受け取りを「先延ばし」にするだけで年金額が増えるそうですが、どのくらいの人が年金を「繰下げ受給」しているのでしょう?
配信日: 2025.04.02

しかし、繰下げ受給の利用率はそれほど高くはありません。また、繰下げ受給を利用する際には、事前に注意すべき点を確認しておくことが大切です。本記事では、年金繰下げ受給の特徴や利用率、注意点について解説します。

執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)
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年金の繰下げ受給とは
年金の繰下げ受給とは、年金の受給開始時期を65歳ではなく、66歳から75歳の間に遅らせることで、受け取る年金額が増える仕組みです。受給開始を1ヶ月遅らせるごとに年金額が0.7%増え、最大で84%の増額が可能となります。
例えば、受給開始を65歳から68歳に遅らせると受給額は25.2%増加し、70歳まで遅らせると42.0%増加します。この増額は一生涯にわたって続くため、老後資金の対策として有効な選択肢となります。
このように、年金の受け取りを先延ばしすることで、最大で84%も年金額を増やすことが可能です。
年金を早く受け取れる「繰上げ受給」も選択可能
年金の繰下げ受給は、受給開始時期を遅らせることで年金額が増える制度ですが、年金の繰上げ受給は年金額が減額される代わりに早く受給できる仕組みです。
受給開始を65歳ではなく、60歳から65歳の間で早めることができ、1ヶ月早めるごとに年金額が0.4%減少し、最大で24%減額されます。ただし、昭和37年4月1日以前生まれの場合は1ヶ月あたり0.5%減少します。
例えば、年金の受給開始を65歳から63歳に早めると9.6%減額され、61歳まで早めると19.2%減額されます。この減額率は、一生涯にわたって変わらず適用されます。
このように、65歳から年金を受け取るのではなく、年金額を増やしたい場合は繰下げ受給、早く受け取りたい場合は繰上げ受給を選ぶことも可能です。
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年金繰下げ受給の利用率は1.3%
厚生労働省の「令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業年報」によると、令和5年度末現在厚生年金保険受給者で繰下げ受給の利用率は1.6%(44万5178人)、繰上げ受給に関しては0.9%(25万9815人)となっています。利用率の近年の推移については、図表1のとおりです。
【図表1】
年度 | 繰下げ受給 | 繰上げ受給 | 通常 |
---|---|---|---|
令和元年度 | 0.8% | 0.4% | 98.8% |
令和2年度 | 1.0% | 0.5% | 98.5% |
令和3年度 | 1.2% | 0.6% | 98.3% |
令和4年度 | 1.3% | 0.7% | 97.9% |
令和5年度 | 1.6% | 0.9% | 97.5% |
※厚生労働省の「令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業年報」を参考に筆者が作成
繰下げ受給は、年金受け取りを先延ばしすることで受給額を増やすことができますが、利用率は低く、多くの人が通常通りに年金を受け取っていることが分かります。
年金繰下げ受給の注意点
年金繰下げ受給の注意点は、以下のとおりです。
・繰下げ受給には手続きが必要
・受給期間によっては受給額が減る可能性がある
・受給額の増加に伴い税金や社会保険料の負担も増える
・加給年金や振替加算を受け取れない
繰下げ受給を行うには、希望する時期に繰下げ請求書を年金事務所または年金相談センターに提出する必要があります。手続きする時点で繰下げ受給による増額率が決まるため、忘れずに手続きを行いましょう。
なお、繰下げ受給で受給額を増やすことはできますが、万が一早期に亡くなった場合、実際に受け取る金額が通常の受給額よりも少なくなる可能性があります。
また、受給額が増えることで所得税や住民税、健康保険料などの負担も増加する点にも注意が必要です。さらに、繰下げ受給期間中は加給年金や振替加算を受け取れません。
このような注意点を考慮し、自身のライフプランや健康状態などを踏まえたうえで、繰下げ受給を選ぶかどうかを慎重に判断することが重要です。
繰下げ受給を選ぶかどうかは慎重に判断することが大切!
繰下げ受給を選ぶことで、65歳以降に受給開始時期を遅らせる代わりに年金額を増やすことができるため、老後資金対策として効果的です。
しかし、繰下げ受給の利用率は低く、ほとんどの方は通常通りに年金を受け取っています。また、繰下げ受給をする際は注意点を十分に理解し、自身のライフプランや健康状態を踏まえたうえで慎重に判断することが大切です。
年金の繰下げ受給を検討している方は、しっかりとシミュレーションを行い、自分に合った制度かどうかを確認しましょう。
出典
日本年金機構 年金の繰下げ受給
日本年金機構 年金の繰上げ受給
厚生労働省 厚生年金保険・国民年金事業年報 結果の概要
日本年金機構 66歳以後に老齢年金の受給を繰下げたいとき
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー