先日、“事実婚の男性パートナー”が55歳で亡くなりました。共に生活し、住民票でも世帯は同じです。事実婚でも遺族年金はもらえるのでしょうか?

配信日: 2025.09.05 更新日: 2025.10.21
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先日、“事実婚の男性パートナー”が55歳で亡くなりました。共に生活し、住民票でも世帯は同じです。事実婚でも遺族年金はもらえるのでしょうか?
今回の相談は、世間全体では多いとはいえませんが、法律婚という婚姻届を出して生計を一にしている世帯ではなく、事実婚という婚姻届は出していないが共に生計を一にしている世帯のパートナーが亡くなったときの遺族年金について詳しく説明していきます。
吉野裕一

夢実現プランナー

2級ファイナンシャルプランニング技能士/2級DCプランナー/住宅ローンアドバイザーなどの資格を保有し、相談される方が安心して過ごせるプランニングを行うための総括的な提案を行う
各種セミナーやコラムなど多数の実績があり、定評を受けている

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働き方や生き方の多様性で事実婚を選ぶカップルも

内閣府に設置されている男女共同参画局が令和3(2021)年に調査した「人生100年時代における結婚・仕事・収入に関する調査報告書」によると、女性の年代別にみる事実婚・内縁の配偶者がいる割合は、20~60代で1.4~3.1%です。さらに詳細をみていくと、30代・50代・60代で各3%程度と事実婚・内縁の割合が多くなっています。
 
一方、男性は同1.3~2.4%程度で、40代が2.4%と最も多くなっています。
 
婚姻をして生活をすることで、所得税や社会保険の控除などの優遇を受けられることもありますが、婚姻をせずに生活をしても困らないというライフスタイルができているのかもしれません。
 

遺族年金を受け取れる範囲

遺族年金には、「遺族基礎年金」と「遺族厚生年金」があります。
 
遺族基礎年金は、国民年金の被保険者や老齢基礎年金の受給権者や受給資格期間を満たした人が死亡したときに、遺族に対して年金が支給されるものです。
 
受給の対象者は子のある配偶者か子となっていますが、子の要件は18歳に達した年度の3月31日まで、または20歳未満で障害年金の障害等級1級または2級の状態にある方となります。
 
これら要件を満たす子どもを持たない配偶者は、遺族基礎年金を受給できません。
 
遺族厚生年金は、厚生年金保険の被保険者、被保険者期間中の病気・けがで5年以内に死亡した方、老齢厚生年金の受給権者や受給資格を満たした人が死亡したときに、遺族に対して年金が支給されます。
 
受給の対象は、死亡した人に生計を維持されていた遺族となり、以下の順に支給されることになります。

1. 子のある配偶者
 
2. 子
 
3. 子のない配偶者
 
4. 父母
 
5. 孫
 
6. 祖父母

遺族厚生年金の子も18歳に達した年度の3月31日までの子となりますが、遺族厚生年金の場合、子のない配偶者も支給対象です。
 
また配偶者が夫の場合は55歳以上である必要があり、実際の受給開始は60歳からとなります。
 

事実婚でも遺族年金は認められる

では、婚姻届を出していない事実婚の場合、遺族年金を受給する資格はあるのでしょうか。結論からいうと、「認められるケースもある」といえます。
 
遺族基礎年金と遺族厚生年金の受給資格については、国民年金法・厚生年金保険法で範囲が定められており、どちらも“被保険者または被保険者であった者の死亡の当時その者によって生計を維持されたものとされ、その条件の中で、政令で定める”と定義されています。
 
今回の相談のケースでは、亡くなったパートナーに18歳以下の子がいない場合には、遺族基礎年金は対象外となります。事実婚の相談者に18歳以下の子がいたとしても、養子縁組をしていなければ、子としては認められないので、対象外となります。
 
遺族厚生年金は、今回のケースでは対象となる可能性があり、日本年金機構の「事実婚関係及び生計同一関係に関する申立書」で申請する必要があります。
 
証明書の添付が必要です。
 
図表1

ケース 事実婚関係・生計同一関係証明書類
ア. 健康保険等の被保険者になっている場合 資格確認書または健康保険被保険者証等の写し
イ. 給与計算上、扶養手当等の対象になっている場合 給与簿または賃金台帳等の写し
ウ. 同一人の死亡について、他制度から遺族給付が行われている場合 他制度の遺族年金証書等の写し
エ. 事実婚関係にある当事者間の挙式、披露宴等が1年以内に行われている場合 結婚式場等の証明書または挙式・披露宴等の実施を証する書類
オ. 葬儀の喪主になっている場合 葬儀を主催したことを証する書類(会葬御礼の写し等)
カ. その他ア~オのいずれにも該当しない場合 その他内縁関係の事実を証する書類
・連名の郵便物
・公共料金の領収書
・生命保険の保険証
・未納分の税の領収証
・賃貸借契約書の写しなど複数点

日本年金機構「生計同一関係証明書類等について」リーフレットより筆者作成
 

まとめ

事実婚であっても、遺族年金を受け取ることが可能なケースもあります。
 
遺族年金を受給するためには生計を維持されていたという証明書が必要で、必要書類を添付して「事実婚関係及び生計同一関係に関する申立書」で申請する必要があります。
 
遺族年金には遺族基礎年金と遺族厚生年金があり、支給要件に違いがありますので、遺族の状況によっては受給対象外となることもあります。遺族年金だけを頼りにするのではなく、パートナーが亡くなった後のライフプランも考えておくことが大切です。
 

出典

内閣府 男女共同参画局 令和3年 人生100年時代における結婚・仕事・収入に関する調査報告書
デジタル庁 e-GOV 法令検索 国民年金法 第四節 遺族基礎年金
デジタル庁 e-GOV 法令検索 厚生年金保険法 第四節 遺族厚生年金
日本年金機構 生計同一関係・事実婚関係に関する申立をするとき
 
執筆者 : 吉野裕一
夢実現プランナー

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