定年後「年金15万円」で不安なので“交通誘導員”を始めました。「日給1万円×週3日」ですが、稼いだ分だけ“年金がカットされる”って本当ですか? 支給停止の基準を解説
結論からいうと、給与と年金の合計が基準額を超えない限り、年金は減額されません。多くの人が心配するような「少し働いただけで年金がごっそり減る」というケースは、実はまれです。
本記事では、在職老齢年金制度の仕組みや、減額される具体的な基準額について解説します。制度を正しく理解できれば、働き損を心配せずに安心して業務に取り組めるようになります。
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老後に働くと年金が減るかもしれない理由とは?
実際に、収入を得ながら年金を受け取る場合、支給額が調整される「在職老齢年金制度」があります。しかし、この制度は、働く人全員の年金を無条件にカットする仕組みではありません。
年金が減額されるのは、給与と年金の合計額が相当な高額になったケースに限られます。「少し働いただけで年金が激減する」といった事態は、多くの人にとって当てはまらないのが現実です。
また、調整対象は「老齢厚生年金」のみで、「老齢基礎年金(国民年金)」は収入に関わらず全額支給されます。「稼ぎすぎると調整が入るが、対象者は限定的である」と認識しておきましょう。
どのくらい働くと支給停止になる? 基準を解説
具体的にどの程度の収入で年金がカットされるのか、基準を確認しましょう。支給停止のボーダーラインとなる「支給停止調整額」は、制度改正により大幅に引き上げられます。
令和7年度(2025年度)までの基準額は月額51万円ですが、令和8年(2026年)4月からは「月額65万円」に変更されます。これにより、年金が減額されるケースは今まで以上に少なくなると言えます。
計算では、毎月の老齢厚生年金(基本月額)と給与(ボーナス込の月額換算)を合算します。この合計が65万円を超えた場合のみ、超過分の半額が年金から差し引かれる仕組みです。
例えば、給与50万円、年金20万円で合計70万円となるようなケースが該当します。この場合、基準を5万円超過しているため、半額の2万5000円が支給停止となります。
裏を返せば、合計65万円以下なら年金は1円も減額されず、全額受け取れます。一般的なパートやアルバイト勤務でこの基準を超えるのは、容易ではありません。
まずは自身の年金額と、予定している給料をざっくり足してみてください。65万円に届かなければ、支給停止の懸念は無用です。
老後に日給1万円×週3日で働く場合はどうなる?
今回のように「日給1万円で週3日」働くケースで、実際にシミュレーションを行います。
まず給与は、週3日勤務で週給3万円、1ヶ月(4週間として計算)で月収約12万円となります。
現在受給中の年金15万円(うち老齢厚生年金を8万円と仮定)と合わせると、合計の月額は20万円です。この金額は新基準の65万円も、現在の基準51万円も大幅に下回っており、年金がカットされる心配はありません。
週3日の勤務であっても、週20時間以上などの要件を満たせば厚生年金に加入するケースがあります。しかし、厚生年金に加入したとしても、合計の月額20万円は基準額を大きく下回っているため、年金は減額されません。
結論として、今回のような「交通誘導員で週3日」という働き方であれば、年金への影響を懸念する必要はないと言えます。
まとめ
年金が減額されるのは、年金と給与の合計が基準額を超えた場合に限られます。令和8年4月からは基準額が65万円に引き上げられるため、より多くの人が調整を気にせず働けるようになります。
また、仮にカットされるとしても対象は厚生年金部分のみで、基礎年金は全額支給されます。今回の働き方では基準額を大きく下回るため、年金は全額受け取れます。自身の収入と年金を冷静に確認し、本当に支給停止になるか計算してみましょう。
出典
日本年金機構 在職老齢年金の計算方法
執筆者 : 高柳政道
FP1級、CFP、DCプランナー2級