持病もなく元気なので、年金は「70歳」から受け取り予定。繰下げで「月22万円」受け取れる予定だけど、健康寿命を考えるとリスクもある? 注意点を解説
配信日: 2025.04.14

年金の受給開始時期を65歳から1ヶ月遅らせるたびに年金受給金額は0.7%ずつ増額されるため、繰下げ受給を行って70歳で受給を開始すると、65歳で開始した場合よりも42%、毎月受け取る年金額が増えることになります。
そのため「健康だから70歳まで働いて、70歳からより多くの年金を受け取れたほうがお得なのでは?」と考える人もいるかもしれません。
この考えは完全に間違いではありませんが、注意点もあります。本記事では、現役時代の年収が500万円の人を例に挙げて解説します。

執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)
ファイナンシャルプランナー
FinancialField編集部は、金融、経済に関する記事を、日々の暮らしにどのような影響を与えるかという視点で、お金の知識がない方でも理解できるようわかりやすく発信しています。
編集部のメンバーは、ファイナンシャルプランナーの資格取得者を中心に「お金や暮らし」に関する書籍・雑誌の編集経験者で構成され、企画立案から記事掲載まですべての工程に関わることで、読者目線のコンテンツを追求しています。
FinancialFieldの特徴は、ファイナンシャルプランナー、弁護士、税理士、宅地建物取引士、相続診断士、住宅ローンアドバイザー、DCプランナー、公認会計士、社会保険労務士、行政書士、投資アナリスト、キャリアコンサルタントなど150名以上の有資格者を執筆者・監修者として迎え、むずかしく感じられる年金や税金、相続、保険、ローンなどの話をわかりやすく発信している点です。
このように編集経験豊富なメンバーと金融や経済に精通した執筆者・監修者による執筆体制を築くことで、内容のわかりやすさはもちろんのこと、読み応えのあるコンテンツと確かな情報発信を実現しています。
私たちは、快適でより良い生活のアイデアを提供するお金のコンシェルジュを目指します。
平均寿命まで生きた場合の年金受給総額
まずは平均寿命まで生きた場合の年金受給額の総額を見ていきましょう。今回は厚生労働省の「公的年金シミュレーター」を使用し、基本情報は次のとおりとします。
・生年月日:1965年7月1日(現在59歳)
・働き方:会社員として20~60歳の40年間勤務
・年収:500万円(便宜上40年間一律で500万円とする)
この条件でシミュレーションすると、65歳から年金受給を開始した場合の年金見込み受給額は、年間で189万円です。
一方、繰上げ受給を行って60歳から受給を開始した場合は145万円(60歳のみ140万円)、繰下げ受給を行って70歳から受給を開始した場合は269万円となります。
それぞれ、月額の年金受給額になおすと次のとおりです。
・60歳で受給開始:約12万円
・65歳で受給開始:約16万円
・70歳で受給開始:約22万円
年金は生涯受給できます。令和5年簡易生命表によると、男性の平均寿命は約81歳、女性は約87歳です。仮に85歳まで生きた場合、生涯で受け取れる年金の総額は次のとおりです。
・60歳で受給開始:3600万円
・65歳で受給開始:3840万円
・70歳で受給開始:3960万円
このように、受給開始時期を70歳まで引き下げたほうが生涯の年金受給総額は大きくなります。しかし、85歳より早く亡くなると受給総額は減り、損をする可能性もあります。
【PR】資料請求_好立地×駅近のマンション投資
【PR】J.P.Returns
おすすめポイント
・東京23区や神奈川(横浜市・川崎市)、関西(大阪、京都、神戸)の都心高稼働エリアが中心
・入居率は99.95%となっており、マンション投資初心者でも安心
・スマホで読めるオリジナルeBookが資料請求でもらえる
70歳から受け取る場合に考えたいこと
70歳まで年金を受け取らない場合、その間の生活費をどのようにまかなうかが重要なポイントです。総務省の「家計調査報告」によると、65歳以上無職世帯の平均的な支出の月額は単身者で約16万円、夫婦で約28万円です。
65歳まで働いて生活費を捻出した場合でも、その後70歳までの5年間で必要な金額は単身者で960万円、夫婦で1680万円です。
そのため、この期間については仕事を続けて収入を得るか、貯蓄を取り崩す必要があります。十分な資産がある場合は問題ありませんが、そうでなければ無収入期間が長くなるリスクを考慮しなければなりません。
健康寿命と健康状態のリスク
厚生労働省のデータによると、日本人の健康寿命(介護などを受けずに自立して生活できる年齢)は、男性で約72歳、女性で約75歳です。
健康寿命を過ぎると、医療費や介護費用が増える可能性があり、70歳以降の生活費が上昇することも考慮したいところです。また年金受給額が増えても、健康状態が悪化して自由にお金を使えない状況になる可能性もあります。
まとめ
繰下げ受給を行って、年金の受給開始時期を70歳に遅らせることで、生涯の受給総額を増やせる可能性があります。
しかし寿命によって総受給額が変わるため、一概に「お得」とはいいきれません。また70歳まで開始時期を遅らせた場合、70歳までの生活費をどうするか、働くのか貯蓄を取り崩すのかなどについて、健康寿命や将来の医療費もふまえて考える必要があります。
年金受給の開始の判断は、一度決めると後から変更できません。後悔しないためにもしっかりとシミュレーションを行い、自分に合った受給戦略を検討しましょう。
出典
総務省 家計調査報告〔家計収支編〕 2023年(令和5年)平均結果の概要
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー