父が勝手に「繰下げ受給」を希望し年金の受給開始年齢を70歳にしていた!すでに「年金請求書」が届いているのですが、今から繰り下げを「無効」にできますか?

配信日: 2025.06.30 更新日: 2025.10.21
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父が勝手に「繰下げ受給」を希望し年金の受給開始年齢を70歳にしていた!すでに「年金請求書」が届いているのですが、今から繰り下げを「無効」にできますか?
繰下げ受給とは、年金の受給開始時期を遅らせることで月々の受給額をアップさせる制度です。すでに年金請求書が届いている場合、繰り下げは無効にできないのでしょうか。本記事では、繰下げ受給の注意点や無効にする方法などを解説します。
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年金の「繰下げ受給」を選択する方が増えている

厚生労働省年金局「令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると厚生年金の繰下げ率は2023年度末時点で1.6パーセント、70歳の繰下げ率は3.2パーセントです。2019年度はそれぞれ0.8パーセント・1.5パーセントであることを考えると、増加傾向にあるといえます。
 
なお、繰下げ受給とは通常65歳からもらえる年金の受給開始時期を66~75歳に遅らせる制度です。繰り下げた月数に応じて通常よりも多く年金を受け取れます。
 
日本年金機構によると、増額率の計算式は「0.7パーセント×繰下げた月数」です。例えば、受給開始時期を70歳まで遅らせた場合は42.0パーセント、75歳まで遅らせた場合は最大の84.0パーセントの増額率が適用されます。
 

任意のタイミングで「年金請求書」を送付すれば繰り下げを無効にできる

繰下げ受給の待機期間であれば、任意のタイミングで年金請求書を送付することで受給を開始できます。ただし、一度年金を受給すると再度の繰り下げはできません。
 
請求は、2つの方法があります。
 

・65歳時点に戻って年金をもらう

本来の受給開始年数である65歳時点に戻って年金をもらう方法です。この場合、繰下げ加算は適用されません。また、5年を過ぎた分の年金は時効により受け取れなくなります。
 
なお、法改正により繰り下げが75歳まで可能になったことを考慮し、特例的な繰り下げみなし増額制度が設けられています。これは70歳を過ぎてから65歳時点に戻って年金を請求する際、時効で不利にならないように増額分の年金も受け取れるようにする制度です。
 
例えば、72歳で請求した場合、時効により5年分の年金しか受け取れませんが、年金額には7年間の増額率が適用されます。
 

・現時点から増額された年金をもらう

請求した時点から増額された年金をもらう方法です。この場合、繰下げ加算が適用されますが、年金請求書に繰下げ申出書を添付する必要があります。
 

「繰下げ受給」の3つの注意点

繰下げ受給には、以下のとおり3つの注意点があります。
 

・税金や社会保険料が高くなる

受給額が増えると、税金や社会保険料も比例して高くなります。そのため、手元に残る金額は想定していたより少ないかもしれません。
 

・加給年金を受け取れないリスクがある

加給年金とは、厚生年金の被保険者が65歳になった際、対象者に生計を維持されている配偶者・子どもがいる場合に受け取れる年金です。待機期間中は加給年金を受け取れないため、かえって損をするかもしれません。
 
なお、加給年金は配偶者が65歳、子どもが18歳に到達した時点で支給が終了します。そのため、配偶者や子どもの年齢と待機期間を考慮することが重要です。
 

・受給総額が少なくなるおそれがある

早期に亡くなった場合、65歳から受け取っていた場合よりも生涯の受給総額が少なくなるおそれがあります。一般的に、生涯の累計受給額が65歳受給の場合と同額になる年齢は約80歳です。そのため、健康状態を考慮して慎重に検討しましょう。
 

まとめ

待機期間中に年金請求書を送付することで、繰り下げを無効にできます。ただし、一度年金を受給した場合は繰り下げられません。なお、請求する際は65歳時点に戻って年金をもらう方法と現時点から増額された年金をもらう方法に分けられます。
 
また、繰下げ受給は税金・社会保険料が高くなる点や加給年金を受け取れないリスクによって受給金額がおもっていたよりも少なくなるおそれがある点に注意が必要です。
 

出典

厚生労働省年金局 令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況(15ページ)
日本年金機構 年金の繰下げ受給
 
執筆者 : FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー

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