遺族年金は今後「男女差の解消」の方向で見直しへ! 女性の「就業率」は上がっているけど、それだけ「収入」も上がってる? 改正ポイントもあわせて確認
配信日: 2025.04.12


執筆者:福嶋淳裕(ふくしま あつひろ)
日本証券アナリスト協会認定アナリスト CMA、日本ファイナンシャル・プランナーズ協会認定 CFP(R)、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、日本商工会議所認定 1級DCプランナー(企業年金総合プランナー)
リタイアメントプランニング、老後資金形成を得意分野として活動中の独立系FPです。東証一部上場企業にて、企業年金基金、ライフプランセミナー、DC継続教育の実務経験もあります。
遺族厚生年金制度の最大の見直しポイント
現行の遺族厚生年金制度には、さまざまな男女差があります。例えば、「夫の死亡時点で30歳以上の妻は遺族厚生年金を終身で受け取れる」のに対し、「妻の死亡時点で55歳未満の夫は一切受け取れない(子がいる場合は子が受け取る)」というルールが男女差の代表例です。
同性でも、「夫の死亡時点で30歳以上の妻は終身で受け取れる」のに対し、「夫の死亡時点で30歳未満かつ子がいない妻は5年間しか受け取れない」など、年齢差の問題があります。
遺族厚生年金制度の最大の見直しポイントは、「配偶者の死亡時点で60歳未満の妻または夫は、子の有無にかかわらず原則5年給付とする」点です。これにより、最も大きな男女差問題を解消します。激変緩和のため、約20年かけて段階的に実施する案となっています。
なお、年金法上の「子」とは、18歳到達年度末までの子、または障害等級1・2級の状態にある20歳未満の子を指します。
また、今回の見直しの対象外の人(現行の給付内容が引き続き維持される人)は、「配偶者の死亡時点で60歳未満かつ、子がいる妻または夫と子」「配偶者の死亡時点で60歳以上の妻または夫」「施行日前に受給権が発生している人(すでに受け取り始めている人)」です。
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就業率、雇用形態、年収(給与)の男女差
遺族厚生年金の男女差問題が約20年かけて解消されるとして、就業率、雇用形態、年収(給与)の男女差はどうなっているのか、足元の推移を確認してみましょう。
就業率
総務省の「労働力調査(2023年、結果の概要)」によれば、男女別の就業率(15~64歳)は次のとおりです。
2013年:男性の就業率80.8%、女性は62.4%
2018年:男性83.9%、女性69.6%
2023年:男性84.3%、女性73.3%
男女ともに増加基調にあり、もともとは低かった女性の伸びは顕著です。
正規と非正規の割合
同じく「労働力調査(2023年、結果の概要)」によれば、「役員を除く雇用者(15~64歳)に占める正規の職員・従業員の割合と非正規の職員・従業員の割合」は次のとおりです。
2013年:男性は正規81.8%+非正規18.2%、女性は正規45.2%+非正規54.8%
2018年:男性は正規82.6%+非正規17.4%、女性は正規46.1%+非正規53.9%
2023年:男性は正規82.7%+非正規17.3%、女性は正規49.8%+非正規50.2%
15~64歳男性の正規雇用率は81%台から82%台で足踏み状態、女性は正規と非正規が拮抗(きっこう)するところまで正規雇用率が増えてきました。
年収(給与)
国税庁の「民間給与実態統計調査(2023年分)」によれば、民間給与所得者の平均給与(1年間の給料・手当、賞与の合計額)は次のとおりです(1万円以下四捨五入)。なお、公表資料の「正社員(正職員)」を以下「正規」と表し、「正社員(正職員)以外」を「非正規」と表します。
2014年:男性正規545万円・非正規221万円、女性正規366万円・非正規148万円
2018年:男性正規563万円・非正規233万円、女性正規389万円・非正規155万円
2023年:男性正規594万円・非正規269万円、女性正規413万円・非正規169万円
年収(給与)は、物価変動の影響を除いた実質はさておき、名目では増加傾向です。ちなみに民間給与所得者の平均年齢は、この10年で男性も女性も45歳台から47歳台に伸びています。
マイナスの影響を受けるのはどんな人? 対策は?
遺族厚生年金を受け取る遺族が妻の場合、現行では「30歳以上の妻は終身給付、30歳未満かつ子がいない妻は5年給付」です。
これが、案どおりに法改正されると「30歳」の年齢基準が「60歳」に向けて段階的に引き上げられ、約20年後には「60歳以上の妻は終身給付、60歳未満かつ子がいない妻は5年給付」となり、「妻」全体としては受け取れる総額が減り、保障が薄くなります。
約20年かけて段階的に移行していくため、「マイナス方向の影響を受ける可能性がある人は、主に現在おおむね40歳未満の女性」といえます。
対策としては、すでに結婚している、または将来結婚する前提で、「現在おおむね40歳未満の女性が60歳になるまでに夫が死亡し、それによって生活が苦しくなるリスクを軽減する対策」ということになります。
常識的には、「できれば夫婦そろって正規雇用で長く働いてそれぞれの老齢厚生年金受け取り見込み額を増やしつつ、夫婦で資産形成に取り組み、将来取り崩せる老後資金を増やす」などが挙げられるでしょう。
まとめ
2025年は5年に一度の年金法改正の年であり、遺族年金の男女差解消を含めた改正法案が国会で議論される見込みです。6月までの通常国会で改正法が成立することが多いのですが、今回は流動的な情勢です。引き続き、ニュースに注意していきましょう。
出典
厚生労働省 社会保障審議会年金部会における議論の整理
総務省統計局 労働力調査 結果の概要 基本集計 2023年
国税庁 令和5年分 民間給与実態統計調査-調査結果報告-
執筆者:福嶋淳裕
日本証券アナリスト協会認定アナリスト CMA、日本ファイナンシャル・プランナーズ協会認定 CFP(R)、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、日本商工会議所認定 1級DCプランナー(企業年金総合プランナー)