68歳の母のパート収入が“年収160万円”を超えそうです。年金をもらいながら働き過ぎると年金がカットされると聞きましたが、どこまでならセーフですか?
この記事では、令和7年度現在の支給停止基準や、令和8年4月から予定されている改正内容をふまえて、「どこまで働いても年金が減らされないか」を分かりやすく解説します。
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目次
「在職老齢年金制度」とは? 働きながら年金を受け取る人への調整制度
65歳以上で老齢年金を受給しながら厚生年金保険に加入して働いている人や、70歳以降も厚生年金保険の加入事業所で働く人は、一定以上の収入があると老齢厚生年金の一部または全部が支給停止されます。これを「在職老齢年金制度」といいます。
具体的には、「老齢厚生年金の月額」+「給与月額+賞与の月額換算」の合計が支給停止調整額を超えると、超えた分の2分の1が老齢厚生年金から減額されます。日本年金機構によると、現在(令和7年度)の支給停止調整額は月51万円です。この金額を基準に、調整が行われています。
なお、支給停止の対象となるのは「老齢厚生年金」のみで、「老齢基礎年金」には影響しません。
「年収160万円」のパートは、支給停止の対象になる?
ご相談のケースでは、お母さまは68歳で、年金を受け取りながらパート収入が年160万円を超える見込みとのことです。仮に賞与がない場合、月収換算では約13万3333円(160万円÷12)となります。
また、在職老齢年金の調整では、「老齢厚生年金」の額が考慮されます。仮にお母さまの老齢厚生年金が月10万円程度であった場合、収入合計は「10万円(老齢厚生年金)+13万3333円(給与)」で月約23万3333円です。支給停止基準の51万円に比べて大きく下回っており、年金が減額される心配はないと考えられます。
なお、老齢厚生年金における理論上の最高額は月30万円ほどとされています(令和7年度時点)。給与が月約13万3333円で、令和7年度の支給停止調整額51万円を超えるには、老齢厚生年金が37万円以上必要となる計算ですが、これは現実的ではないでしょう。
つまり、年収160万円程度のパート収入では、支給停止の対象とはならず、年金と給与のどちらも全額受け取れる可能性が高いといえます。
令和8年4月から支給停止基準が「月62万円」に引き上げ予定
現在の支給停止調整額は月51万円ですが、年金制度の改正により、令和8年4月からは月62万円に引き上げられる見通しです。これは、働く高齢者の増加と、就労意欲を削がないための制度見直しとして進められているものです。
支給停止調整額が今より11万円引き上げられることで、より多くの人が年金を減らされることなく働けるようになります。特に収入が多いシニア層にとっては、大きな影響を与える改正です。
今回のように「年収160万円程度のパート」であれば、改正後ももちろん支給停止にはなりませんが、今後より柔軟な働き方が可能になることは、長期的な家計設計にもプラスになるといえるでしょう。
まとめ
68歳で年金を受け取りながら、年160万円程度のパート収入を得る場合、在職老齢年金制度による支給停止の影響を受けることはほとんどないと考えられます。
令和7年度の支給停止調整額は月51万円、令和8年4月からは月62万円に引き上げられる予定であり、老齢厚生年金と給与の月額合計がその範囲内であれば、年金も給与も全額受け取ることができます。
「働くと損をする」と思われがちな在職老齢年金制度ですが、実際には影響を受けない収入水準で働くことが可能なケースも多いです。安心して働ける環境をつくるためにも、制度の内容と最新の改正動向を確認しながら、ご自身やご家族のライフスタイルに合った働き方を選びましょう。
出典
日本年金機構 年金Q&A (老齢厚生年金全般) 60歳以降も引き続き勤めます。勤めていても年金は受けられますか。
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー