年収540万円で、保険料が「月4.1万円」引かれています。自分が年4%で運用したら「5511万円」ですし、正直“払い損”に感じます。年金と投資は実際どちらが得なのでしょうか?
給与から差し引かれ手取りへ影響する社会保険料の負担は重いことから、このような「払い損だ」といった意見を耳にすることが非常に多いです。将来への不安から「年金として支払うより自分で運用したい」と考えるのも無理はないかもしれません。
本記事では、毎月支払う保険料を積み立てて複利運用したと仮定し「公的年金制度」を「投資商品」として分析した結果から、年金は何歳で「元が取れる」のか考えます。また、公的年金制度の「利回り」だけでない本当の強みについて解説します。
ファイナンシャルプランニング技能士1級、介護福祉士
公的年金制度を「つみたて投資」として分析してみた結果
今回は金融庁のつみたてシミュレーターを使い、公的年金制度を「投資商品」として利回りを分析してみました。
国民年金の利回りは約3%、元が取れる損益分岐点は?
2024年の日本の平均寿命である、男性81.09歳、女性87.13歳をもとに、85歳まで20年間、老齢基礎年金を受給すると仮定して試算します。2026年度の国民年金の保険料(月1万7920円)を20歳から60歳まで40年間納めると、支払総額は860万1600円になります。
一方、老齢基礎年金の受給額を2026年度満額(年84万7296円)とし、65歳から85歳まで20年間受け取ると、総額は1694万5920円です。これらの計算から、支払った保険料を受給額が上回る損益分岐点は122月となるため、65歳から年金を受け取ると75歳2ヶ月で「元が取れる」計算です。
これを、40年間にわたって積立投資したものと仮定して複利計算すると、利回りは年約3.1%という結果となりました。つまり、国民年金の利回りは約3%ということになります。
平均標準報酬月額45万円の厚生年金の利回りは約3%、損益分岐点は夫婦が約73歳と有利
次に、タイトルの事例をもとに、主に会社員などが加入する厚生年金について考えます。
平均標準報酬額45万円で大学卒業後の22歳から65歳まで厚生年金に加入したケースでは、老齢厚生年金(報酬比例部分)は年約127万2688円です。ここに老齢基礎年金と経過的加算を加えると、年間受給額は216万2349円となります。
20年間85歳まで受け取ると仮定すると、総額約4325万円です。これらの計算から、受給額が支払額を上回る損益分岐点は119ヶ月となり、74歳10ヶ月頃で「元が取れる」と言えます。毎月約4万円を積立投資したと仮定した場合の利回りは約3%となります。
運用の効果の部分のみで見ると、老齢基礎年金のみの場合、老齢厚生年金も受け取る場合のどちらも、自分で4%で運用した場合(5511万円)には届かない結果となりました。
しかし、厚生年金に20年以上加入している場合、条件をみたせば配偶者の加給年金(年額約40万円)が加算されます。
また、第3号被保険者である配偶者がいる場合、配偶者の老齢基礎年金も受給できるため、夫婦で20年受け取る場合の総額は加給年金を加算せずに約6015万円となります。
損益分岐点は85ヶ月となり、約72歳で元が取れます。世帯全体での利回りは約4.3%となりました。単身者と夫婦世帯とで、損益分岐点に約3歳の差がつき、夫婦世帯のほうが有利な結果となりました。
※試算は2026年度の価格に基づき、分かりやすく伝えるため、2003年4月以降の給付乗数(5.481/1000)を使い計算しています。
なぜリターンが安定しているのか?
年金の安定したリターンを支えるのは、保険料の「国庫負担」と「労使折半」です。厚生年金は、会社が半分負担してくれる「労使折半」です。また、国民年金は財源を国が半分負担しています。
この「国庫負担」がない場合、老齢基礎年金は20年受給では元本割れです。厚生年金も「労使折半」「国庫負担」がない場合は、同条件の単身者であれば利回り0.1%、夫婦世帯でも利回り約1.6%まで低下します。
公的年金制度を支えているのは「国」や「企業」の力も大きいことが分かります。
「利回り」ではなく「保険」部分が年金制度の本当の強み
公的年金制度は、年金部分だけ見ると利回り4%超えは、どちらかが厚生年金を受給する夫婦世帯のみでした。しかし、公的年金制度の本当の強みは「保険」部分にあります。
・終身年金:長生きするほど高リターンに
・遺族年金:万一の際に家族を支える
・障害年金:働けなくなった場合の保障
これらの保障が、「国庫負担」「労使折半」という仕組みにより、全額自己負担せずに準備できることが大きなメリットとなります。
まとめ
公的年金制度を「投資商品」として考えると、もの足りなく感じるかもしれません。しかし、一生涯の保障も付いた年金保険と考えると、民間では成り立たないレベルの商品です。
少子高齢化による社会保険料の負担増加や受給額の調整はあるかもしれませんが、「年金は払い損」と思い込み未納を放っておいたりせずに、その仕組みを理解し、自分の資産形成の一部に組み込むと良いかもしれません。
出典
厚生労働省 令和6年簡易生命表の概況
日本年金機構 は行 報酬比例部分
金融庁 つみたてシミュレーター
執筆者 : 藤田寛子
ファイナンシャルプランニング技能士1級、介護福祉士