老後の生活費が不安なので、定年後はパートで「月10万」ほど稼ぎたいと考えています。「厚生年金」を受給できなくなることがあると聞いたのですが、本当でしょうか?
定年後に働き続けている場合でも、老齢厚生年金や老齢基礎年金を受給することは可能です。ただし、定年後の収入によっては老齢厚生年金が減ってしまうこともあることを知っておきましょう。
今回は、定年後にパートで働き続けた場合に老齢厚生年金が減額されるケースについて、計算式もあわせて解説します。
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目次
そもそも定年後の収入が受給できる厚生年金の額に影響するのは、厚生年金に加入する働き方のみ
定年後の収入によって老齢厚生年金が減額される仕組みを「在職老齢年金制度」といいます。ただし、この仕組みが適用されるのは、定年後も厚生年金に加入しながら働く場合に限られます。
つまり、厚生年金に加入していないパート勤務の場合は、パート給与の金額にかかわらず、老齢厚生年金を満額受給することが可能です。
厚生年金に加入しているケースでは、年金とパート給与の合計額によっては厚生年金が支給停止になる
前提として、定年後に働き続けている場合でも、老齢厚生年金や老齢基礎年金は受給できます。
しかし、厚生年金に加入している場合は、パート勤務であっても1ヶ月の老齢厚生年金と給与の合計があたり51万円を超えると、以下の表1の通り老齢厚生年金の支給が停止されます。なお、基準額である「51万円」は、「令和7年の支給停止調整額」であり、金額は毎年4月に改定されます。
表1
| 報酬と年金の合計額(月額) | 在職老齢年金 |
|---|---|
| 基本月額+総報酬月額相当額が51万円以下 | 全額支給 |
| 基本月額+総報酬月額相当額が51万円を超える | 減額(支給停止) |
※日本年金機構「在職老齢年金の計算方法」を基に筆者作成
具体的な計算方法は、次の通りです。
支給停止額=(基本月額(※1)+総報酬月額相当額(※2)-51万円)×1/2
※1:年間の老齢厚生年金総額を12分割した額
※2:標準報酬月額に、直近1年間の賞与を12分割した額を加えた金額
標準報酬月額とは、基本給のほか残業手当や通勤手当などを含めた税引き前の給与を、一定の幅で区分した報酬月額に当てはめて決定したものです。
例えば、基本月額が15万円、総報酬月額相当額が10万円のケースでは、「15万円+10万円=25万円<51万円」であるため、老齢年金は満額支給されます。
一方、基本月額が18万円、総報酬月額相当額が37万円のケースでは、「18万円+37万円=55万円>51万円」となり、老齢厚生年金は一部が支給停止されます。このケースにおける支給停止額は、次の通りです。
支給停止額=(18万円+37万円-51万円)×1/2=2万円
この場合、在職老齢年金として受け取れる年金額は、18万円-2万円=16万円です。
厚生年金の「基本月額」を確認する方法
基本月額とは、老齢厚生年金の「報酬比例部分」の月額です。「報酬比例」という名前の通り、報酬の額や年金への加入期間に応じて、金額が一人ひとり異なります。次の方法で、自分の基本月額を確認しましょう。
年金を受給中の人:「年金額改定通知書」(日本年金機構から送付される)など
将来受給する人:「ねんきん定期便」(日本年金機構から送付される)など
報酬比例部分に記載されているのは年額であるため、基本月額は12で割って計算しましょう。
そのほか、基本月額は「ねんきんネット」でも確認が可能です。「ねんきんネット」に登録してログインすれば、これまでの保険料の納付状況や将来の年金受給見込み額なども確認できます。定年後も働きつつ、老齢厚生年金を満額受給するためにも、自分の年金の基本月額をしっかり確認しておきましょう。
厚生年金とパート給与の合計が基準額を超えると、厚生年金が減額される
定年後にパートで働く場合、定年後の収入が老齢厚生年金の受給額に影響するのは、厚生年金に加入して働く場合のみです。厚生年金に加入して働いている場合は、老齢厚生年金とパート給与の合計が1ヶ月あたり51万円を超えると、老齢厚生年金の支給が停止される場合があることに注意しましょう。
年金を減らさず働くためには、事前に制度を正しく理解しておくことが大切です。
出典
日本年金機構 在職老齢年金の計算方法
執筆者 : FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
