60代前半で夫を亡くした妻は「遺族年金」をいくら受け取れる?夫の年金額から試算
特に60代前半で配偶者を亡くした場合、まだ老齢年金の本格的な受給が始まっていないケースも多く、不安を抱えやすい時期です。この記事では、遺族年金の基本的な仕組みと、夫の年金額をもとにした具体的な試算を紹介します。
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遺族年金には2種類ある
遺族年金には大きく分けて次の2つがあります。
1.遺族基礎年金
国民年金に加入していた人が亡くなった場合に支給されますが、18歳年度末までの子(または障害のある20歳未満の子)がいる配偶者に限られます。そのため、60代前半で子どもがすでに独立している妻は、原則として遺族基礎年金は受け取れません。
2.遺族厚生年金
会社員や公務員として厚生年金に加入していた夫が亡くなった場合、妻はこの遺族厚生年金を受給できます。60代前半の妻にとって、実質的に中心となるのがこの遺族厚生年金です。
遺族厚生年金はいくらもらえる?
遺族厚生年金の金額は、夫が本来受け取るはずだった老齢厚生年金(報酬比例部分)の4分の3(75%)が基本となります。ただし、2025年以降の制度改正により、原則5年間の有期給付期間中は「有期給付加算」が加算され、年額で約30%増額されます。
たとえば、夫の老齢厚生年金が年額160万円だった場合、
・通常時
160万円 × 75% = 120万円(年額)→月額約10万円
・有期給付期間中(5年間)
120万円 × 1.3 = 156万円(年額)→月額約13万円
これが遺族厚生年金として妻に支給されます。5年後は基本の75%に戻ります。
60代前半の妻が受け取れる「中高齢寡婦加算」
さらに、60歳以上65歳未満の妻で、18歳未満の子がいない場合には、中高齢寡婦加算が上乗せされる可能性があります。令和7年度(2025年度)の中高齢寡婦加算は年額62万3800円です。先ほどの例に当てはめると、
・遺族厚生年金
120万円
・中高齢寡婦加算
62万3800円
合計で約182万3800円(年額)、月額では約15万1983円となります。ただし、2028年4月以降は中高齢寡婦加算が段階的に廃止されるため、新規受給者は加算額が徐々に減少します。
65歳以降はどうなる?
妻が65歳になると、中高齢寡婦加算は終了します。その代わり、自身の老齢基礎年金や老齢厚生年金を受け取る年齢になります。このとき注意したいのが「併給調整」です。65歳以降は、
・自分の老齢厚生年金
・遺族厚生年金
の両方を満額受け取れるわけではなく、金額の調整が行われます。一般的には「自分の老齢年金+遺族厚生年金の一部」という形になります。また、65歳になると中高齢寡婦加算は終了し、代わりに「経過的寡婦加算」が遺族厚生年金に加算されることがあります(1956年4月2日以降生まれの妻には適用されません)。
事前に確認しておきたいポイント
遺族年金の金額は、夫の加入期間や報酬額、妻自身の年金状況によって変わります。
また、繰下げ受給や就労収入の有無によっても家計の姿は大きく変わります。不安がある場合は、年金事務所やファイナンシャルプランナーに相談し、具体的な試算をしておくことが安心につながります。
出典
日本年金機構 遺族厚生年金(受給要件・対象者・年金額)
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー