遺族年金が「5年の有期給付」に改悪! 夫が“年収500万円”なら「2500万円」受け取れるはずが、たった250万円になるなんて…改正内容をもとに“受給額”をシミュレーション
遺族年金は、同じ会社員・年収500万円程度の世帯でも、妻の年齢や子どもの有無、そして今回の制度変更によって受給総額に大きな差が生じることも少なくありません。
本記事では、遺族年金の制度変更のポイントと、その影響について解説します。
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遺族年金とは?
遺族年金は、亡くなった人の年金加入状況に応じて、遺された配偶者や子などに支給される公的年金です。大きく分けて、国民年金に基づく遺族基礎年金と厚生年金に基づく遺族厚生年金の2種類があります。
遺族基礎年金は、原則として「子のいる配偶者」または「子」に支給されます。そのため、要件を満たす子がいない配偶者は、支給対象になりません。
一方、遺族厚生年金は、会社員や公務員など厚生年金加入者が亡くなった場合に支給され、子がいない配偶者でも対象になるケースがあります。
何が「5年」に変わるのか
現在、遺族厚生年金の受給要件には男女差があります。夫が亡くなった場合、遺された妻が30歳未満の場合は原則5年間、30歳以上の場合は終身受給が可能です。しかし、妻が亡くなった場合、子のない夫は原則55歳以上が受給要件となり、支給開始は60歳からで、基本的に終身受給となります。
このような男女差解消を目的に、60歳未満で配偶者を亡くした場合の遺族厚生年金について、原則5年間の有期給付とする見直しが行われ、2028年4月施行予定です。なお、60歳以上で死別した場合は現行通り終身給付の予定です。
つまり、30歳以上の妻は終身で遺族厚生年金を受け取ることができていたのが、見直しが完全に実行された後は原則5年間となるということです。ただ、子どもを養育する間にある給付内容は現在と変わりがないとされています。
年収500万円・会社員でも差はどれくらい?
ここからは、具体的に年収500万円の会社員の夫が亡くなった場合、パートで働く妻が受け取る遺族年金が制度変更前後などによってどう変わるのか見ていきましょう。
子どもを養育する間の給付内容は基本的に制度変更前後で同じですので、今回は要件を満たす子がいない前提で見ていきます。
・夫:会社員
・年収:500万円
・厚生年金加入:20年(240月分だが、制度上300月分で計算)
・妻:パート
この前提において、受け取れる場合の遺族厚生年金は年間で約50万6000円です。次に、各パターンにおける遺族厚生年金の受給金額を見ていきましょう。
【パターン1】制度変更前/妻35歳
現行制度では、妻が30歳以上であれば遺族厚生年金は終身で受給可能です。年間約50万6000円を85歳まで受け取るとすると、遺族厚生年金の総額は次の通りです。
・50万6000円×50年=2530万円
【パターン2】制度変更後/妻35歳
2028年4月以降、見直しが実行された場合、60歳未満で死別した配偶者は原則5年間の有期給付となります。そのため、受け取れる遺族厚生年金の総額は次の通りです。
・50万6000円×5年=253万円
なお、見直し後は有期給付加算が上乗せされ、5年間の年金額は現在の約1.3倍となる予定です。また、障害状態にある方や収入が十分でない方は、5年経過後も継続給付の対象となるため、実際の受給総額は一律ではありません。
参考までに、終身給付だった場合と単純比較すると、2200万円以上の差が生じてしまいます。
【パターン3】制度変更前後/妻25歳
現行制度では、妻が30歳未満で子がいない場合、遺族厚生年金は原則5年間の有期給付です。年間約50万6000円を5年間受給するというのは、パターン2と同様ですので、遺族厚生年金の金額は約253万円となります。
また、制度変更後も5年間の有期給付という点は同じですが、見直し後は有期給付加算として約1.3倍上乗せされる予定です。そのため、受給期間は現在と同様でも、給付額まで一律に同じとは限りません。
つまり、今回の見直しで大きな影響を受けるのは、これまで終身給付の対象だった「30歳以上60歳未満の子のない妻」ということになります。
なお、今回は完全移行後を想定して計算しています。実際は制度の移行は段階的に実施され、2028年度に40歳以上になる女性については、影響がありません。
遺族年金だけに頼らないために考えたいこと
遺族年金の制度が見直しされた後、世帯によっては「終身で受け取れる前提」での設計が成り立たなくなる可能性があります。考えておきたいポイントは次のとおりです。
・遺族年金はいくらになるのか把握する
・自分の老齢年金見込み額を確認する
・万一の際に不足する生活費はいくらか試算する
・NISAなどでの自助努力を進める
公的保障は重要ですが、「どの年齢で、どのくらい受け取れるのか」を具体的に把握しておきましょう。
まとめ
2028年4月以降に予定されている遺族厚生年金の見直しでは、60歳未満で配偶者を亡くした場合、原則5年間の有期給付となり、その後は収入など一定条件を満たす場合に継続給付が行われます。
年収500万円の会社員世帯でも、35歳で死別した場合は、終身給付と比較して2000万円以上もの差が生じる可能性があります。「公的年金があるから大丈夫」と考えるのではなく、具体的な数字で確認し、不足分をどう補うかを早めに考えておくことが、将来の安心につながるでしょう。
出典
厚生労働省 遺族厚生年金の見直しについて
日本年金機構 令和2年9月分(10月納付分)からの厚生年金保険料額表(令和7年度版)
執筆者 : 三浦大幸
2級ファイナンシャルプランニング技能士/日商簿記3級/第一種衛生管理者/証券外務員/英検2級など