遺族年金が「5年間の有期給付」に…! 夫は「年収500万円」ですが、万一の場合の“受給額”は「現在・変更後」でどれだけ減るのでしょうか? 金額を知りたいです
しかし、新制度では所定の条件の下、遺族年金が最長「5年間」の有期給付に変わるとされています。「夫に万一のことがあったら……」「今の制度と何がどう変わるの?」と不安に感じる人もいるのではないでしょうか。
本記事では、現在の遺族年金の仕組みや、2028年度からの変更点、そして実際に給付額がどのように変わるのかについて、現在40歳で年収500万円の会社員の夫と、35歳で専業主婦の妻の夫婦を例にして解説します。
ファイナンシャルプランナー
FinancialField編集部は、金融、経済に関する記事を、日々の暮らしにどのような影響を与えるかという視点で、お金の知識がない方でも理解できるようわかりやすく発信しています。
編集部のメンバーは、ファイナンシャルプランナーの資格取得者を中心に「お金や暮らし」に関する書籍・雑誌の編集経験者で構成され、企画立案から記事掲載まですべての工程に関わることで、読者目線のコンテンツを追求しています。
FinancialFieldの特徴は、ファイナンシャルプランナー、弁護士、税理士、宅地建物取引士、相続診断士、住宅ローンアドバイザー、DCプランナー、公認会計士、社会保険労務士、行政書士、投資アナリスト、キャリアコンサルタントなど150名以上の有資格者を執筆者・監修者として迎え、むずかしく感じられる年金や税金、相続、保険、ローンなどの話をわかりやすく発信している点です。
このように編集経験豊富なメンバーと金融や経済に精通した執筆者・監修者による執筆体制を築くことで、内容のわかりやすさはもちろんのこと、読み応えのあるコンテンツと確かな情報発信を実現しています。
私たちは、快適でより良い生活のアイデアを提供するお金のコンシェルジュを目指します。
目次
現在の遺族年金制度
会社員である夫は国民年金と厚生年金に加入しています。そして、夫が亡くなった場合、遺された妻は受給要件を満たすと遺族年金を受給することができます。
現在35歳の妻が受け取れる可能性がある遺族年金としては、遺族基礎年金と遺族厚生年金が挙げられますが、遺族基礎年金は子がいることが条件で、給付が受けられるのは、子が18歳になった年度の3月31日までです(障害等級1級または2級の子は20歳未満)。
また、遺族厚生年金は子がいなくても受給できますが、妻が30歳未満の場合は5年間のみ、30歳以上の場合は生涯受給できます。
2028年度から何が変わるのか?
厚生労働省によると、2028年4月以降に適用される見直しでは、遺された妻が30歳以上でも、要件を満たす子どもがいなければ遺族厚生年金は原則5年間の支給に変更されることが明らかになっています。
ちなみに、改正前は妻が亡くなった場合、夫は55歳未満だと遺族厚生年金の受給資格はありませんでした。しかし、改正後は女性と同様の支給基準となり、夫も受給できるようになっています。
子どもがいる場合の給付額は?
年収500万円の夫が亡くなった場合、要件を満たす子どもがいる妻は遺族基礎年金と遺族厚生年金を受け取れます。
遺族基礎年金として受け取れる年金額は、年間83万1700円に加えて、子の加算額として1人目および2人目の子は各23万9300円、3人目以降の子は各7万9800円が受け取れます。
一方、遺族厚生年金の受給額は、妻自身の老齢厚生年金などにもよりますが、今回は「死亡した夫の老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3の額」とします。
この場合、夫が約20年間会社員として働き、その間の平均年収が500万円だとすると、遺された妻が受け取れる遺族厚生年金は年間で約40万4000円です。
そのため、遺された妻は子どもが1人であれば、子どもが所定の年齢になるまでは遺族基礎年金と遺族厚生年金を合わせて、年間150万円近く(遺族基礎年金83万1700円+子の加算額23万9300円+遺族厚生年金40万4000円)を受け取れます。この条件や金額は、2028年度の制度変更後も、子どもを養育する間については変更はありません。
子どもがいない場合の給付額は?
要件を満たす子どもがいない場合、受け取れるのは現状も制度変更後も遺族厚生年金のみです。ただし、現行制度下では、遺された妻が30歳以上であれば生涯受給が可能でしたが、制度変更後は5年間限定の支給になります。
子どもがいない場合、生涯の遺族厚生年金の受給額はどれくらい変わってくる?
要件を満たす子どもがいない場合でも、妻が30歳以上であれば現行制度では生涯にわたって遺族厚生年金を受給できました。
本記事のように、夫が20年間年収500万円で働き、妻が35歳の場合、遺族厚生年金としては、前述の通り年間約40万4000円が受け取れます。仮に85歳まで受け取ったとすると、総額で約2020万円です。
一方、制度変更後は支給期間が原則5年間に限定されますが、その代わりに「有期給付加算」として、従来の遺族厚生年金のおよそ1.3倍に相当する年金額が支給される仕組みとなる予定です。つまり、今回のケースでは年間で約52万5000円(40万4000円×1.3)受け取れるようになります。
とは言え、受給期間は5年間ですので、受け取れる遺族厚生年金の総額は約263万円と、これまでよりもかなり少なくなります。その差は、1757万円です(約2020万円-約263万円)。
まとめ
2028年の遺族年金の制度変更により、要件を満たす子どもがいない場合の支給金額はかなり減ってしまいます。公的年金制度は今後も変化し続ける可能性があります。この機会に一度、家族で話し合ってみるのも良いでしょう。
出典
厚生労働省 年金制度改正法が成立しました
日本年金機構 遺族基礎年金(受給要件・対象者・年金額)
日本年金機構 遺族厚生年金(受給要件・対象者・年金額)
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
