65歳から「年金15万円」もらえるのに、60歳から「繰り上げて11万円受け取る」という父。貯金500万円なので“長く受け取るほうが得”と言いますが、本当ですか? 総受給額を比較

配信日: 2026.02.26
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65歳から「年金15万円」もらえるのに、60歳から「繰り上げて11万円受け取る」という父。貯金500万円なので“長く受け取るほうが得”と言いますが、本当ですか? 総受給額を比較
「貯金があまり多くないから、年金は60歳から受け取ろうと思っている」という父の言葉を聞くと、「早めに受け取ると年金受給額が減って損なのでは?」と感じる人も多いのではないでしょうか。
 
年金の受給開始時期は、老後の生活を大きく左右する重要な選択です。本記事では、年金の繰上げ受給の仕組みを整理したうえで、総受給額や生活費との関係から、本当に繰上げ受給が損なのかを解説します。
三浦大幸

2級ファイナンシャルプランニング技能士/日商簿記3級/第一種衛生管理者/証券外務員/英検2級など

年金の「繰上げ受給」とは?

老齢年金は、原則65歳から受け取りますが、希望すれば60歳から繰り上げて受給することが可能で、これを「繰上げ受給」といいます。
 
ただし、繰上げ受給をすると、65歳から受け取るはずだった年金額から1ヶ月受給開始時期を早めるごとに0.4%減額され、60歳から受け取る場合は生涯にわたって24%減となります。(昭和37年4月2日以降生まれの場合)
 
そのため、65歳から年金を月15万円受け取れる場合、60歳から受け取ると、月に11万4000円(24%減)となります。
 

80歳までで、総受給額はどれくらい違う?

65歳から年金を毎月15万円受給する場合、80歳までに受け取れる金額は次の通りです。
 
・15万円×12ヶ月×15年(65~80歳)=2700万円
 
一方、60歳から受給する場合の80歳までに受け取れる年金受給額は次の通りです。
 
・11万4000円×12ヶ月×20年(60~80歳)=2736万円
 
80歳時点で比較すると、60歳から受け取ったほうが36万円多い結果になります。ただし差は大きくなく、受給開始時期による総受給額は80歳前後ではおおむね拮抗しています。当然ですが、この場合は長生きすればするほど、65歳から受け取り始めたほうが60歳からよりも総受給額は高くなります。
 

損益分岐点はいつか

今回のケースにて、年金受給開始時期が60歳と65歳では、損益分岐点は何歳になるのでしょうか。
 
60歳から受給開始した場合、年間で受け取る年金額は136万8000円(11万4000円×12ヶ月)です。一方、65歳からの場合、年間で180万円(15万円×12ヶ月)受け取れます。
 
そのため、60歳から受け取り始めた場合、65歳から受け取り始めた場合と比べると、684万円(136万8000円×5年)を先にもらっていることとなります。
 
65歳以降に小さくなる年額の差は、180万円−136万8000円=43万2000円ずつです。
 
これらにより、684万円÷43万2000円=約15.83年で損益分岐点が逆転します。つまり、年齢で言うと80歳10ヶ月あたりです。
 
80歳10ヶ月より長生きすると総額では65歳開始が有利、それより前なら60歳開始が有利といえます。
 

貯金500万円で「65歳まで待つ」のは現実的? メリット・デメリットは?

総務省の「家計調査報告〔家計収支編〕2024年(令和6年)平均結果の概要」によると、65歳以上の単身無職世帯の消費支出の平均金額は月額およそ15万円です。
 
仮に同程度の生活費がかかるとすると、60歳から65歳までの5年間で約900万円が必要になります。
 
貯金500万円では、この期間を年金なしで乗り切るのは難しく、働かない場合は途中で資金が尽きるリスクが高いでしょう。60歳から年金を受け取ることで「65歳までの生活ショートを防げる」という点は、現実的なメリットです。
 
ただし、注意すべきなのは「ショートを防げる=その後の生活が楽になる」わけではない点です。
 
60歳から繰上げ受給すると、年金額は一生減額されたままになります。結果として、65歳以降、貯蓄が尽きた場合には月11万円台前半の年金で生活を続ける必要があり、長期的に家計が厳しくなるかもしれません。
 
また、繰上げ受給をすると、後から「やはり65歳からに戻したい」と思っても変更はできません。医療費や介護費用が増えやすい後期高齢期に、収入のベースが低いまま固定される点は、長期的なリスクといえるでしょう。
 
つまり、60歳から年金を受け取る選択は「得か損か」という単純な話ではなく、資金ショートを避けるための現実的な選択である一方、老後後半の生活を厳しくする可能性も考慮するのが重要だといえるでしょう。
 

まとめ

今回の条件では、80歳時点で総額は65歳開始で2700万円、60歳開始で2736万円となり、損益分岐点は80歳10ヶ月ごろです。
 
貯金が500万円しかない場合、65歳まで無収入で耐えるのは厳しいケースがあり、60歳から受け取る選択には「損をしてでも生活を成立させる」という合理性があります。ただし、その場合は、後々の生活が苦しくなるかもしれません。
 
繰上げ受給は「損か得か」だけでなく、65歳までの生活資金が足りるか、そして何歳まで生きる前提で備えるか、働く予定はあるかなどを総合的に考えることが大切です。
 

出典

日本年金機構 年金の繰上げ受給
総務省統計局 家計調査報告〔家計収支編〕2024年(令和6年)平均結果の概要
 
執筆者 : 三浦大幸
2級ファイナンシャルプランニング技能士/日商簿記3級/第一種衛生管理者/証券外務員/英検2級など

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