70歳の父が“週5日・時給1300円”で働いています。70歳を超えても「在職老齢年金」の調整があると聞きましたが、本当でしょうか?
本記事では、在職老齢年金の基本的な仕組みを整理したうえで、70歳以降も働く場合の年金への影響について解説します。
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「在職老齢年金」とは何か
在職老齢年金とは、老齢年金を受け取りながら厚生年金保険に加入して働いている人について、賃金と老齢厚生年金の1ヶ月の合計額が一定の基準を超える場合に、老齢厚生年金の一部または全額が支給停止される仕組みです。対象となるのは老齢厚生年金であり、老齢基礎年金については、働いていても支給停止の対象にはなりません。
この制度は、「現役並みの収入がある場合には、年金の支給を調整する」という考え方に基づいて設けられており、老齢厚生年金を受け取りながら、厚生年金保険に加入して働いている人が対象となります。
70歳を超えても調整はある?
「70歳を超えると在職老齢年金は関係なくなる」と思われる方もいるかもしれませんが、これは正確ではありません。確かに、厚生年金保険の被保険者として加入できるのは原則70歳未満までですが、70歳以降も働き方によっては在職老齢年金制度の対象となります。
日本年金機構によれば、70歳以降も厚生年金保険の加入事業所で働く場合は、賃金と老齢厚生年金の合計額が基準額を超えると、在職老齢年金制度の対象となります。
そのため、「70歳を超えたから年金の調整は一切なくなる」という理解は誤りであり、就労先や賃金水準によっては、引き続き老齢厚生年金の支給調整が行われる可能性があります。
支給停止の基準額と今回のケース
在職老齢年金では、賃金(賞与含む月額)と老齢厚生年金(月額相当額)の合計が、一定の基準額を超えるかどうかで調整の有無が判断されます。基準額は制度改正により見直されることがありますが、2025年度においては、合計額が月51万円を超えるかどうかが基準となります。
今回のケースでは、時給1300円で仮に1日5時間、週5日働くと、月収はおおよそ13万円前後になります。これに老齢厚生年金の月額を加えても、合計が基準額を下回る場合には、在職老齢年金による支給停止は生じません。
一方で、年金額が高い場合や、労働時間・賃金が増えた場合には、調整がかかる可能性もあるため、定期的に確認しておくことが大切です。
働きながら年金を受け取る際の注意点
在職老齢年金の調整は、老齢厚生年金のみが対象であり、老齢基礎年金には影響しません。また、支給停止が行われた場合でも、停止された分が将来にわたって失われるわけではなく、収入が支給停止調整額に満たなくなった時点で支給が再開されます。
70歳以降も働く場合には、年金額と賃金のバランスを把握し、「どの程度働くと調整がかかるのか」を事前に理解しておくことが、安心して就労を続けるためのポイントといえるでしょう。
まとめ
在職老齢年金は、働きながら老齢厚生年金を受け取る人に適用される制度であり、70歳を超えた後も、働き方によっては支給調整が行われます。
ただし、賃金と老齢厚生年金の合計額が支給停止調整額を下回っていれば、年金が減額されることはありません。今回のように、時給1300円程度で働いているケースでは、在職老齢年金の影響を受けない可能性も十分に考えられます。
年金を受け取りながら働く場合には、制度の仕組みを正しく理解し、自身の収入状況に照らして確認しておくことが重要です。不安な場合は、日本年金機構への相談も検討するとよいでしょう。
出典
日本年金機構 60歳以降も引き続き勤めます。勤めていても年金は受けられますか。
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
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