夫が「年金は75歳から受け取る」と言ってましたが、受給前に死亡…“受け取れなかった年金”はどうなりますか? 65歳時点での年金受給額「15万円」の場合で試算
こうした万一の事態に備え、年金制度の仕組みを知っておくと安心です。本記事では、年金の繰下げ待機中に夫が亡くなった場合に、妻が受け取れるお金について、解説します。
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目次
繰下げ待機中に夫が亡くなった場合、年金はどうなる?
年金は原則、本人が生きていなければ受け取れません。そのため、年金の受給開始を繰り下げている間に夫が亡くなった場合でも、夫が受け取るはずだった年金が遺族にそのまま引き継がれることはありません。
ただし、夫が納めてきた年金保険料が全て無駄になるわけではなく、遺族は「未支給年金」や「遺族年金」として一部を受け取れる可能性があります。
遺族が受け取れる「遺族年金」と「未支給年金」
夫が年金受給前に亡くなった場合、遺族が受け取れるお金は主に以下の2つです。
遺族年金
遺族年金は、夫の死亡後に残された家族の生活を支えるための年金です。遺族年金には「遺族基礎年金」と「遺族厚生年金」の2種類があり、夫が加入していた年金制度によって支給される年金が異なります。
遺族基礎年金とは、国民年金の加入者が亡くなった場合に、生計を共にしていた子(18歳になった年度の末日まで、または障害等級1級・2級であれば20歳未満)がいる妻や子に支給される年金です。
一方、遺族厚生年金とは、厚生年金の加入者が亡くなった場合に、妻や子などの遺族に支給されます。妻が受け取る場合、夫が受け取るはずだった老齢厚生年金の約4分の3が支給されます。例えば、夫の老齢厚生年金が15万円だった場合、遺族厚生年金は11万2500円です。
未支給年金
夫が65歳を過ぎて年金の受給権を得ていたにもかかわらず、受給を繰り下げている間に亡くなった場合でも、65歳から亡くなるまでの間の年金は「未支給年金」として遺族が受け取ることが可能です。
例えば、65歳の時点で老齢年金の受給額が月15万円だった夫が70歳で亡くなった場合、65歳から亡くなるまでの間に支給されるはずだった年金は「未支給年金」として遺族に支払われます。
受給期間を5年間(60ヶ月)とした場合は、「15万円×60ヶ月」で合計900万円となります。この未支給年金は、夫が亡くなった後に遺族が年金事務所に請求することで、一括で受け取ることが可能です。
なお、未支給年金に相続税はかかりませんが、受取額が50万円以上になる場合は確定申告が必要な場合があるため、注意しましょう。
妻が受け取れる「中高齢寡婦加算」とは?
中高齢寡婦加算とは、遺族厚生年金を受給できない妻が、夫の死亡により経済的に自立できない期間を支援するために支給される年金です。
支給されるのは、原則として子どもがいない妻や、遺族年金の受給資格がない妻で、65歳未満に限られます。中高齢寡婦加算が加算される主な要件は以下の通りです。
・夫が死亡した時点で、夫によって生計を共にしている
・夫の死亡時に、妻が40歳以上65歳未満である
・遺族基礎年金の受給要件を満たしていない
・妻自身が老齢厚生年金を受給していない
中高齢寡婦加算の金額は、原則として40歳から65歳の間に年額62万3800円が加算されます。夫が年金の受給を繰り下げて年金を1度も受給せずに亡くなった場合でも、妻が要件を満たしていれば、中高齢寡婦加算を受け取ることが可能です。
妻が65歳以上の遺族厚生年金の受給権者だった場合
夫が亡くなった後、妻が65歳以上で遺族厚生年金と老齢厚生年金の受給権を持つ場合は、注意が必要です。老齢厚生年金は全額支給されますが、遺族厚生年金は老齢厚生年金に相当する額が差し引かれて支給されます。
例えば、老齢厚生年金が10万円、遺族厚生年金が11万2500円の場合、差額の1万2500円のみが遺族厚生年金として支給されます。
年金繰下げ待機中の死亡でも「未支給年金」は請求できる
年金の受給を繰り下げている間に夫が亡くなった場合でも、これまでの年金保険料が無駄になることはありません。
遺族は、夫が受け取るはずだった年金を「未支給年金」として請求ができます。受け取れる年金額は条件によって変わるため、自身のケースではいくらもらえるのか、年金事務所に確認してみましょう。
出典
日本年金機構 遺族基礎年金(受給要件・対象者・年金額)
日本年金機構 遺族厚生年金(受給要件・対象者・年金額)
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
