老齢基礎年金は、保険料納付済期間と保険料免除期間などを合算した受給資格期間が10年以上である方に対して、65歳から支給されます(※2)。
老齢基礎年金の額は、20歳から60歳になるまでの40年間の国民年金保険料の納付月数や厚生年金の加入期間などに応じて下式のとおり計算されます。
20歳から60歳になるまでの40年間、全ての月が保険料納付済である場合、満額の81万6000円(注:令和6年度額)の老齢基礎年金が支給されます。また、40年間のうちに、国民年金保険料を支払っていない月がある場合は、その月数分減額されます。
老齢基礎年金=81万6000円(注)×保険料納付済月数/480月
したがって、2年間保険料未納期間がある場合、以下の計算のとおり4万800円(注)少なくなります。
81万6000円×2年×12月/480月=4万800円
未納の保険料を補う方法
将来受け取る老齢基礎年金額を満額に近づけるために、未納となっている国民年金保険料を補う方法について解説します。
1. 保険料を追納する
学生納付特例の承認を受けた期間の保険料を、後から納付(追納)することにより、老齢基礎年金の年金額を増やすことができます(※3)。
ただし、学生納付特例の承認を受けた期間の翌年度から起算して、3年度目以降に保険料を追納する場合には、当時の保険料額に経過期間に応じた加算額が上乗せされます。
なお、追納ができるのは、追納が承認された月の前10年以内の猶予期間に限られます。
2. 国民年金に任意加入する
追納期間を過ぎた場合、60歳以降に国民年金に任意加入して保険料を納付することにより、老齢基礎年金を満額に近づけることができます(※4)。ただし、厚生年金保険の加入者や老齢基礎年金を繰上げ受給している方などは、この制度を利用することができません。
まとめ
大学生が利用できる学生納付特例制度は、保険料の納付を猶予することができますが、この制度を利用している期間は老齢基礎年金の額の計算に使用する期間には含まれません。保険料を納めていない期間が1年あると、老齢基礎年金が2万400円(注)少なくなります。
学生納付特例を利用した場合は、10年以内に忘れずに保険料を追納しましょう。
出典
(※1)日本年金機構 国民年金保険料の学生納付特例制度
(※2)日本年金機構 老齢基礎年金の受給要件・支給開始時期・年金額
(※3)日本年金機構 国民年金保険料の追納制度
(※4)日本年金機構 任意加入制度
執筆者:辻章嗣
ウィングFP相談室 代表
CFP(R)認定者、社会保険労務士