大学生の娘が今年20歳になります。「国民年金保険料」は「親が立て替えて」でも払ったほうがよいのでしょうか?

配信日: 2025.04.18

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大学生の娘が今年20歳になります。「国民年金保険料」は「親が立て替えて」でも払ったほうがよいのでしょうか?
20歳になると学生でも国民年金保険に加入します。保険料は本人が払うべきなのか、払えないときはどのような方法があるのか。本記事でFPが解説します。
伊藤秀雄

執筆者:伊藤秀雄(いとう ひでお)

FP事務所ライフブリュー代表
CFP®️認定者、FP技能士1級、証券外務員一種、住宅ローンアドバイザー、終活アドバイザー協会会員

大手電機メーカーで人事労務の仕事に長く従事。社員のキャリアの節目やライフイベントに数多く立ち会うなかで、お金の問題に向き合わなくては解決につながらないと痛感。FP資格取得後はそれらの経験を仕事に活かすとともに、日本FP協会の無料相談室相談員、セミナー講師、執筆活動等を続けている。

支払う金額と給付額の関係

大学生のお子さんがいる方の多くは、ご自身が学生だった期間に、20歳に到達しても国民年金保険料を納付した記憶がないのではないでしょうか。かつて学生は任意加入とされており、強制加入になったのは平成3年4月からです。そのため、親世代は任意加入時代に納付体験のない方が多くみられます。
 
一方、強制加入となった現在の学生が納付する保険料と、将来反映する給付額は次のとおりです。なお、保険料・給付額ともに令和7年度の金額で計算しています(※1)。

(1) ひと月の保険料=1万7510円(令和7年度) ※年間21万120円
(2) (1)を1年間納付することによって増える将来の給付額=令和7年度の年額(満額)83万1700円×12/480ヶ月=2万792円/年

 
つまり、将来10年間国民年金(基礎年金)を受給すると、納付額とほぼ同額を回収できるということです。
 
加入手続きは、20歳到達時に日本年金機構が行います。対象者には基礎年金番号通知書をはじめ、加入したことを知らせる書類が届きます。毎月の保険料は、学生にとって決して安くありません。もし本人が払えない場合、大きく2つの選択肢があります。ひとつずつ見ていきましょう。
 

親が立て替えて払うと節税効果が高い

保険料は、本人の代わりに親が支払うことができます。子と生計を一にしていた期間に該当する保険料が対象となります。一般的には、同居して日常の世話をしてもらっている、あるいは下宿しても仕送りなどで面倒をみてもらっている場合は該当します(※2)。
 
親が支払うと、親の社会保険料控除に全額算入できるため、所得税・住民税の抑制につながります。もちろん、本人に課税されるほどのバイト収入などがあれば、同様に税金の圧縮ができますが、税率の高い(所得の多い)ほうが控除の効果が大きいので、世帯全体としては、親の所得から控除したほうが節税効果の高いケースが多いといえます。
 
事例で控除効果を見てみましょう。親の所得税率が20%、住民税の所得割が10%とした場合、1年分の子の保険料を確定申告すると、約6万3000円の還付を受けることができます。
 
年間納付額21万120円×(所得税20%+住民税10%)=6万3036円
 
なお、親が支払った場合は、日本年金機構から届く子の社会保険料控除証明書を、確定申告時に忘れず添付しましょう。
 

学生には納付猶予の特例がある

2つ目は、「学生納付特例制度」です。下記条件を満たす場合、在学中の納付を猶予してもらうこの特例制度を申請できます(※3)。

1. 前年の所得が次の基準以下であること ※申請者本人のみの所得(家族の所得は問わない)
128万円+扶養親族等の数×38万円+社会保険料控除等
 
2. 次の各学校に在学する学生であること
大学(大学院)、短期大学、高等学校、高等専門学校、特別支援学校、専修学校および各種学校、一部の海外大学の日本分校に在学する夜間・定時制課程や通信課程の者

なお、日本年金機構のホームページには、特例制度を利用できる対象校一覧が掲載されています。 
 
特例制度は、あくまで「猶予」であり「免除」ではありません。特例制度の承認を受けた期間は、老齢基礎年金の受給資格期間には含まれますが、年金額の計算対象期間には含まれないため、480ヶ月の満額納付済期間に近づけるには、後日追納する必要があります。
 
また、納付期限を過ぎている場合でも、納付期限から2年を経過していない期間(申請時点から2年1ヶ月前までの期間)についても、さかのぼって本特例の申請が可能です。
 

追納できる期限に気を付けよう

学生納付特例の承認を受けた期間は、10年以内であれば保険料をさかのぼって納めること(追納)ができます(※4)。追納の承認を受けた期間のうち、原則古い期間の分から納めていきます。将来受け取る年金額を増額するためにも、追納することをお勧めします。
 
ただし、学生納付特例の承認を受けた期間の翌年度から起算して、3年度目以降に保険料を追納する場合には、承認を受けた当時の保険料額に加算額が上乗せされます。加算額は経過した年数に応じ、おおむね月額100~400円程度となっています。
 
なお、追納についても、本人に代わり親が納付することが可能です。数年分を一括追納する場合は、すべての期間の保険料が追納年の社会保険料控除対象となるので、節税効果はかなり大きくなります。この制度を、活用することも選択肢になるでしょう。
 

出典

(※1)厚生労働省 令和7年度の年金額改定について
(※2)国税庁 No.1130 社会保険料控除
(※3)日本年金機構 国民年金保険料の学生納付特例制度
(※4)日本年金機構 国民年金保険料の追納制度
 
執筆者:伊藤秀雄
FP事務所ライフブリュー代表
CFP®️認定者、FP技能士1級、証券外務員一種、住宅ローンアドバイザー、終活アドバイザー協会会員

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